第21話愛の肉じゃが
若さが眩しい…
そんなことを考えながら帰り支度をしていると、凛が俺のそばにやってきた。
「ねえ、隊長。今日このあと暇ですか?」
「え?ああ、特に予定はないけど」
「ほんと?じゃあさ、うちに来ない?」
「えっ?」
思わず聞き返してしまった。
うちに来ない?
それはつまり、凛の家にお邪魔するということだろうか。
「あ、いや!変な意味じゃないですからね!?隊長いつも頑張ってるし、お礼に夕飯でも作ってあげようかなって!」
「お、お礼?いや〜そんな、俺なんかに気を遣わなくても…」
「前回のリベンジ!」
凛は少し頬を膨らませた。
「そ、そうか。そうだったね。前は肉じゃが食べれなかったね。床にぶちまけて、ならお言葉に甘えようかな」
「はいっ!決まりです!」
凛は嬉しそうに笑った。
……なんだろう。
この年になって、若い女性の家に招かれるとは。
いやいや、落ち着け俺。
これは俺の女性に対する苦手意識を克服するチャンスだ。悲しいが、女性経験が無さすぎていつも困っているだろう?
経験を積めば、何とかなるはずだ!
自分に向き合うんだろう?
そう自分に言い聞かせながら、俺は凛の後ろをついていった。
駅近くのマンションが凛の家だ。1人暮らしをしている。凛はバイクで俺は愛車の軽で向かった。
ガチャッ
「ただいまー!」
「お、お邪魔します……」
「ふふっ、隊長ってば、なんでそんなに緊張しているんんですかー?」
「い、いや!女性のお家にお邪魔する機会なんて、あまりないもので…」
「え?」
凛がきょとんとした顔で俺を見た。
しまった!!!!!!!!
余計なことを口走ってしまった。
「あははっ!なんですか?それ?隊長かわいい!」
「か、かわいい!?いやいや、俺はもう38のおっさんだから!」
「そんなの関係ないですよー!さぁ、座ってください」
凛に案内され、俺はリビングの椅子に座った。
凛は笑いながらキッチンへ向かった。
ーーー関係ないって、どういう意味だ?
いやいや、深く考えるのな!!
大人しく料理が来るのを待とう。
しばらくすると、キッチンからいい匂いが漂ってきた。
「隊長ー!もうちょっとでできますからねー!」
「楽しみだよ!」
肉じゃが。
家庭料理の定番だ。
普段は適当に買ってきた弁当や惣菜ばかりだ。
誰かが自分のために料理を作ってくれる。
それだけで、なんだか胸が温かくなってきた。
「隊長、味見してみてください!」
凛が小皿を持ってきた。
「ええっ、俺が?」
「はい!どうですかー?」
差し出された小皿には、ほくほくのジャガイモと牛肉が盛られていた。
俺は一口食べる。
「ーーうまい!」
「ほんと!?」
「うん。味がしっかり染みてるし、ジャガイモもちょうどいい柔らかさだ。すごくおいしいよ」
「ふふっ、よかったぁ」
凛は照れくさそうに笑った。
「隊長においしいって言ってもらえると、嬉しいですね」
「そ、そう?それならよかった…」
いかん。
こういうとき、どう反応すればいいのかわからない。
もっと気の利いたことを言えればいいんだが、38歳にもなって情けない限りだ。
「さぁー、召し上がってください!」
テーブルには肉じゃがとご飯、味噌汁が並んでいた。
「わあ、すごいな」
「頑張りました!」
「いや、本当にありがとう。こんなに用意してもらって申し訳ないな」
俺がそう言うと、凛は不満そうに頬を膨らませ、
「私が好きで作ったんですから、遠慮しないで食べてくださいよー」
「そっそうだね!っじゃあ、遠慮なくいただくよ!!」
俺は焦りながら肉じゃがを口に運んだ。
うまい!!!!
甘辛い味付けが絶妙で、ご飯がどんどん進む。
「おいしいよ!凛ちゃん、本当に料理が上手なんだね」
「そっそうですかー?」
「うん!いいお嫁さんになれると思うよ」
「………」
ん?
凛の動きが止まった。
「隊長って、ほんっとにそういうところですよね」
「え?なにか変なこと言っちゃった?」
「なんでもないです!!」
凛はぷいっと顔を背けた。
うっ、うーん。
女性の気持ちはやっぱり難しい…
だが、これも経験!経験!これからさ!
そんなことを考えていると、凛がそっと口を開いた。
「ねえ、隊長ー」
「ん?」
「また、こうやってご飯食べに来てくれますか?」
「え?」
「私、隊長と一緒にご飯食べるの、好きです」
……………………………
……ええと
これはどういう意味だろうか?
仲間として、ということだろうか。
そうだよな。そうだよ…
凛は優しい子だし、俺みたいなおっさんにも気を遣ってくれているのだろう。たぶん…
「うん。俺でよければ、いつでも誘ってよ」
そう答えると、凛はぱっと顔を輝かせた。
「ほんとですか!?絶対ですからねー!」
「約束するよ」
俺が頷くと、凛は満面の笑みを浮かべた。
…うん。
こうして誰かと食卓を囲むのも、悪くない。
いや、むしろ。
こんな時間がずっと続けばいいと思った。
「今日は本当にありがとう。ごちそうさま」
「どういたしまして!」
ムフーー!っと凛は鼻息を鳴らした。
食事を終え、俺は玄関で靴を履いていた。
「じゃあ、またね!」
「はい」
凛が少し寂しそうな顔をした。
気のせいだろうか。
「あ、隊長!」
「ん?」
「今日は来てくれて、ありがとうございます!」
「うん。俺のほうこそ、ありがとう。すごく楽しかったよ」
俺は手を振って、凛の家を後にした。
夜道を歩きながら、ふと思う。
誰かと一緒にご飯を食べる。
他愛のない話をする。
そんな何気ない時間が、こんなにも温かい。
俺は38歳の独身男だ。
恋愛経験なんてないし、女性とどう接すればいいのかよくわからない。
凛のような魅力的な女性が、俺を恋愛対象として見るはずもないだろう。
だから、今の関係を大切にしていこう。
仲間として、隊長として。
それ以上を望むなんて、今の俺には贅沢すぎるな…
ーーーーまあ。
また肉じゃがを食べられたら嬉しいな。
そんなことを考えながら、俺は駐車場に向かった。
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こちらは金髪美少女TSものになります。




