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【完結】悪女と呼ばれた令嬢、望まぬ婚約寸前で剣聖皇子に奪い去られる【10月下旬に三章更新予定】  作者: しのギドラ
2章

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27話 第一皇子に下される沙汰、命じられる立太子

 最初にこの国で訪れた、皇帝アルドリック陛下の私設書斎。

 部屋の中央には、卓を挟んで威厳を湛えた皇帝。

 そして、死線を越えた疲労を隠しきれない第一皇子オーウェン殿下の姿があった。


「うわ……兄上。いくらなんでも顔色悪すぎだろ」


 ジークが、茶化すような、けれど心配の混じった声を上げた。

 対するオーウェン殿下は、目の下に濃い隈を浮かべ、青白い顔で力なく首を振る。


「これしきの疲れ、私の犯した失態と、それによって招かれた危機の大きさに比べれば、大したことではない。……無事そうで何よりだ」


「それでは、オーウェン。報告を続けよ」


 皇帝の低く、威圧感のある声が室内に響く。

 私はその迫力に背筋を正し、ジークの斜め後ろで静かに推移を見守った。

 オーウェン殿下は姿勢を正すと、淡々と、けれど言葉を選びながら事実を述べていく。


「はい……白の間の崩壊という未曾有の事態に対し、城内に衝撃が走りましたが、不思議なことに、事態の元凶である『白龍』の存在に言及する者は、目撃者を含めても皆無でした」


「……ふむ。あの場にいた近衛兵や刺客たちでさえ、その正体には気づかなかったということか」


「おそらく、白龍の権能の影響かと。……概念そのものを消し去る力が、目撃者たちの意識からも白龍の姿を消したのでしょう」


 皇帝は深く椅子に背を預け、鋭い眼光を次男へと向けた。


「……この十年、我が国の追跡から逃れ続けていたのは、その力を使っていたというわけだな、ジーク」


「まあ、そこは白龍が俺の意志に関係なく、勝手にやったことだけどね」


 ジークは困ったように頭を掻き、自嘲気味に笑った。


「この能力がどれだけ危険で、制御不能なものかは分かっていたつもりだ。だから、自分からはほとんど使ったことはない。……正直、今回のことで心底懲りたよ。この先も、極力……こいつの力は使いたくない」


「その心がけ、忘れるな。世界を滅し、歴史さえも白紙に戻す力など、人の身にはあまりに過ぎたるものだ」


 皇帝は重々しく頷くと、再びオーウェン殿下へと視線を戻した。


「残党の動きはどうなっている」


「今回の件を囮としたことで、彼らの勢力を一気に炙り出すことができました。主導者たちはすでに捕縛、あるいは逃走中です。彼らを完全に抑え込むのも時間の問題でしょう。帝国の膿は、今度こそ出し切れるはずです」


「……苦労をかけたな、オーウェン。そなたの働き、見事であった」


 皇帝の労いの言葉に対し、オーウェン殿下は喜びの表情を見せるどころか、謝罪するように深く頭を下げた。

 その手は、後悔によって白くなるほど握りしめられている。


「いいえ。今回の騒動の発端は、そもそも私の独断専行が招いた結果です。ゆえに、皇帝陛下より然るべき処分を頂きたいと考えております。私には、このまま第一皇子の座に留まる資格がありません」


「……そなたの行動には、確かに行き過ぎたものがあった。次期皇帝候補たる立場を理解せず、その身を軽率に賭けた。一歩間違えば、帝国の継承順位は瓦解し、さらなる混乱を招いたであろう。この責任は……極めて重い」


 皇帝の言葉が、死刑宣告のように重く響く。

 オーウェン殿下は覚悟を決めたように、目を閉じる。


「……承知しております。剥奪、隠居、あるいは……どのような責も負う覚悟があります」


「よろしい。それでは、そなたに命じる」


 皇帝の黄金の瞳が、覚悟を決めた蒼の瞳を射抜く。


「すべてが落ち着いた後、滞っていた立太子の儀を執り行う。そこで、生涯をかけて龍帝国に身を捧げ、民を守り、この国を導くことを誓うのだ」


 立太子は、皇位継承権を確定させる儀式のことだ。

 オーウェン殿下は弾かれたように顔を上げた。その瞳には、驚愕の色が浮かんでいる。


「……! それは、つまり……」


「これが、そなたに課す最大の試練だ。己の命を軽んじ、独りで背負おうとする悪癖を捨て、王としての重責に一生縛られ続けよ。……王命に背くことは許さぬ。死ぬまでこの国のために生きよ、オーウェン」


「…………。……御意に。この命、尽きるまで龍帝国ガイアリスのために」


 オーウェン殿下は、声を震わせ、跪いた。

 それは許しを乞う子供ではなく、一人の王として生きる決意を固めた者の顔だった。

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※カクヨムにも掲載
【代表作】→「悪役令嬢は全員生存エンドを目指す」
◆累計ページビュー63,000pv超え感謝◆

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あらすじ→「全員生き残るか、一人残らず死ぬか」その二択しかない極限の乙女ゲーム。
前世の記憶を取り戻したルナリアは、自分が"全滅エンド"を招く悪役令嬢だと知る。
導き出した答えは、誰とも関わらず、孤独に生きること。
そう誓った矢先に出会ってしまったのは、攻略対象——公爵令息のグレン。
父の虐待を見抜き、どんなに突き放しても離れない彼に、距離を取ろうとするほど執着されていく。
やがて暴かれる、最初から大切な人を"殺す力"を宿していたという残酷な真実。
それでも彼は、皆の前で誓った。
「生涯をかけて君を幸せにする」と。
虐げられた令嬢×公爵令息。
作品ページはこちら→「悪役令嬢は全員生存エンドを目指す」
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