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28.リアル世界の歩き方(世界の終わりまであと23日/4)

 これは終わる世界で出会った仲間たちとの、

 ちょっと遅まきながらの旅と冒険の物語──


前回のあらすじ!

 公式ラジオ? は? なんのことですか?

 歳矢の部屋にいるわたしには全く

 あずかり知らないことですが?


 さておき!

 無事お金も確保して、これでどうにかユキくんとこへ

 行けると思ったら──え?


「そっか、ここがリアル世界──

 トーヤが言ってた現実世界、ってやつなんだ~」


 ちょ、ちょっとゆーくん!?

 こら空色ツインテ謎少年!?

 あなた何言ってるの!?


 はは、始まります!


  ☆ ☆ ☆


注)本編後段、ちょっと書き直してます。

 先に上げた分は忘れてくださいm(__)m


 では改めて本編をどうぞ!


「ゆーくん、あなた……あなたって、何者?」


「──さあ?」


 あいかわらずにこやかな顔で、さらりと答える謎マシマシのツインテ少年。


 わたしは逆に、ごくりとつばを飲み込むようにして、


「トーヤが言っていた──って、どういう意味なの?」


「……? ボク、そんなこと言いました~?」


 言ったやん! たった今、言ったやん!

 ──思わず飛び出しそうになった言葉を逆に思い切り歯を食いしばって砕いて飲み込む。


「ぐえぐく」


 相手は健忘の少年。

 そんな子に対して「それ言ったやん」は絶対の禁句。


 健忘──要は記憶喪失。

 ものによって逆行性とか一過性とか、まあいろいろあるけど。


 異世界の──ゲーム世界のキャラクターに、リアルな人間の症状が当てはまるとも思えないけど。

 

 たぶんゆーくんの場合は、何か症状が出ているというより、もっと別の原因のせいだと思う。

 

 ゲームとして、物語としてそういう設定になっているとか。

 トーヤの件も、こうやってヒントだけ出してプレイヤーを引っかき回すとか。


 もしくは、単にゲームキャラなのに現実世界に出てきちゃって混乱してるとか。


 いやそれが一番問題だけど。 


 何よりそれはわたし自身のことでもあるし。


 わたし軽く頭を振ってみる。

 現実世界の自分(わたし)とは似ても似つかない、腰まで届く黒髪の三つ編みお下げがさっと揺れる。


 背中越しに、そのぶっとい三つ編みが揺れているのがちゃんと実感できる。

 

 頭を振ったせいで鼻先に落ちたメガネをくいっと戻す。

 これも確かにそこにある(ちなみに現実のわたしはコンタクト使用)。


 間違いなく、わたしはその姿で──ゲーム世界で得た体(アバター)で──ここに、現実世界に、歳矢(としや)のアパートにいる。


 現実のユキナ──28歳元研修医のバツイチ女ではなく。

 ゲーム世界のユナキ──見た目17歳の女子高生風治癒師(アリア)の少女として。


 それはここで死んでゲーム世界の魔王皇帝トーヤに転生した彼が、その姿でまさにこの部屋に現われた時のように。


 あの時はただただ驚いただけだったけれど。

 でもいざ自分までそうなってみると、ちょっと考えてしまう。


「この部屋、何か特別なことになってる?」


 ゲーム世界と現実の世界が、この部屋を通じて繋がってるとか?


 そんなまさか。

 それこそゲームやアニメじゃあるまいし……って。


 でもわたし、まさにそのゲーム世界に入り込んで、そこから戻ってきてるんですけど。


 まさにゲームと現実が入り混じって、この先どうなるのか予想もつかない。


 だいたいわたしは、いつ元の姿に戻れるんだろか。

 ていうか、戻れるんだろか?


 わたしには現実の生活があるし。

 会社も行かないとだし。

 品河(しながわ)のマンションの家賃とかもあるし……


 神絵師謹製のオリジナルヒロインキャラだ、わーい、なんて浮かれてる場合じゃないぞ。

(そこまで浮かれてない──たぶん)


 ……やば。なんか怖くなってきた。


「ゲームと現実をごっちゃにしちゃいけないって、こういう意味だったのか」


 違う。

 事態はもっと深刻だ。


「とにかく、まずはユキくんとこへ戻るのが先決だよね」


 そうだ。ここであれこれ考えてても始まらない。

 情報を得ようにもスマホひとつないし。

 食糧もすぐ尽きる──基本ゲームキャラだから、どこまで食事とかが必要かわからないけど。


 なんにせよお金は確保できたんだ。

 あとは行動あるのみ!


「よし、行くぞ!」


「はい~!」


 元気よく答える空色髪のツインテ謎少年──ユユリくん。

 ゆーくん。


 ……あれ?


「でもいいのかな、この部屋からこの子連れ出しても?」


 ていうか、現実世界を連れ回しても。

 それを言うならわたしもだけど。


 ゲームキャラの体でこの部屋から出でも大丈夫?

 扉から一歩出たとたん、消えてなくなったりしない?


「うーん……」


 とりあえずわたしだけ外に出て、ゆーくんは部屋で待っててもらうのが安全か?

 でもわたしが消えちゃったら、彼はどうなる?


 ゲーム世界の超重要キャラ(のはず)がいなくなって、当のゲームはどうなる?

 もっともがるどあ最終章を走ってるのはわたしだけじゃないけど。

 

 脱落者は出てるけど、まだまだ1000人以上の挑戦者が残ってるはず。


 すべてそれはこのゲームのサービス終了を阻止するために。

 すべての世界を終わらせるキーアイテム、アーニーストーンを巡る30日限定ガチ勝負。


 ルール上では、その中の誰かひとりでもこの最終章をクリアできればいい。

 それでこのゲームのサービス終了は阻止できる。


 もっともクリアしたプレイヤーたちに与えられるのは、最終的にはゲームの続行か終了かを決める決定権らしい──という話もある。


 それが本当なら、プレイヤー自身が、その場でこの『ガルドアース・ウォーテイル』に引導を渡すことだってできる。

 

 現魔王皇帝トーヤに代わって、世界を終わらせることができるのだ。


 最終章最後の超々レアアイテム──アーニーストーン。

 それを手にした者だけが、それを決められる──とも。

 

 いずれにしても。

 わたしにとってこれは、ゲーム世界へ転生した「大切な人」──歳矢を再び失わないための、「リアル」な戦い。


 ただ世界を救うだけじゃだめだ。

 だって約束したから。

 必ず会いに行くって。


 それは現実世界ではもう二度と叶わない約束。

 でもここなら。

 このゲーム世界なら。

 

 ここにいる三つ編み丸眼鏡少女の「ユナキ」と。

 世界の最奥で待っている魔王皇帝「トーヤ」なら。


 再び会うことができるのだ。

 その手を取り合うことができるのだ。


 面と向かって文句を言うことも。

 その気ならその鼻っ柱にパンチを喰らわせることだって。


「だから──」


 他人任せになんかできない。

 最終的な世界の存亡がかかっているならなおさらのこと。


 わたし自身がやらなきゃ、走らなきゃ、意味がない。


 ここで引くわけにはいかない。

 消えてなくなるわけにはいかない。


「うん──よし!」


 とはいえ、この部屋でじっとしていても状況はかわらない。

 ていうか、どんどん悪くなる。


 最終章は30日間続く。

 その間にこなさくてはならないクエストは膨大だ。

 

 今は最終章開始8日目。

 八月末の期限まで残り23日。

 もう相当遅れてる。


 これ以上遅れたら、たとえネットの攻略情報があってもリカバリーは難しいだろう。


 だったら行けばいい。

 やればいい。


 ユキくんのところへ。

 何度でも、あのゲーム世界へ。


 そして必ずチハヤくんを仲間にして。

 他の仲間たちも見つけ出して。


 必ず──


「──艦長、第17艦隊司令部から通信です」


「……は?」


 いきなりAIスピーカーがしゃべり始めた?


「ミツヤ・ユキト、少尉から、Discordによる通信要請が来ています。お繋ぎしますか?」


 艦隊司令部? 少尉? ……って、ああ弟くんから?


 素直に電話ですとか言えんのかこのトレッキーAIは!

(まあ電話じゃないけども!)


「もういいからつないで!」


 ──で、つながるのか?

 パソコンは結局使えなかったはずだけど。


「大丈夫です~」


 行儀よく正座したまま、にっこり笑うツインテ謎少年。


「え?」


 ゆーくん? どうしてきみが?


 確かに、モニタ画面のロックは解除されてるっぽい。

 とにかく明るくなった画面に出てるポップアップをマウスでクリック。


『──ナキ姉?』


 あ、つながった。


「ユキくん? よくここがわかったね。てかよくつながったね」


『まあいろいろね! 探したよ! でもナキ姉、やっぱりそっちにいたんだ!』


「うん。なんか知らないけど、気がついたらこの部屋にいてさ。それでちょっと面倒なことに──」


『こっちでもかなりえらいことになってるんだって!』


「ユキくん? 落ち着け?」


『ナキ姉のゲーム実況がバズってバズりまくって公式にも伝わっちゃって──!』


「ちょちょ、実況? ユキくん、勝手にわたしのあれ、実況配信してたの!?」


『最終章プレイヤーの義務だって! で、6時半から始まったがるどららじおん、公式ラジオ配信でナキ姉の話が出て──』


「え? ラジオ? 公式? 何?」


『いやまあ、それはこっちもちょっと責任あるんだけど──けどまさか当日のらじおんにぶっ込んでくるとは思わなかった! だって実況から配信までほとんど時間差なかったし、さすがミズカ先輩──』


「待って、待ってってユキくん! 話ついてけてないからわたし!」


 よくわからないけど、公式まで出てきてる?


 わたしは部屋の真ん中に座っているツインテくんを見る。

 にこりと笑い返してくる異世界少年。


 よくわからないけど……公式とか、それってけっこうヤバくない?


『とにかく通話じゃらちがあかない。今からでもこっち来れる? それとも迎えに行く?』


 確かに車で迎えに来てくれればありがたい。

 でも京特線雑式駅から千馬木の間なら、絶対電車の方が早い。

 土曜の夜なら特に。


 けど一方で、週末で確実に人手の多い路線を使って移動するのも不安がある。


 わたしは自分の姿を思い浮かべつつ、ちらりとゆーくんを見た。


 今のわたしは、自分で言うのもあれだけど、一見地味に見えて実はすっごいかわいい(自称推定)17歳の女の子だし。


 ゆーくんに至っては、どこのボーカロイドかと思うような容姿で、周りの人の注目を浴びるのは間違いない。


 それ以前に、見る人が見れば二人共がるどあキャラだと一発わかるだろうし。

 正にコスプレして外を歩くようなもの(本人なんだけど)。


 画像撮られてSNSとかに上げられたらヤバすぎる。


 といって変装しようにも着替えなんてないし。


『ナキ姉?』


「──悪い、やっぱり迎えに来てくれる?」


『わかった。できるだけ急ぐから!』


「無理はNG! いいね!」


『わかってる!』


「あとそうだ、わたしのカッコ見て、驚かないでね」


『は?』


「見た目はその、アレだけど、中身はちゃんとわたしだから!」


『ごめんナキ姉、何言ってんの?』


「そだね、とにかく待ってる!」


『あ、ああすぐ行くから!』


「よろしく!」


 ──さてと。


「じゃあゆーくん、迎えが来るまで、こっちはこっちでできること、やろうか」


「いえっさーです、艦長~!」


 だから艦長違うて!

 

「通信終了しました、艦長」


 おまえが終了しろミスタースコッティ!


 わかってる自分でやったんだから!

 あーもういい。


 わたしは手をぱん! と叩いて、


「では行動開始!」


次回予告!

 ついに公式にまでその活躍(?)が

 伝わっちゃったらしい。


 ゲーム側でも現実でも、

 どんどん状況が変化していって

 もう何が何やら。


 とにかく一刻も早くユキくんと会って

 相談しないと──って!?

 

 え? また新しいキャラ?

 それも敵、ですと!?


 待て! 緊迫の次回!

 (今考えてるから!)←そして書き直し中ww

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