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23.仲間!(世界の終わりまであと24日/18)

これは終わる世界で出会った仲間たちとの、

ちょっと遅まきながらの旅と冒険の物語

(──本当かw?)


前回のあらすじ!

 もう何が何やら。

 バトル未了につきバトルエリアに釘付け中のわたし。

 これじゃ何もできないぞ!

 でも我、胸中にバトル終了+仲間お迎えの一石二鳥の秘策あり!


 はたしてその成果は!?

 始まります!


『抜刀解放儀(リベレーション)のやり方? そんなん知ってどうするんだよ』


 襟元の黒猫バッジから、眉をひそめるような弟(ユキ)くんの声。


 抜刀解放儀~それはこのゲームのガチャ、通称「抜刀ガチャ」の名前。


『今はバトル中だから、抜刀ガチャは引けないぞ?』


「あ、やっぱりそうなんだ?」


『リアルタイムで進行するバトル中にそんな「重い操作」を許したら、たとえば戦闘描写と抜刀儀演出の処理が衝突して、ナキ姉おなじみのバグが発火するか、最悪そのままクラッシュして……』


「ストーップ!」


 わたしは空に向かって、大きく両手でバツ印を作る。


 現実世界のスマホでわたしのアバターキャラ~黒髪三つ編みの丸眼鏡な女子高生風ヒロイン姿~を見ているだろうユキくんには、果たしてどう見えているやら。


 ちなみに、ゲームキャラとしてアニメ風にアレンジされた姿もいいけど、ゲーム世界の「リアル」にいるこの「わたし」は、もっといいぞ!


 ちょっと小柄だけど、どこか小動物感あってかわいいし、とはいえ胸だって、たわわ──とは言わないけど、たわ、くらいはあるかなって感じだし。


 まあこの手のゲームからしたらかなり控えめかもだけど。


 でも匙加減は絶妙で、これだけでも相当満足度は高い。

 それ持ってる本人が言ってるんだから間違いない。


 ほんとこのゲームの絵師さん神だな……だったな。

 ほんとほんと、すっごくすっごく、すっごくかわいい!


 はあはあ。

 はあ──違った。


 えーと。そうだバトルだ。


「どのみち、チハヤくんに止めを刺さずにバトルを終わらせるには仲間にするしかないんでしょ」


 チハヤくん──銀狼の魔剣士チハヤ・ルース。

 わたしのゲーム初ログイン最初にして最強の敵。


 でも今はちび銀狼化してわたしの足元で丸くなって気絶してる。


 60万(!)以上あったHPも、残りわずか12。

 今のわたしでも素手で殴って倒せるレベル。


 そうすればバトル状態は終わり、こりじょんとかいうのが解除されて、わたしはフィールドを自由に歩けるようになる。


 もちろん当初の目的であるログアウトもOK。


 けどそんなことはしたくない。

 彼は、現実世界で死んでこのゲーム世界の魔王──魔王皇帝トーヤとして転生した元ダンナで幼なじみの歳矢の腹心。


 あの彼が選んだ「仲間」。

 それならただの悪者じゃないはず。


 できれば殺したくない。

 ていうかぶっちゃけ仲間にしたい。


 少年剣士風の見た目もすっごいきれいだし。まさに美麗。


 444歳ってのがちょっと引っかかるけど、そこは魔族だし。

 いや魔狼族だっけ──とにかくその中では、まだまだ全然若いってことで(非公式妄想設定)。

 

 あともちろん強いし(大事!)。


 仲間にして、バトルもそれで終了できればまさに一石二鳥。

 それができるならわたしの石の剣(イクタマさん)だってぶん投げてもいい。

(いえウソですごめんなさいイクタマさん!)


 さておき。

 妄想終了。


 わたしは足元で丸まっているちび銀狼姿のチハヤくんを再び抱き上げる。


 このエリア唯一の建物である廃聖堂を背に見えるのは、見渡す限りの大草原。


 涼やかな風にたなびく白マント。


 早くこの世界を歩きたい。

 旅をしたい。

 

 できれば、心許せる「仲間たち」と一緒に。


 たとえそれが最終章クリアのための容赦のないタスクだとしても── 


 わたしは風に揺れる三つ編み頭を上げて、高校以来の丸眼鏡越しに、その漆黒の瞳を絵に描いたような青空へと向ける。


 わたしにとってはリアルな世界とはいえ、基本的にはアニメ調の3Dアクションゲームだから、絵的なのは当然といえば当然だけど。


「──いいから教えて。抜刀ガチャのやり方」


 現実世界でわたしのスマホを通じてこのゲームをモニターしているユキくんへ、念を押すように、


「ふつうのやり方でいいから」


『わかったよ』


 納得いかない風のユキくんは、それでも襟の黒猫バッジ越しに説明をしてくれる。


『えっと、通常はログインしたあと、廃聖堂で好きな剣とかを選ぶ。ホームからも飛べるけど』


 そしてどの剣(ガチャ)を引くかで必要なアイテムやコストも変わってくる。

 ガチャ用のアイテム(ゲーム内通貨)には、無料で配られる聖輝石(アークジェム)と、有料の聖結晶(アークリスタ)の二種類がある。


『ナキ姉はまだプレゼント用の聖輝石しかないけど、初心者用の30連ガチャ無料プラス、初ログインでSSR+☆4以上のレアキャラ確定ガチャ、あと最終章実装記念ガチャを引くチャンスもあるってさ』


「えー、つまり?」


『つまり現状の無課金状態でも、とりあえず好きな剣で儀式ができる』

 

 選べる聖剣は、リアルの名剣や伝説の剣に加えて、ゲームオリジナルもある。

 ログイン時点で廃聖堂の床に突き刺さってるものもあれば、ゲーム中に入手して、新たに廃聖堂に出現するものもある。

 

 選んだ剣によって、出現する仲間やアイテムの種類やレア度が決まるらしい。


 わたしは、ログインしたとき廃聖堂で見た無数の剣たちを思い出しながら、


「じゃあこれも?」


 足元の七星剣を指さしてみせる。


『極めつけの超級レアだけど、手に入れられれば候補には出てくるはず──って、まさか』


 一瞬言葉に詰まるユキくん。


『もしかしてナキ姉、バトル(こ)エリア(こ)で抜刀解放儀やろうとしてる?』


「さっきからそう言ってる」


『聞いてないって!』


「その剣の持ち主を仲間にするには他に方法ないんでしょ?」


『確かに、一部のメインキャラは仲間にできる剣とかが決まってるけど……』


 黒猫バッジが、眉を寄せてふう、とため息(芸コマ!)。


『それでも、ふつうは抜刀ガチャ引くまで仲間になるキャラは登場しないはずだけど』


 なのに最初から仲間にしたいキャラが目の前にいるとか。

 バトル中の抜刀解放とか。


『いくらナキ姉だってイレギュラーにもほどがある』


 ゲーム世界のリアル側にいるわたしには、ふつうのゲームプレイヤーさんたちにはできないことができる。


 たとえばリアルならできるのに、ゲームの仕様(ルール)として禁止されているものは、こっちのやる気と工夫次第で、たいていなんとかなってしまうっぽい。


 たとえばバトル中に敵のレア武器を横取りするとか。

 それで奥義を発動させて敵の自爆を誘発させるとか。

(ごめんチハヤくん!)


『やりすぎて下手したら、また余計なバグに火がつくかも。そうなったら、今度こそ本当にゲームがクラッシュしちゃうかもよ』


「けど今のバトル状況が解除されない限り、そもそも廃聖堂にだって戻れないんでしょ」


 このフィールドで唯一存在してる建物。

 物語の始まりの場所。

 名もなき廃聖堂。


 建物は見えるけれど、でも「見えな(コリジョン・)い壁(ウォール)」に阻まれて近づけない。


 だったら「ここ」でやるしかない。

 抜刀ガチャ──七星剣を使った抜刀解放儀を。


『やるっても、そもそもどうやって? バトルコマンドには抜刀解放式しかないぞ──あ、もしかしてナキ姉まさか』


「違う! 抜刀解放式と抜刀解放儀でしょ、間違えてないから!」


 わたしは最速でユキくんのセリフを横取りすると、


「じゃなくって、あるんだってば。抜刀解放儀コマンド」


『ないって』


「あるって!」


『いやないから』


「それがあるんだって!」


『……』


「…………」


『………………じゃあ、やれば。好きに』


「すねることないじゃん」


 勝った。


『すねてねーし! 負けてねーし!』


「はいはい。とにかくやるから。フォローよろしく!」


『仰せのままに。勇者ユナキ・ミツヤー……っぷ』


「笑うな! わたしがつけた名前じゃないし!」

 

 ったく、みんなユナキだのナキ姉だの。

 わたしは「ユキナ」だっての。


『けどユキ姉じゃおれとかぶるし、昔っから泣き虫だったし──』


「昔話禁止! とにかくログインしたら最初からその名前だったの!」


『もしかして、トシ兄のしわざ?……ナキ姉への最後のプレゼントとか?』


 ユキくんは歳矢(としや)──今はこの世界に転生して魔王皇帝とかやってるけど──のことをそう呼んでいる。


「いるかそんなプレゼント」


 もしそうなら、の(・)し(・)付けて突っ返して別のプレゼントに交換してもらうわ!

 相手はこの世界じゃ魔王で皇帝だし。

 いいものいっぱい持ってそう……じゃなくて。


『抜刀解放儀ね』


「そうです!」


 わたしは七星剣を手に、少し離れたところにあるその剣の鞘のところまで進む。


 こちらもかなり意匠を凝らした鞘に剣先を納め、準備完了。


「──じゃ、行くよ?」


『やったれ!』


「うし!」


 手にした七星剣はそのまま、バトルコマンドの一番下にある「抜刀解放儀」をタッチ!


 突然空が暗転。稲光。

 何かゲームっぽい曲も聞こえてくる。


『抜刀ガチャのエフェクトとBGMだ!』


 黒猫バッジのユキくんが叫ぶ。


『マジで行けるかも!』


 稲光の黒い空を背景に文字が浮かぶ。


 ──そなたの剣に刻みし魂の名を告げよ。


『ナキ姉、今!』


 わたしは手にした聖剣を鞘から引き抜く。

 七色の宝石輝く刀身を空高くかかげる。


 空に新たな文字。


 ──我が名は聖剣、七聖剣(セブンスセイヴァー)!


「抜刀解放!」


 わたしも叫ぶ。


 聖剣から光がのびて、暗黒の空を切り裂き二分する。

 割れた空から青い光が降りてきて、スポットライトのように足元のちび銀狼を照らし出す。


 その体が、光に応えるように自らも輝き出す。


「光った!」


『レア演出キター!』


 光はさらにわたしの視界一杯に広がって、次の瞬間、ぎゅっと一点に集まる。

 目を凝らすと、そこにはカード状の新しいウィンドウ。


 描かれているのはチハヤくんの凛々しい立ち姿と、その背後に猛々しい銀狼の姿。

 もちろん手には七星剣。


 ──魔剣士チハヤ・ルース(UR+☆3/LV155)が仲間になりました!


 盛大なファンファーレと紙吹雪。 

 さらに、


 ──魔剣士チハヤ・ルースのルートストーリーが解放されました。

   物語に進みますか? YES/NO


「うわ、読みてー!」


 おもわず手がのびる。いえす!


『ノー!』


「わ、わかってるって!」


 0.5ミリ手前でストップ。 


『っぶねーって! ここでまた余計なことしたら、せっかくの抜刀ガチャがバグって全部おじゃんになるかもだぞ!』


 そうだった。これはこれでゲーム的にはイレギュラーな状況だった。

 残念だけど後回し。


 わたしは改めて、ちょっと影はあるものの、チハヤくんの颯爽としたお姿が描かれたカード風イラストをじっくりと見て、


「あ、でもレベルとか、なんかふつーになった感じ?」


 敵として出てきたときは、レベルとかもっとえげつなく高かった気が。


「なんかずるくない?」


『黙れ! ☆付きURの超級レアキャラだぞ! しかもちーさんとか!』


 確実に仲間にできるチャンスあったら、おれだって天井まで回してる! とユキくん。


『とはいえこの先完凸まで育てるのにどんだけ神剣素材必要になるんだか。こわ!』


 さらに、


『てか、同キャラ重ねでまたちーさん引くとか絶対ムリだろそれ!』


 とかなんとか、なんかもうユキくんの方が興奮してる。


「まあまあ、先のことは先のわたしたちにお任せするとして、ここは無事にチハヤくんを仲間にお迎えできたってことで──」


「──待った!」


「え? 誰?」


「こっちだ、こっち!」


 声のする方──足元へ目を向ける。

 と、そこには子犬のようにお座りしたちび銀狼が。


「チハヤくん、起きたんだ──って、しゃべれるじゃん!」


「当たり前だ」


 大きな瞳を、それでも精一杯眇めるようにしてわたしを睨み上げる。


「それより、今の話はどういうことだ。オレがおまえの仲間になるって?」


 ふん、と鼻を鳴らず。


「なんの冗談だ?」


 ──あれ?


 なんかこれ、ヤバくないですか?


次回予告!

 とりあえずキリのいいところまで──と

 思ったら、文字数だけで4500字以上?


 それでもまだまだ状況は収まりそうになく。

 作者も知らない次回はどうなる?

 お楽しみに~!!

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