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26.時代だな(世界の終わりまであと23日/2)

すべてはこの星のこの世界の小さな塵にすぎないけれど……


前回のあらすじ!

 どうにか現実世界に戻ってみれば、

 体はゲームキャラのまま、

 しかも目の前には廃聖堂にいた

「青い髪の女の子」が!

 え? 違う? オトコノコ?


 おとのこですとー!?

(あ、これ前回の後書きでも驚いたやつだ!)


 ──始まりますww!


「オトコノコって、男の子? ユユリちゃんが?」


 わたしは、さらにまじまじと目の前の床にちょこんと正座しているユユリちゃんを見た。


 比較的小柄な今の「わたし」よりも、さらに小さい体。

 青色──というよりは、もっと薄くて明るい「空色」髪のツインテール。

 こちらは濃紺といっていいセーラー風の襟がついた白いワンピース。

 つやっつやの健康的な肌。 


 そして、どう聞いても若手の女性声優さんが担当してるとしか思えないかわいい声。

 

 でも。


「そっか、これで男の子か……時代だな」


 攻めたなあ。歳矢(としや)。

 いやまあ、彼が作ったキャラとは限らないけど。


 これもあの早逝の神絵師の画力なればこそ、の企画かも。

 だってこの子も例外なくかわいいし(もうそれ以外の言葉がない)。


 ていうか今どきのゲームだとこれが普通だったり?


 歳は取りたくないもんだ。

 まだ28歳だけど。28歳ですけど!


 なぜかゲーム内キャラの姿をしている今は、見た目だけなら17歳の女子高生風ですけど!


 見た目12,3歳くらいのユユリちゃんとだって、今なら姉妹──いや姉弟でも通りますけど!


「どうしました~?」


「う、ううん!」


 ゲームキャラの姿でゲームの登場人物(キャラクター)と張り合ってどうする。


 わたしは冷蔵庫からまたさっきのペットボトルを出して、紙コップに二杯目を注ぎ入れる。

 それを持ってユユリちゃんの前に座り(正座)、はいと差し出す。


「ありがとうです~!」


 差し出された紙コップをやはり両手で受け取って、笑顔で飲む。

 やっぱりかわいい。


 でもほんと、よくわからない──いや全然わからないけど。

 どうしてこれでオトノコなんだろう。


 何か意味があるんだろか。

 例えば物語的に。


 それはいきなり最終章から始めちゃったわたしの知らない物語。

 わたしの知らない四年間。


 きっといろいろあったんだろなあ。

 まだわたしの知らない「仲間」たちと。


 なんか……ちょっとさみしい。


「──そうか、公式でキャラ設定とか確認してみればいいのか」


 公式サイトなら、メインキャラクターの情報は普通に出てるだろう。


 他にも『ガルドアース・ウォーテイル』の考察/攻略サイトとかをいくつか当たれば、だいたいの事情はわかるはず。


 ゲーム自体は四年以上続いてるわけだし。

 この子の「正体」だって、もうそれなりに語られちゃってるかも。


 本来ならちゃんとゲームの中で体験すべきなんだろうけど。

 仕方ない、非常時だ。


「スマホスマホ……あ、しまった!」


 そうだ、わたしのスマホは弟のユキくんとこ(=実家)だった。

 

 実家のユキくんの部屋からログインして、その後もそのスマホを通じてゲーム内に入っちゃったわたしとコンタクトしたり、バトルの肩代わりをしてくれていた。

 

 だからてっきり、ログアウトしたらその部屋に戻ると思ったけど。


 でもなぜか今は歳矢(としや)──この部屋で死んで「がるどあ」世界の魔王皇帝トーヤに転生したわたしの元ダンナにして幼馴染の部屋にいる。


 そして目の前には、その世界から連れてきちゃったらしい謎少女ならぬ謎少年。

 間違いなく物語のキーキャラクター。


 どうしてこうなった?


 前に来たとき、まさにここで魔王姿の彼を見た。

 それと関係があるとか?


「うーむ」


「?」


 文字通りひざ詰めでわたしに見つめられていたユユリちゃんから金色の瞳で見返されて、思わず視線をそらしてしまう。


 だめだ直視するのは危険だ!

 かわいすぎる!


「おかしいな、わたしにその手の属性はなかったはずだが」


 腕組みして考える。


 ゲーム業界で働く相方がいながら、そっちの方はほんんど手を出していなかった。


 ていうか正直、大した頭もないのに大学医学部目指してずっと勉強してたし。

 卒業後も研修でボロボロだったから、やりたくてもやれなかったけど。


 これも正直、仕事とはいえ、日がな一日ゲームやってるあいつをうらやましいと何度思ったか。


 もちろんあっちはあっちで苦労はあるんだろうけど。

 それこそ死んじゃうくらい。

(いやそれはもちろん歳矢が悪いんだけど)


 よく言えば、わたしは死ぬ前に逃げてきたんだ。

 医者業界から。その世界から。


 そして今、念願(?)のゲームをやっている。

 これまた文字通り、その体ごととっぶりハマっている。


 ハマりすぎてゲーム内に入り込んじゃうとか、そのゲームキャラの姿のまま現実世界にログアウトしちゃうとか、ついでにゲームの最重要キャラ(だよね)まで目の前にいる始末。


「どうしたもんだか」


 ふと見ると、対面のユユリちゃんも細っ来い腕を組んで、難しい顔をしていた。

 でもすぐにこちらを見て、ニコッと笑う。


「何やってんの」


「別に~です!」


 そしてまた笑う。


 まったくこの子は。


「ユユリちゃん、わかってる? あなた、まったく別の世界に迷い込んでるんだよ?」


「みたいですね~、はい、わくわくです~!」


 それは本当に嬉しそうに言う。


 困ったもんだ──けど。


「……ふっふ」


「あ」


「何?」


「やっと笑ってくれました~」


 ──そっか。


「ごめん、心配させちゃったか」


 だめだな。「姉」失格。


 姉と言えば──そうだ。もう一人「弟」がいたっけ。


 ユキくん。

 彼も心配してるはず。


「そうだよ、こんな和んでる場合じゃないって!」


 何とかしてユキくんに連絡しなきゃ。


 とはいえスマホはない。


「この部屋に何か……」


 立ち上がって机の前に行く。


 閉じられたノートパソコン。たぶん仕事用。

 数枚の円盤メディア。資料らしいクリップ留めの紙束。


 その向こうに、ユキくんの部屋と同じ、二画面モニターのパソコンディスプレイ。


 これは確か自作のコンピューター用だったはず。


 そっちなら使えるか?


「えと、電源、電源……」


 机の横にある黒い箱のボタンを押す。


 画面が明るくなる。


「うわ!」


 モニター画面の真ん中で笑う、黒髪の三つ編みお下げ少女。


「わたしじゃん!」


 ゲームキャラ(アバター)の姿のままでいる、わたしの顔。

 

「あー、びっくりした」


 画面には、わたし以外にも、チハヤくん(銀狼の魔剣士チハヤ・ルース)がいた。

 さらに今この部屋にいる謎少年、ユユリくん改めゆーくん(「ユユカくん」はなんか言いにくいので、これからは「ゆーくん」と呼称することに全会一致で決定いたしました!)。


 でも、この三人の並び方がどうも不自然な気がする。

 その間に、まだ何人か人の入る余地があるというか。


「……うん?」


 よーく見ると、その間が空いているところは、うっすい色で人っぽいシルエットがある。


「もしかして、仲間キャラ?」


 なんだろう。よくわからない。

 気になるけど、今はユキくんとの連絡方法を探すのが先か。


 ──けれど。


「やっぱりPINコード、あるよな」


 これが使えれば、メールとかでやりとりできると思ったけど。

 そこまで甘くはないか。当然か。


 わたし? もちろん知りません。

 心当たりもありません。


 自分の誕生日なんてアホなことはしてないだろし。

 

 なら……わたしの誕生日、とか?

 いえいえそんな甘いセキュリティかましてるとも思えません。


 思えませんよ。


 んなわけないって。


「ええと六ケタか──なら022498」


 ……


「じゃあ980224とか?」


 …………


 ほらねー。はっは!


 はあ。


「違うか~」


 あれ、なんか落ち込んでるわたし?


「大丈夫ですか~? お姉ちゃん?」


「う、うん! ぜんぜんだいじょーぶ!」


 知るかこんなくそパソコン!


「連絡がつかないなら直接行くしかない、か?」


 白マントと胸や腕の防具を外せば、なんとか女子高生の制服に見えなくもない。


「そうだ、歳矢のネクタイも借りちゃえ」


 細めの縞模様とかあれば、より制服っぽく見えるかも。


「あとは……お金か」


 こんな格好だし、サイフなんて持ってない。


「どこかに現金、ないかなここ」


 ごそごそ。

 がさがさ。


 紙の本(ほとんどマンガ。それも昭和や平成一桁時代のものばかり)をパラパラめくったり。

 鍵のついてない机の中を漁ったり。


 ひとさまの部屋で、何をしてるのやら。


 でも非常時だし。

 元ダンナの相方だし。

 遺産管理人(自称)だし。

 これも遺品整理の一環ってことで。

 

 何か見ちゃいけないものを発見してしまう可能性もあるけれど。

 でもそれは死んじゃったあいつの方が悪いってことで。


 ていうかほんとにお金があったとして、それ使ったらやっぱり横領?


「……いや待て」


 確かやつには生前、いくらかお金貸したような記憶が。


 うん、貸した。絶対貸してる。きっと貸してる。


 本棚に並んでるアクリル製のがるどあキャラのひとり(誰だろう?)を手に取って、


「貸してるよね? ──うん!」


 わたしの心の中で勢いよくうなずく誰かさん。


 よし!


「おっと、これは?」


 同じ本棚の上にさりげなく置いてあったカラフルな立体。


 色とりどりのタイルを揃えて遊ぶ立体パズル。

 ルービックキューブ──けど。


「なんかでっかいな……うわ、おっも!」


 なんだこれすごく重たいぞ。


「あ、貯金箱だこれ!」


 しかもこの大きさこの重量感。

 これは期待できそう。


「でもこれってあれか、全部の色を揃えないと開かないってやつか?」


 しかも4かけ4とか。極悪じゃん!


「なんです、それ~?」


 異世界の玩具に興味を示す謎少年。


「これ? 立体パズルでね、こうやってぐるぐる回しながら色を揃えていくんだけど……」


 だめだ、回せば回すほど色が混ざってカラフルなカオス状態に。


「ちょっと、いいですか~?」


「……はい。重いよ?」


 謎少年は、彼の手にはけっこう大きめのそれを、物珍しそうに見回しながら、


「うわ、ほんとに──あ、ここ二枚ずつ回るんですか~。なら端から揃えて、いや真ん中の色をこれにして……あれ端の色だけ違う? そかこうすれば直せるのか~。へえすっごいですねこれ~」


 ぐるぐる、かしかし。

 ちゃかちゃか。

 かちゃ。


「できました~!」


「早!」

 

 4かけ4のパズルを初見で一分かかからずクリアとか!


「さすが謎少年!」


「?」


 いえなんでも!


 でもこれでなんとかなる!

 なんとかなるかも!


次回予告!

 どうにか出せましたルービックキューブ!

 さてその中身はおいくら万円?

 そしてわたしは無事、ユキくんのところへ

 たどり着けるのか!

 

 刮目して待て次回!

(そんなに入ってる?)


 では!

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