↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/70

24.説得Ⅱ(世界の終わりまであと24日/19)

これは終わる世界で出会った仲間たちとの、

ちょっと遅まきながらの旅と冒険の物語──

(です!)


前回のあらすじ!

 チハヤくん仲間になった!

 わーい!

 ……と思ったら。


「なんの冗談だ?」


 鼻で笑われました!

 えー!?

 

 というわけで、始まります!

 膝上まで覆うバトルブーツの足元。

 不敵に笑うちび銀狼。

 チハヤくん。


「オレがいつおまえの仲間になった?」


 わたしも負けじと大きく胸を張るようにして、


「たった今!」


「……今?」


 わたしは手にしていた聖剣──七星剣(セブンスセイヴァー)を、光が戻った青い空へ、再びぐっとかかげるようにして、


「だからこうやって、抜刀ガチャ引いて、見事チハヤくんを引き当てて仲間に──」


「ばっとうがちゃ?」


 しまったそっちはゲーム用語か。


「ああ違う、抜刀解放儀! りべれーしょん!」


「抜刀解放式(リベレーション)? またその剣の奥義を使う気か!」


 ぴょんと後ろへ飛び退き、牙(といっても小さいけど)をむく。


「くっ! ヒト族のソードウォーカー風情が! 仲間呼ばわりして油断させようとしたって無駄だぞ!」


 あれ? なんか間違った?

 ていうか、だめだめ!


「やめてチハヤくん、あなたHPが12しかないの! 一撃瞬殺だよ!」


「ふ、ふん! やれるものならやってみろ!」


 相変わらず強気な声。

 でも丸見えの尻尾がしっかりと後足の間に挟まってるぞ!


「いやいやだから、戦う気ないから!」


 わたしは聖剣を下ろして鞘に納める。

 さっきまで羽のように軽かったそれが、なんか重く感じる。


 そっか……これは「本物」なんだよね。


 今さらながら思う。


 ゲーム的にはただのアイテム(とはいえ超々レアものだけど)。

 でも「ゲーム世界のリアル側」にいるわたしには、間違いなく本物の剣。


 本当に目の前の敵を──チハヤくんを、その命を奪ってしまう武器。


「ど、どうした! 再戦なら受けて立つと言っている!」

 

 わたしは鞘に納めた聖剣を膝上に乗せるようにして、チハヤくんの前にしゃがみ込む。


「だから、再戦なんてもうしないと言っている」


 ちょっと口真似。

 それから自分の黒髪の三つ編みおさげと、丸眼鏡越しの漆黒の瞳を強調するようにぐっと顔を近づけて、


「そして、あなたを仲間にしたいと言っている」


 黒い髪と漆黒の瞳──それは、この世界の魔王に転生したわたしの元ダンナで幼なじみの歳矢(としや)と同じ色。

 

 このゲーム世界──『ガルドアース・ウォーテイル』では、わたしたちしか持っていない、特別な色。


「仲間になろう。そして一緒に行こう。彼のところへ──魔王皇帝トーヤのところへ」


「おまえ、そんなに我が主に会いたいのか?」


「まあね。約束だから」


 ふっと笑う。


「約束と──あとはちょっと文句、言ってやりたくて」


 わたしとこの世界で会いたいと言っておきながら、その世界を滅ぼす──終わらせると公言しているあいつに。


「それからわたしはユキ──ユナキ。ユナキ・ミツヤー」


「ユナキ……」


「ね、どうかな? 仲間になって、くれないかな?」


 わたしはしゃがんだまま、広がる草原を見渡すように顔を巡らせる。


 長い三つ編みお下げが、それでも軽々と風に乗って宙に舞う。

 現実ではあり得ない光景。

 でも気持ちいい。


「わたし、早くこの世界に踏み出したい」


 顔を上げる。

 青い空。


「一人旅も悪くないけど、でもできれば、気心の知れた仲間たちと一緒に」


「旅? すべてが終わろうとしてるこの世界で?」


 あきれたように声が言う。

 チハヤくんと同じ、でもちょっと幼い感じの声。

 

 細かい演技。

 声優さんは誰だろう?

 

 ──いや。


 空へ向けたままの頭を横に振る。


 今しゃべってるのは間違いなく、チハヤくん自身だ。


「終わらないよ」


 顔を戻して、自分の言葉にこくりと頷く。


「終わらせない。終わらせてなんかやるもんか」


 世界の終わりを告げる石。

 この世界最大最凶の秘石。

 

 アーニーストーン。


 もちろん、それはわたしひとりじゃ絶対手には入れられない。


 だからこそ。


「仲間が欲しいの」 


 それは一緒にこの世界を旅して、

 そしてこの世界を救う、

 かけがえのない存在。


「……だめかな?」


「……」


 もう一押し?

 ちょっと小首をかしげてみせる。


「だめ?」


「……」


 なかなかしぶとい。

 さすがの神絵師キャラの笑顔も、同じ出自の魔狼少年には通用しないか。 


 ならば正攻法で行くしかない。


「あなたが仲間になってくれないと、ぶちゃけこのバトル、終わらないんだよね」


 ぶっちゃけてみた。


「もちろん戦いは終わってない。まだオレは負けてない」


 わたしの前で、ふわふわの前足を突っ張るようにして、つんと胸を張る。


 まだ言うかこの子は。

 ……かわいい。


「何がおかしい!」


「だって、このまま戦ったら、わたし勝っちゃうよ?」


 膝上の七星剣をキラリ。


「ひ、卑怯だぞ!」


「これはゲームだけど、でもただのゲームじゃないから。そうしたらチハヤくん、今度こそホントに死んじゃうかも」


 たぶん彼の耳には支離滅裂に聞こえてるだろう。

 でも逆に、だからこそわたしが本当に言いたいことは伝わる気がする。

 

 だってその言葉にウソはないから。

 その言葉の先にある、わたしの本当の思い。


 伝われ。


「……」


「わたし、あなたに死んでほしくない。死なせたくないの」


「……オレは敵だぞ。おまえたち人間の」


「わたしには関係ない」


 ゆるやかな光と風の中で、さっと頭を振る。

 黒い三つ編みおさげが円を描くように宙を舞う。


「どうやらわたしは、他の人たちとは違うみたいだし」


「それは……」


 人の姿だったときのチハヤくんと同じ、金色の瞳がじっとわたしの顔を──その漆黒の瞳を見つめている。


 わたしもその瞳で改めて彼を見る。


「それに、あなたも知りたくない? 歳矢の──魔王皇帝トーヤの真意を」


「真意?」


「どうしてあいつは、この世界を終わらせようとしてるのか。だってそうなったら、自分だって消えちゃうのに」


「それは……」


 言葉の先が出てこないチハヤくん。


「ね?」


『何が、ね、なんだか』


 チハヤくんには聞こえない程度の小さな声で、ユキくんが言った。


 黙れいいとこなんだから!

 さあもう一押し!


「わたしなら、きっとあいつからその真意を聞き出せる──ううん、聞き出してみせる!」


 強くうなずくわたし。


「だから行こう。あいつのところへ。一緒に!」


「──ふん、好きに」


 つん、と鼻先を明後日の方向へ向けてチハヤくん。

 言いかけて、でもその姿のまま、動かなくなってしまう。


 続く言葉も出てこない。


 口を開いたまま、金色の瞳を空へ向けたまま。

 ──これは。


「ユキくん、これって……」


 立ち上がろうとして、でもわたしの体も動かない。


『バグ──また発火……』


 黒猫バッジの声もとぎれとぎれになる。


 まずい、やばい。

 ここで、こんなとこで!


『待った……もうバトル……終わって……アウトするぞ!』


「何、ユキくん聞こえない! バトルがどうしたって!?」


『今……チャンス……こっちで……!』


 フリーズしたちび銀狼の上に半透明のウィンドウが開く。


 バトルコマンドの画面とはまた違う、フィールド用の操作画面。


 インベントリ、ステータス、設定……といった項目の中に混ざって、「ログアウト」もある。


 わたしの腕が勝手に上がって、その文字へとのばされてゆく。


「ちょっとこれ、ユキくんがやってるの?」


 現実世界から、わたしのスマホで、わたしのゲームアバターを直接操作してるらしい。


「待って、ちょっと待って、このままログアウトしちゃって大丈夫なの?」


 黒猫バッジからの返事はない。

 でものばした指先が、じわじわと「ログアウト」へ近づいてゆく。


「チハヤくんはちゃんと仲間になったの? まだ目の前にいるんだけど──」


 返事はない。


 代わりに世界がちらつき始めた。


 青空に時折、半透明の亀裂のようなものが走る。


 背景の青い山々が、ずれたようにがくっと動く。


「チハヤくん、チハヤくん、聞こえる!?」


 だめか。


 ──と。


 ふと背中の白マントと三つ編みがふわりと流れる気がした。


 ログアウトへ向かう手に必死に抗いつつ、なんとか顔を向ける。


 背後にある廃聖堂。

 その外れかかった大扉の半分が開いていた。


「……おんな、のこ?」


 聖堂の中にたゆっていた光が静かにもれ出てゆく中、その光に青い髪を遊ばせている。


 長い長い髪は尖った両耳の後ろで二つ結びにされ、さらにそれぞれ先端近くで半透明のリングでくくられていた。


 濃い青のセーラー風の大きな襟のついた、Aラインシルエットの膝上丈ワンピース。

 わたしと同じ、軽武装のロングブーツ。

 

 何よりも印象的な、チハヤくんと同じ金色の大きな瞳。

 

 謎の少女──

 それはもう一見して、ゲームの超重要人物。

 

「ユキくん、ユキくん見えてる!?  女の子が──!」


 でもその瞬間、わたしの指がログアウトのボタンに触れてしまい──


「だめ、だめ待って、ユキく──!」


 次の瞬間。

 光が満ちて。


 ──「世界」が、消えた。


次回予告!

 やっと仲間ができそうで。

 ログアウトできそうで。

 でもそのタイミングでまたバグが!

 さらに謎の少女が!


 様々な謎を残しつつ、

 舞台はやっと現実世界へ──


 って待って!

 わたしちょっと、大変なことに──!

 

 お楽しみに~じゃない!(# ゜Д゜)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。