第11話隣を歩く
「きょっ、今日のお礼をしたいので、この後、食事でもどうですか?」
「ーーえっ…」
思わず固まった。
「俺と?」
「は、はい!」
井ノ上さんの顔がみるみる赤くなる。
待て!待て待て!!
この流れは危険だ…
俺にとって女性関係は………
俺が駄目になる。
「食事って、二人で?」
「そ、そうですけど……駄目ですか?」
「ーーーーーあいにくだけど、俺は…」
そう言いかけると、井ノ上さんの表情が曇り、俺は罪悪感に駆られた。
いや、いやいや。早とちりするな。
これは怪物退治を助けたお礼だ。
そう言う意図は無いはず。
純粋にお礼の可能性もある。それを無下にすることは歳上として、男としてどうなんだ?
俺は少し考えた後、
「じゃあ、お言葉に甘えようかな?」
井ノ上さんが満面の笑みを見せ、
「はい!」
「ーーじゃあ、行こうか」
さっきまで強敵と戦っていたとは思えないほど、井ノ上さんは嬉しそうだった。
「何か食べたい物はありますか?」
「俺はお酒が飲めればいいから、居酒屋とかでいいよ」
一呼吸置いて、
「チェーン店で!!」
「ふふっ、わかりました」
井ノ上さんが楽しそうに笑う。
その笑顔につられて、俺も笑った。
「堅苦しい所は苦手なんだ…」
「いえいえ、私も気軽な所がいいです。」
女性と二人で外食。
初めてのことなので、なんだか落ち着かない。
幸い、凛と2人で自宅で食事をしたから少しは耐性が付いたと思うが、どうだろう?
「じゃあ、近くに美味しい焼き鳥の居酒屋さんがあります。そこにしましょう」
「うん、任せるよ」
俺たちは並んで歩き始めた。歩きながら、雑談を話し
時おり笑いもあった。
俺達は見る人が見ればカップルにも見えるだろう。
……なんだろう。なんか、ポカポカするな。
心が暖まると言うか、安心する。
さっき会ったばかりの井ノ上さんと意気投合している。
喋っていると安心する。なんだ、これは?
「海野さん」
「ん?」
「今日は本当にありがとうございました」
「いやいや、もういいって」
「でも……」
井ノ上さんが少し俯く。
「もし海野さんが来てくれなかったら、佐野は……」
「ーーそうだな」
俺は足を止めた。
「だから、間に合って良かったよ」
「はい」
井ノ上さんも足を止め、俺を見る。
「海野さんって……優しいんですね」
「俺が?」
「はい」
「いや、そんなことないよ」
「ありますよ」
即答だった。
「……そうかな」
「そうです」
井ノ上さんが俺を真っ直ぐな瞳で見つめる。
思わず目を背けようとしたが、井ノ上さんの瞳からは優しさが溢れていた。
心が洗われるようだった。
しばらく井ノ上さんと見つめ合っていたが、井ノ上さんが照れくさそうに視線を外した。
俺はどうすれば…
頭の中では思考がぐるぐる回っている。
また後悔するのか?変なこと考えるのか?
俺にとって女性は…暖かいけど…
暖かいけど、怖いんだ。
「海野さん、行きましょう」
「ーーーーああ」
俺は井ノ上さんの隣を歩く。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
『おっさん隊長になる』は、おっさんが隊長として若い隊員たちと関わりながら、少しずつ変わっていく物語です。
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