7.リトライ(世界の終わりまであと24日/その2)
⚠注)このエピソードの最後に、
性懲りもなく作者謹製大暴走ラフ挿絵第二弾を掲載中です。
(完全期間限定/即撤回もあり(^^;)
なお挿絵は、画面右上の「表示調整」内にある「挿絵表示中」を
クリックして、「挿絵を表示」とすることでOFFにできます。
挿絵の非表示を望まれる方は、お手数ですが上記の対応を
お願いいたします。
「うわー実家。なっつかしー」
喪服姿で玄関前に棒立ちのまま、思いっきり棒読み。
「どうした、さっさと入れよ」
「いやまだ心の準備が。清めのお塩も持ってないし。そうだ先に食べ物とか買っておこうか──」
車を車庫に入れて戻って来た弟の優樹也は、回れ右をしたわたしの背中を叩いて、くるりと玄関扉に向き直させると、
「いいから入れ。さっさと!」
「ああううええおお」
「大丈夫だよ、とーさんたちはトシ兄の家に行ってるから」
「あー、だっけか。そういやそっちで合流する予定だったっけ」
もう完全に頭から飛んでいた。
ガチ勢とは別の意味で、わたし本当にこのゲームのためにぶっちぎってるな──「現実」。
やっと家に入って、二階への階段を上がりかけて、いきなりつまずきかけた。
「ったく何やってんだよ、さっきから」
「ごめんちょっと体が……」
ゲームの中ではしゃぎすぎたらしい。
最後も派手にやられたし。
斎場では結局、ほとんど徹夜だったし。
弟くんとの久々の再会で神経疲れたし。
あとそれから、それから……
「歳だな」
「言うな。頼むから」
六歳下の弟をこれほど憎いと思ったことはない。
☆
「それで、要するにどういうこと?」
「だから、ゲームシステムがバグったってことだろ」
弟くんの部屋(入るの何年振り?)。
自作らしい箱型パソコン(ゲーミングパソコンとか言うらしい)を前に、がるどあ(ガルドアース・ウォーテイル)攻略会議の続きを始める。
「最終章は、時間のない中、突貫作業ででっち上げたミッションイベントだ」
「知ってる──そのせいで歳矢は死んじゃったんだし」
「これはそのカタキ討ちってわけ?」
「まあ、そんなとこ──かな」
ゲーム内の魔王皇帝に「転生」した彼のことをどう話したものか。
あれこれ迷うわたしをよそに、弟くんはカタカタとキーボードを叩きながら、
「急造イベントなら、あちこちにバグ、つまりゲーム上の不具合が残ってても不思議じゃない」
手慣れた様子で、二面あるモニターそれぞれにいくつものウィンドウを開いてゆく。
「ていうか、ない方がおかしい──おお、こりゃすげー」
「何? どしたの?」
「公式非公式を問わず立ち上がってる、最終章の攻略サイトや観戦サイト」
それは会社側が開設した公式Discordサーバーから非公式のWikiサイトまで。
観戦用のユーチューブ配信サイトもあるし、自分のプレイをライブで実況配信しているプレイヤーたちも多い。
最終章の開始から6日目。
ネット上でのゲームシステム解析やミッション攻略研究も本格的に始まっているらしい。
「ちなみにDiscordサーバーってのは──」
「知ってるわ、それくらい!」
会社でも使うし。オバサン扱いすな!
「もっとも、機密性の高い話はやっぱりMicrosoft TeamsとかSignalを使ったりしてだな──」
「あーこれこれ、バグ解析サイト。へえ、これ見てよ。RTAのエニー勢まで協力してる!」
聞いちゃいない(えにーぜい?)。
「どっちもどっち、運営もプレイヤー側も総力戦だな! 神展開キターって感じ!?」
「あんたなんだか、わたしより盛り上がってない?」
あれあれ、いわゆるムネアツ展開ってやつ?
「ナキ姉……それって、」
「ああいい、みなまで言うな! それより先、先いこ!」
☆ ☆
「──やっぱり、抜刀解放式抜きで聖域を飛び出したことがトリガーになって起きたバグみたい」
キッチンを漁って見つけてきた菓子や飲み物を適当につまみながら、ユキくんの話を聞く。
「さすがにナキ姉と同じ現象の報告はないけど、バトル中に抜刀解放式利用技がバグってそのまますり抜けっちゃったとか、似たような話いくつか上がってるし」
「とにかくそのバグとかのせいで、瞬殺されても失敗扱いにはならなかったと」
あっさり死んで貴重な一日を無駄にしたけど、でもそれのおかげでゲームオーバーは回避できた。
まずは痛み分けってところ?
「うん──けど」
「へほ?」
「モノ食いながらしゃべんなって。カスが散るだろ」
いかにもゲーマー風の、背もたれの高い椅子に座る彼の背ろで、抱えた袋からつまんだポテチに嚙りつこうとしていたわたしは、ちょっとその手を止めて、
「あんたも歳矢と同じか。まったく最近の男連中は細かいな」
そいえば、この子の部屋もしっかり片付いてる。
わたしの部屋とは(以下略)。
遺伝か?
「んなわけないだろ。大事なとこなんだから、真面目に聞いて」
「聞いてる聞いてるから。さあ続けて続けて!」
「……わかったよ」




