第12話初めて告白された
井ノ上さんとしばらく歩き、お目当てのチェーン店の居酒屋に入った。
席は個室であり、真ん中にテーブル、掘りごたつ。
いたって普通のチェーン店の居酒屋であった。
「海野さん何を飲みますか?」
「とりあえず、ビールで」
「では、私はハイボールを飲みます!」
井ノ上さんが、スマホで飲み物を注文する。
この居酒屋はモバイルオーダー形式だ。
すぐに店員さんが飲み物を持って来た。
「今日は本当にありがとうございました。おかげさまで佐野も大事に至らず、海野さんには感謝で一杯です」
「本当に良かったよ」
本当にね…
「乾ーーーー杯!!!」
ガシャン
ーーーー乾杯するのか…
こうして、井ノ上さんとのお礼の飲み会が始まった。
「ささっ!食べてくださいよ」
井ノ上さんがテキパキと料理を注文して、テーブルに焼き鳥や揚げ物、サラダ等が並べられた。
「うーん、やっぱりパリパリの鶏皮は美味しい」
俺は焼き鳥を堪能し、井ノ上さんはサラダをシャキシャキ食べていた。
すると、
「ーー井ノ上さんは、俺なんかとご飯食べて楽しい?」
「ええ!!?いきなり何を言うんですか?」
驚く井ノ上さん。
しまった!!!何を言っているんだ俺は…
うああああああああ、今日はお礼の食事だぞ!?
何言ってんだ!!!!!!
つい、口に出てしまった…
「ごめん、忘れて、本当に…」
「何か悩み事とかあるんですか?」
真剣な顔になる井ノ上さん。俺のことを心配してくれている。
黙る俺、もう死にたい…
「ふふ、今日はお礼をしたいんです!海野さんのためになるのであれば、何でも答えますよ」
井ノ上さんが見つめてくる。
相変わらず、真っ直ぐ見てくる。
今まで、女性に相談をしたことなんてない。
いや、女性と関わったことなんてない。ほとんど…
不安だ。
不安だが、こんな機会滅多にない。
恥を忍んで井ノ上さんに聞いてみよう。
どうせ俺なんか…くそっ
「最近まで、隊長をやっていたんだ。
でも辞めた。
部下達がいるんだけど、女性でさ。
俺を慕ってくれるんだけど、俺は彼女達を邪な目で見ているんだ。
もしかしたら、付き合えるじゃないか?だとか…
そんな自分が気持ち悪いんだ。
それが嫌で隊長を辞めたんだ。」
「ーーーそうだったんですか。話していただいてありがとうございます」
「………」
また、黙る俺。もう嫌だ…
「海野さんって純粋なんですね」
「ーーーーーーーえ?」
「普通に生きていたら、下心が芽生えることだってありますよ!」
想定外の返答に俺は、井ノ上さんが何を言っているか理解出来なかった。
「だって、こんな、俺、こんな気持ち悪い奴じゃないですか!?」
「そんなことないですよ。気持ち悪くないです」
「いやいや…そんな」
「彼女さん達は海野さんを嫌がっていましたか?気持ち悪がっていましたか?」
「ーーそれはないけど、」
「なら、別にいいじゃないですか。悩む必要ないです」
「いやいや、こんな最低な男」
「そう自分を卑下しないでください。なら、最低な男に助けられた私達は何になるんですか?」
井ノ上さんが少し不満顔になる。
その表情を見て言葉が詰まる。
「いや、そんなつもりは……」
俺の顔を見て、井ノ上さんの表情が明るくなる。
ニコッと笑っている。
笑っているが、俺を馬鹿にしたりは決してない。
「ふふ、今日は勇気を出して海野さんを誘って良かったです。」
「…………」
「やっぱり私、海野さんが好きです」
「えええつ!!!!?」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
『おっさん隊長になる』は、おっさんが隊長として若い隊員たちと関わりながら、少しずつ変わっていく物語です。
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