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58.バトル!?(世界の終わりから2年8か月前/8)

──それは夢。

自分の世界を夢見た神さまの。

もう一度、自分の世界を。

こんなゲームじゃない、

本物のセカイを──!


「そうして目を覚ました神さまは、

出来損ないの亜神は──でも6人の

『神殺しの英雄』によって

倒されましたとさ! おしまい!」


……本当に?



前回のあらすじ!

 温泉回! 温泉回!

 ……のはずが、謎の闖入者によって

 めちゃくちゃに!

 その悪魔少女──フィラは、

 どうやラナナセちゃんと因縁が

 あるらいけど……?


 始まります! 

 帝国星竜宮殿──帝星宮ラグナレク。


 その湯浴み場。


 いい感じに湯気に包まれた、ちょっとしたプールほどもある湯船の中に立つ裸身の悪魔少女──フィラ。


 折れそうなほど斜めにぐいっと首を曲げ、振りあげたその腕を掴んでいるナナセちゃんの方をじろりと見て、


「おおお? いたのかこんなとこに? リーンの生き残りが?」


 口元を大きく広げ、人に非ざる長い牙をむき出しにする。


「それを、言うなあああーーー!」


 気合一閃。

 掴んだ手をひねりざま、体ごとフィラを放り出すナナセちゃん。


 宙を舞うフィラの背中で、手のひら大だった翼が一気に広がる。


 まさに絵に描いたような一対の漆黒の翼。

 悪魔の翼。


 でも半分とこ破れかけていて、そこから真っ白い羽が大きくはみ出ている。

 それはまるで天使の翼で──


「ほっほー? チカラは衰えてないって感じ?」


 どこか嬉しそうに宙で仁王立ち(?)するフィラ。

 羽ばたくたびに真っ白い羽が雪のように舞い落ちる。


 いつの間にかその体も、胸から下のあたりがVの字風に黒くなっている。

 あちこちで渦を巻くような赤い紋様が輝いている。


 よく見ると、フィラの顔にも、さっきまでなかったタトゥーのような模様が浮かんでいた。


「冥王族の戦闘色──戦化粧か!?」


 思わず、っといった風に声を上げる魔将軍リデラーさん。


 どこかで鳴り出すBGM。

 これはまさか──バトルシーンのBGM?


 じゃあ、今ってバトルモード?


 湯浴み着が破けて水着姿になった「ユナキ」が、思い出したように彼女へ向けてゲームウィンドウを開いている。


 どさくさまぎれ+いい感じの湯煙で、その場にいるリデラーさんやユユリコ姫もそれに気づいた様子はない。


 いっぽうで湯浴み場を見下ろす「神視点」の「わたし」には、ユナキの目線を通じてその内容が見えた。


 上空の悪魔少女にフォーカスした情報ウィンドウには、


 デレス・マノ※ス・フィラ=ラディ※※ッサ/LR(+☆※※)

 LV ※99(戦闘色解放/上限突破+※※?)

 属性 闇+???※

 HP ????※※9/※※????9


 ……ナニコレ?


 全然わからない。

 もしかしてバグってる? 


 でも。


「ほらほらどーした? 掛け声だけかー?」


「やって……やろうじゃない!」


 そんなフィラを見上げつつ、

 ざぶざぶ湯船の中を進むナナセちゃん。


 髪がほどけて、フィラにも負けない真っ赤なそれがうねうねと揺らめき出す。


「遠慮はしない、ぞっーと! ──ウェイク!」


 前に出した両手の先、真っ赤な魔法陣が出現する。


「魔炎の牙もて世界の全てを焼き尽くせ! ケレナディレウス!」


 魔法陣に向かって再び振り上げた両腕には赤色の「ノックアウト(ぴこぴこ)ハンマー」。

 それを一気に振り下ろす。


 ぱりーん! と魔法陣が砕け散り、そこから炎に包まれた三つ首の怪物(?)の頭が飛び出す。


「──ウェイク! きゃっ!」


 フィラと同様、振り上げた両手の先に出現させた青い魔法陣が、でもその怪物の直撃を受けて砕かれる。

 

 その衝撃で後方へふっ飛ばされるナナセちゃん。


 炎の怪物ヘッドはそのまま湯の中へ着弾。 

 盛大な湯煙というか水蒸気が吹き上がり、湯船のお湯が一気に半分とこ蒸発する。


 ほんと冗談じゃない。

 あんなのまともに喰らったら大怪我どころじゃすまない。


 いや、ちょっと掠めただけでも大やけどだ。


 とにかく逃げるナナセちゃん。


 それを空から追いかけるフィラ。


「くそっ──うわ!」


 二人を追いかけようとしたリデラーさんの直前に着弾する炎の首。


 またもや盛大な水蒸気があたりを覆って、湯船はほとんど干上がってしまう。


「逃げるだけならただのエルフにだってできるぞ! その真っ赤な髪はただの飾りか!」


 ナナセちゃんと同じ真っ赤に輝く髪を、これ見よがしに左右に振ってみせるフィラ。


「おまえなんかと、一緒に、するなあああーーーー!!!」

 

 ウェイク! とまた両手を突き出す。


 出現する青い魔法陣。


「く……っ!」


 ナナセちゃんの口が苦痛を耐えるように歪む。


「冷血の魔獣よわが身を砕き刃となれ! アイスレギオン!」


 素手で叩いた魔法陣に、一瞬瞳のない女の子の顔が見えた。

 でもすぐに砕け散って無数の氷の刃となり、そのまま上空のフィラへと襲いかかる。


「無駄無駄だってば無駄ああああ! はっはー!」


 こちらも再度展開させた赤い魔法陣で、それを受けるフィラ。


 魔法陣に当たった氷刃はその瞬間蒸発し、ダメージを与えられない。


 それでも一瞬、フィラの攻撃が止んだ。


 とはいえ有効打にはほど遠い。


「おしまい? じゃあ次はこっちのターン! ウェイク!」


 色の薄れた魔法陣を砕いて、新たな光り輝く魔法陣が出現する。


「これで決着──なあんてつまらないことにさせるなよーっと! ブレイク!」


 再びあのおもちゃのハンマーで魔法陣を砕き、焔の魔獣を飛ばしてくる。


 逃げるナナセちゃん。

 別の湯船に飛び込みつつ、


「ウェイク! ──ブレイク、アイスレギオン!」


 さっきの短縮版のような呪文と共に出現する青い魔法陣。


 そこに三つ首の魔獣が激突する。


 ばしゅーーーっ! 


 一瞬で消えてなくなる魔法陣。

 爆発的に広がる水蒸気。


 湯船の反対側までふっとばされるナナセちゃんの体。


 どう見ても不利。


「ナナセちゃん!」


 たまりかねたユナキがインベントリから自分の聖剣を取り出そうとする──が。


「あれ? あれあれ!?」


 自分の聖剣──「生玉(イクタマノ)・神剣(アークブレイド)/UR+☆3」が灰色になっていて、選択できない。


『どーやら一対一(タイマン)戦闘モードになってるっぽいね』


「え? ユキくん? ユキくんなの!?」


 いきなり聞こえて来たその声に、あちこち振り向くユナキ。


『だからおれは「ユート」だって。ユート皇子……じゃない、もう皇太子だっけか』


「でもやっぱりユキくんじゃ──あ!」


 見ると、ユナキの水着のビキニトップに黒猫のバッジがあった。


 それはバトルモードで「現実世界」にいるユキくん──ユナキ(わたし)の弟くんと話ができるアイテムで。


 でも今は、なぜかこの同じ帝星宮で「立太子の儀式」に出ているはずの「ユート殿下」とつながっているらしい。


『おもしろい仕掛けだけど、こっちは今、立太子の儀が佳境なんですけどね?』


「そんなのどうでもいいから! それよりこれ、どうにかならない!?」


『帝国の一大行事をそんなもの扱い? さすがナキ姉』


「それがどうした! こっちは仲間の命がかかってるんだから!」


『仲間……か。でも悪いけどさ、ナキ姉はそろそろ戻った方がいいと思うよ』


 リアルへ、現実世界へ──と。


「なんで!?」


『なんかね、嫌な予感がする』


 少しだけ真面目な声。


「まさか、現実(リアル)のユキくんに何かあった!?」


 でもあの子は、現実世界に出現したドラゴンに追いかけられつつ最終章にログインしたさい、そこでユナキや、その場にいたチビ魔狼姿のチハヤくんと一緒にドラゴンのブレス攻撃で「瞬殺」されて──


 その後ユナキ自身はなぜかこの「第二章」に飛ばされたものの、確かにユキくんたちがどうなったのかはわからない。


 最終章で「瞬殺」されたのに強制ログアウトもされず、こうしてユナキがぴんぴんしてるところを見ると、またバグがあったのか、それともあのドラゴン自体、何か別の仕掛けや意味があったのか。


 いずれにせよ「ユナキ」は無事だったし、帝星宮には当の「ユキくん」もいたからとりあえず大丈夫だろうと勝手に思っていたけど。


 でもこの「ユート殿下」は、どうやら本当にリアルの、現実世界のユキくんとは違うっぽいし……?


 じゃあもしかして、本当にあのまま、ドラゴンブレスの餌食に──?


 神視点の「わたし」の脳裏に、病院のベッドに横たわる血塗れの彼の姿が浮かぶ。


 ぶんぶん! とない頭を振るわたし。


 その視界の中で、大画面で見ている映画がそのまま左右に大きく揺れたような感じがして、ちょっとくらくらする。


『さあ……でもとにかく、第二章のイベント的には、そもそもこんな「温泉バトル」はなかったはずだし』


「そうなの?」


『あのフィラって、たぶん本来はずっと先、もしかしたら最終章で実装されるはずのキャラじゃないかな──まあ「おれ」は知らないけどね』


 黒猫バッジの話を聞きつつ、バトル中の二人の方を見るユナキ。


 戦いは遠距離での魔法の投げ合いから、今は近距離での格闘戦に移っていた。


 お互い手の先に小さな魔法陣を出して、それで殴り合いを演じている。


 どうやらフィラにしても、あの魔法を連発するのは厳しいらしい。

 たまに宙へ逃げるものの、飛び続けることもない。


 おかげで状況は膠着状態。

 それでもユナキは、ちょっとだけ安心するように息をつくと、


「でも戻るっても、どうしたら戻れるの?」


『ログアウトは?』


 ユナキの目がウィンドウのコマンドライン下段にあるログアウトの項目を見る。


 それも聖剣と同様に灰色だった。

 試しにちょこんと触れても反応なし。


『ログアウト必須の最終章と違って、本編は基本オートセーブ。だから普通はそのままアプリを閉じればいいんだけど……』


 でも本人がそのゲームの中にいる。

 そもそもスマホもないし。


『……たぶんだけど、「条件」をクリアすれば勝手に戻れると思う』


「条件?」


『第一章の時もそうだったでしょ?』


 確か第一章では、ユユリコ姫を襲う使い捨ての暗殺者「刺使徒(エクスブレット)」にされたユキナ(わたし)が、クロウさんたちに助けられたところで「ログアウト」してたっけ。


『「仲間」と出会うこと──それが第一章の「クリア条件」だったんだよ』


 ユキくん──ユート殿下によれば、いきなり最終章からこのゲーム(がるどあ)を始めたユナキ(わたし)は、普通に始めていたら当然クリアしている必須イベントをほとんどクリアしていないらしい。


 そりゃね、本編のメインストーリーすっ飛ばして、最初から最終章走ってるんだから。


『そのせいで最終章用のイベントフラグが立ってなくて、先に進めない状況なんだと思う』


 たとえイベントが始まっても、必要なアイテムやキャラが登場しないとクリアできない。


『最悪そこで詰み。ゲームオーバー。最終章リタイアって事態になりかねない』


「じゃあ第二章は? わたしはそこで何をしたらいいの?」


『どうだったかな』


「ユキくん!」


『だからオレはユート皇子だって──ええ、何でもありません父上』


 どうやら相手は本当に儀式の真っ最中らしい。


 でもこっちだって命懸けのバトルの真っ最中。


 対戦格闘ゲームのような殴る蹴るたまに魔法が飛び交うバトルを演じているナナセちゃんたちを横目に、そのどさくさでユナキは話を続ける。


「……クリア条件も気になるけど、やっぱりユキくんも心配だよ。あなたがユキくんじゃないなら、本物のユキくんは? そっちはどうなってるの?」


『さあ』


「まだ最終章? 壊れた車の前で待ってるとか?」


『でもドラゴンいたよね? それでナキ姉ごと瞬殺されて──』

 

「……待って」


 話を遮るユナキ。そしてぽん! と手を打つ。


「それだ──ドラゴン!」


 ドラゴンを操れる魔剣!


 魔聖剣「ケリス・ルーンテイカー」!


『あー、あったねそんなの』


「たぶんあれ持ってれば戻れるんじゃない?」


 確かに。


 現状であのドラゴンを倒せるとは思えないし、となればその魔剣で操って追い返すのが正解では?


『で、その魔剣は今どこにあるの?』


「だからそれは──あれ?」


 あれ?


「どこだっけ?」


 ──って、だからあれでしょ、この湯浴み場に入る時、一緒についてきたレイくんに渡して……?


 まさか?


『まさか、知らないとか?』


「いや、知ってるような、でも知らない? あれ?」


 神視点の「わたし」の下で、必死に考えるユナキ。


 もしかして、神視点のわたしが経験したことは、この「ユナキ」には共有されてないとか?


 この世界に転生したわたしの元相方、後の魔王皇帝トーヤに「一方その頃」呪文で飛ばされた先で、あの謎の女性「シア」になったこと。

 

 その彼女が当の魔剣──ケリス・ルーンテイカーを持っていたこと。

 本来の持ち主らしい男──「ヤン」と一緒にこの帝星宮までやってきたこと。


 それをこの「ユナキ」は知らないらしい。


 ただそれが第二章のクリア条件なら、先にわたしがあの魔剣を手に入れた時、どうしてログアウトできなかったのか。


 そうか、その時のわたしは「シア」だった。


 シアであって「ユナキ」じゃなかった。

 そのせいで第二章のクリア条件は満たせず、その場ではログアウトできなかったのかも。


 とにかく魔剣はある。


 このすぐ外に。

 そこで待ってる「勇者レン」が持ってる。


 けどそれを伝える術がない。

 仮に伝えられても、「ユナキ」の姿では、素直に渡してくれるとは思えない。


 なんたって彼は、帝星宮への道すがら「ユナキ」に襲いかかって来た「敵」なのだから。


 といってこのまま黙って見てるわけにもいかないし。


 何か……何か方法は?

 方法はないの!?



次回予告!

 もしかして解決は次に丸投げですか!?

 ていうか前回の予告は?

 「ヤン」なんて、名前だけしか

 出てこなかったんですけど?


 いろいろ詰み残しありつつも、

 それでもただひたすら突き進むのみ!

 残りは後で拾えばいいのだ(^^;w!


 というわけで次回解決編を待て!

 お楽しみに~!

(するよね解決!?)



 

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