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【完結】悪女と呼ばれた令嬢、望まぬ婚約寸前で剣聖皇子に奪い去られる【10月下旬に三章更新予定】  作者: しのギドラ
2章

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17話 白龍がもたらした悲壮な覚悟、私とジークの決意

 ジークは部屋に入るなり、疲れたようにソファに体を深く沈めた。

 アッシュブルーに染めた髪を乱暴にかき上げ、天井の一点を見つめる。


「ったく……あの馬鹿兄上……」


「ジーク……大丈夫?」


 私は静かにジークの隣に腰を下ろし、彼の大きな手をできるだけ優しく包み込んだ。

 その手は、剣聖として無数の敵を倒してきたはずなのに、今は微かに震えている。


「ごめんな、エル。龍帝国に来れば、少しはゆっくりできると思ってたのに。早速、こんな厄介な騒動に巻き込んで……」


「私のことを気にしてる場合じゃないでしょう? ……それにしてもオーウェン殿下が、あんな自分を犠牲にするような計画を立てていたなんて……」


「兄上の愛国心を舐めてたよ。……くそっ」


 ジークは悔しげに毒づき、ソファの肘掛けを拳で叩いた。


「……だけど、兄上にあんな最悪な決意をさせたのは、他でもない俺だ。俺が白龍と契約したから……」


「それは絶対に違う、ジークのせいじゃないわ」


 私は語気を強め、ジークの顔を無理やり自分の方へ向けさせた。


「たとえこの国の法であったとしても、それがあなたを縛り、心を殺していい理由にはならない。あなたが自由を求めたのは、一人の人間として当然の権利よ」


「エル……。だけど、皮肉なもんだよな。俺はこの白龍の力があったからこそ、国を渡り、君と出会うことができた」


 私の手に、ジークは自分の指を重ねた。

 迷子のように不安げな瞳が、月の光を反射してわずかに揺れる。


「……だけど、今は、この力が邪魔でしょうがない。この力があるからこそ、兄上は俺を皇帝に据えようとする。白龍さえいなければ、俺はただの自由な剣士でいられたのに」


 神々しく、誰もが羨む伝説の力。

 それが今は、彼を玉座へと繋ぎ止めるための鎖にしか見えなかった。


 私はそんな彼の葛藤を真っ向から否定するように、ふわりと微笑んだ。


「そんなこと言ったら、白龍がかわいそうでしょう? ……私は、あなたと出会えたことに……白龍の力にも、心から感謝してる。あなたが救いに来てくれたから、今私はここにいるのよ」


 私はジークの頬に手を添え、愛おしさを込めてその瞳を見つめた。


「でも……オーウェン殿下は、少し卑怯だと思うわ。あんなことを言ってしまったら、どんなに逃げようとしても、ジークは次代皇帝のことを考えてしまうでしょう?」


「それが狙いだろうからな。兄上は俺の弱点をよく知ってるよ」


 ジークは苦笑し、私の肩に頭を乗せた。

 私に体温へ溶けるように、ジークの体から少しだけ力が抜けたように感じる。


「……俺は、兄上のいない帝国なんて認めない。あいつらが兄上を殺そうとするなら、俺はその計画ごと、粉々に砕いてやる」


「私も全力で手伝うわ。……オーウェン殿下には、これからもずっと、あなたの不始末を怒鳴り続けてもらわなきゃいけないんですもの」


「はは、違いない。ありがとう、エル……」


 ジークはソファから立ち上がり、窓の外、不穏な影を落とす本宮を見据える。

 龍帝国の運命を懸けた、不協和音を奏でる祭典の幕が上がろうとしていた。

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※カクヨムにも掲載
【代表作】→「悪役令嬢は全員生存エンドを目指す」
◆累計ページビュー63,000pv超え感謝◆

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あらすじ→「全員生き残るか、一人残らず死ぬか」その二択しかない極限の乙女ゲーム。
前世の記憶を取り戻したルナリアは、自分が"全滅エンド"を招く悪役令嬢だと知る。
導き出した答えは、誰とも関わらず、孤独に生きること。
そう誓った矢先に出会ってしまったのは、攻略対象——公爵令息のグレン。
父の虐待を見抜き、どんなに突き放しても離れない彼に、距離を取ろうとするほど執着されていく。
やがて暴かれる、最初から大切な人を"殺す力"を宿していたという残酷な真実。
それでも彼は、皆の前で誓った。
「生涯をかけて君を幸せにする」と。
虐げられた令嬢×公爵令息。
作品ページはこちら→「悪役令嬢は全員生存エンドを目指す」
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