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33.相談? 密談? 冗談?(世界の終わりまであと23日/9)

もう一度ここから?

もう一度ここから!


さあ始めよう──

ぼくらの世界を取り戻す戦いを!


前回のあらすじ!

トーヤとの長い話の後、

今度は実家への電話。

2年越しの会話は、

でもまあ、無難にクリア。

これもがるどあのおかげ、かな?


やって来たユキくんとも

何とか再会できたし。

さあ次は、と思ったら、


え? 地球艦隊司令部?


だからこれは異世界転生系

ファンタジーですから!(自称w)


始まります(# ゜Д゜)!


 歳矢の部屋にあるAIスピーカー「ミスタースコッティ」から、突然通知された「地球艦隊司令部からのハイパーDiscordウェーブ通信」。


 歳矢(としや)の会社って、実は太陽系を守る地球艦隊の司令部だったのか──


 いやそんな設定はない。ないから!


 わたしは「がるどあ」~配信ゲーム『ガルドアース・ウォーテイル』のゲームキャラそのままの姿で、


「マオカ少佐? 誰だっけ?」


 その名前だけはどこかで聞いたような。


 ユキくんは、なぜかちょっと赤くなった頬をひっかくようにして、


「少佐はトシ兄の冗談。真岡さんは、トシ兄の会社の広報さんだよ」


 株式会社アズールウィング。

 アズールウィング・ゲームズのブランド名で「がるどあ」の開発を担当している。


 歳矢はその会社のメインのプログラマー(兼テクニカルディレクター)だった。

 ユキくんによれば、忙しすぎて「熱中症じゃなくても軽く死ねる立場」らしい。


 そんな厳しいのかゲーム作りって。

 本気で研修医とタメ張れるかも。


「会社の広報さん、ね? そんだけ?」


「な、なにが!」


「いや~なんとなっくね~」


「別に、ただトシ兄の大学時代からの後輩で、おれのサークルの先輩ってだけ」


 そんだけ! とユキくん。

 へえ、そんなんいたんだ。

 知らなかったよ姉さん(自業自得)。


「それより通信、出るなら早くしなよ。相手待ってるから」


「ああそうだった!」


 わたしは部屋を突っ切って(というほど広くはないけど)、歳矢の机の前まで行くと、パソコンのマウスで画面に出ているDiscordの通知にカーソルを重ねた。


「あれ? だめじゃん?」


「PINでロック解除した?」


「いやでも、ユキくんときはこれで繋がったんだけど」


「んなバカな」


 言いつつ、ユキくんも来る。


「ちょっといい?」


 横から手を出してキーボードをたたたたん。


 あっさり解除されるロック画面。


 真っ黒な空の下、緩やかな弧を描く真っ白な地平線の向こうに浮かぶ青い星の姿を映した壁紙が表示される。


「何これ?」


「地球でしょ。月から見た地球の出の画像。いくらナキ姉だってそれくらい──」


「知ってるわい! じゃなくて、さっきは──」


 がるどあキャラのイラストが──


「さっき?」


 ふと、空色髪をツインテにした「あの子」の顔が浮かぶ。

 まさか、ね?


「いやいい──それよか、あんたこそなんで歳矢パソコンのPIN知ってるの?」


「それは後。あーまあ、ちょっといろいろ、あってさ」


 どこか思わせぶりに視線を泳がせたユキくんは、改めてわたしの方を見て、


「それより今は通信に出るのが先じゃない?」


 そだった!

 わたしは横のマウスに手を置いて、改めて通知のポップにカーソルを合わせる。

 

「……待って。思い出した。真岡さん、真岡、水華さん?」


「知ってんじゃん」


「この部屋に置いてたゲーム関係の書類とかデータを引き取りに来るって言ってた人。歳矢の葬儀にも来てたし──ごめんなさい、お待たせして。光谷(みつや)です!」


『ああいえ、こちらこそ、わたし──』


「そういや真岡さん、車で向かってる途中にナキ姉のスマホにもかけてきたけど、ナキ姉は今スマホなしでこっちにいるって伝えておいたんだっけ」


「それ早く言えー!」


『は、はい?』


「ああいえいえいえ! なんでも! なんでもないですはい!」


『ですか? では改めてまして。アズールウィング・ゲームズ広報部の 真岡水華です。今よろしいでしょか?』


「もちろんです!」


『さっそくですが、先日お話したせんぱ──光谷(ミツヤ)の、ああつまり歳矢さんのことですが、』


「いいですよ、御遠慮なく。あの時も言いましたけど、『先輩』で」


 歳矢は離婚後も、こっちの名字、「光谷」姓を名乗り続けていた。

 もちろんわたしに異存はなかった。


 でもこういう場合は、ちょっと混乱する。

 なのでわたしたちの間では、彼についてはそう呼ぶことで話をつけていた。


『すみませんすみません! ちょっと今極悪に忙しくて──いえこちらの話で』


「修羅場の仕事場なら嫌というほど経験ありますから。それで?」


『はい、あのその先輩が部屋に残したゲーム関係の資料の中に、今日どうしても必要なものがありまして』


「それってもしかして、今夜の配信番組用?」


『あれ? その声──』


「あ、ども、優樹人(ゆきと)です。……久しぶりです、先輩」 


『だね。こっちほんとガチ修羅場で。そっちは四年生だっけ?』


「です。ちなみに大学生活最後の夏休みは『がるどあ』に捧げてますので」


『えーいいのかそれで! 後悔しても知らないぞ!』


「あれ? トシ兄や先輩が作ってるゲームは、その程度のものなんですか?」


『言ってくれる──ふっふ、いいよ、受けて立とうじゃない!』


「だ、そうだよ、ナキ姉?」


 あ、そうだった。これわたし宛の通信だった。


「重ね重ねすみません! いま隣にうちの弟がいまして──外させますか?」


『そうですね、お願いできますか? ごめんミツヤくん。いいかな?』


「だ、そうだけど、ユキくん?」


「はいはい。弟くんはくっそ暑い外で溶けたアイスでも喰らってます」


「そだ、わたしのチョコモナカ、冷蔵庫に──!」


「もう入れてある。そんじゃ」


 扉を開けて出てゆくユキくんを見送ったわたしは、改めてパソコンの画面と向き合う。


「それで、お話って?」


『はい、実はわたし、毎日夜に、がるどあ──ああええと、がるどあ、というのは』


「もちろん知ってます。これでも歳矢の元相方ですし」


 なんなら今だって、がるどあゲームキャラそのままでここに座ってますし。

 ていうかこれ、音声だけでよかったわ。


 たぶんこのカメラのアイコン押せば画像も送れるようになるんだろうけど。

 絶対押すもんか。


『でしたね。助かります──で、そのがるどあで今継続中の最終章の実況レポートを、わたしが中心になって毎晩ネットで配信してるんですけど』


 うわ聞いただけで大変そう。


『それで、今晩の配信用にどうしても必要な資料がありまして、それがどうもそちらにあるようなので、急で申し訳ないのですが、これから伺って回収させていただきたいんです』


「ほんとに急ですね」


『いつものことです、これくらい──ええそれで、お伺いの件ですが』


「それはかまいませんけど、時間、大丈夫なんですか?」


『配信は22時からですが、最大1時間は遅らせられます。現在時間は、ええと20時45分ですか。浅草端の弊社から、千馬木のそちらまでは、広報チームの意地にかけても絶対25分以内にお伺いします。資料を確保するのに10分として、ジャスト1時間で戻れます。それから配信用の原稿や資料、画像などをまとめるので、やはり22時開始は無理ゲーですが、配信は資料作りと並行してできるので、ギリ23時──本日中の配信は問題ありません! やってみせます!』


 一気にまくしたてる。


 若いなー。

 この人、いくつだっけ?

 歳矢の2コ下って話は聞いたことがあるから、だとしたら26歳?


 まあ今のわたしは、自称17歳ですけども!

(ゲームのキャラでリアルの人と張り合ってどうする)


 ──って、ちょっと待って?


「来る? って、ここへ、このアパートへ、ですか?」


『はい、できればもう出発したいのですが。よろしいでしょうか!』


「ああそれ、あのその」


 わたしは、わたわたと頭を振って左右を見回す。

 背中の三つ編みロングがわさわわ揺れる。


「それ、ユキくんに代理をお願いしたらまずいですかやっぱり?」


『すみません重要な書類なので。たぶん間違いなくNDA付きの──社外秘の資料なので、可能な限り部外者の立ち合いはご遠慮願いたいのですが』


 離婚したとはいえ、一応身内+遺品管理人のわたしじゃないと無理ってことか。


 うーん。どうしよう……


 この姿で会うわけにはいかない。

 でもユキくんには任せられない。


 といってこれを断るのは気が引ける──というか。

 がるどあの最終章関係なら、むしろ可能な限り協力したい。


『あのそちらも何か、これからご用事が?』


「いえいえ、それはないですが──」


 考えてる時間はない。

 今ここで即断するしかない。

 ぐたぐた悩むな。時間の無駄だ。


 頭を切り替えろ。


 まず決断。

 それから考えろ。


「──いいですよ、お待ちしてます!」


『ありがとうございます! ええと以降の連絡はスマホで?』


「はい、そっちで大丈夫です」


『ではどたばたですみませんが、これでいったん失礼します!』


「はい。頑張って!」


『ありがとうございます! では!』


 通話終了。

 ポチっとね。


「ふいー……いいよ、ユキくーん!」


 それで扉が開いて、ユキくんが戻って来る。

 安普請だな。

 外に出してた意味あったのかこれ?


「で、どうするの? そのカッコで会う気?」


 ほらね。


「それをこれから考える!」


「あの人、25分で来るって言ったら、絶対25分で来るよ?」


「うん、そんな感じ」


 敵ながらあっぱれ。いや敵じゃないけど。

 いやいや、最終章プレイヤーとしては、やっぱり敵なのかな?


 ──というわけで。


「どうしようユキくん!」


「丸投げかい!」


次回予告!

 がるどあ関係の資料を引き取りに

 広報部のミズカさんがやって来る!


 でもこっちはまさにそのゲームキャラ姿で。

 このまま会うの?

 それとも──?

 

 研修医の修羅場でもまれたわたしが

 この土壇場で下した決断とは──!?


 待て次号!(雑誌じゃない(# ゜Д゜))!

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