22.マジ?(世界の終わりまであと24日/17)
すべてはこの星のこの世界の小さな塵にすぎないけれど……
前回のあらすじ!
バトルが終わりません!
終わらないと次に進めません!
でもそれにはチハヤくんを
完全に倒さなくてはならなくて。
リアルのわたしにとって、
それは彼を「殺せ」ということで。
無理ムリ! 絶対ムリ!
でも、じゃあどうしたら……?
チハヤくんとのバトルは、まだ終わっていなかった。
少なくとも、ゲーム的には。
それを終わらせないと、わたしは先に進めない。
バトルエリアに指定された領域から外へ出ることができない。
背後にある廃聖堂から先、見渡す限り草原が広がっている。
草原を吹き渡る風に、漆黒の三つ編みと白いマントが揺れている。
なのにわたし自身は、バトルエリアの見えない壁に囲まれて、そのフィールドに踏み出すことができない。
フィールドに出るためには、とにかくこの「ゲーム的にはまだ続いてるバトル」を終わらせないといけない。
でも「ゲーム世界のリアル」にいるわたしにとって、それは。
「バトルに勝利する」ということは。
わたしは腕の中で眠ったように丸まっているチビ銀狼──銀狼の魔剣士チハヤ・ルースのなれの果て(というのは言いすぎか)──を見つめながら、
「それって、この子を殺せってこと? できるわけないじゃん、そんなの!」
『この子って、ちーさんの年齢は確か444歳とかだぞ』
スクールシャツ風の襟元にくっつている黒猫バッジを通じて、現実世界にいる弟くんが言った。
「え、マジ?」
ゲーム世界で推定17歳(妄想上等)、リアルで28歳のわたしより遥かに年上だった!
いやいや。
「数千年生きる魔族ならまだ子どもみたいなもんでしょ」
『そんな設定あったかな?』
「今作った」
『ゲーム内のナキ姉が言うと本当になりそうで怖いわ!』
んなことあるわけないでしょが。
……ないよね?
『で? ちーさんを倒さないで、どうやってバトルを終わらせるつもり?』
「倒さないなら、仲間にするしかないでしょ」
『会話と説得で?』
「それこそ最初の目的だし」
実際わたしは、本来このゲームのバトルシステムにはないはずの「敵との会話」に成功してる。
その身ごとゲーム世界に入り込んじゃった(らしい)わたしだからそ可能な、ゲームのルールを超えた「リアルな行動」。
もっともそのせいで、けっこうバグを連発させちゃってるけど。
そのあたりのフォローは、外の世界にいるユキくんをはじめ、ネットを通じてこのゲームの攻略や解析を研究しているゲーマーさんたちに期待するしかない。
『で、具体的にはどうするつもり?』
「それが問題」
そもそもゲームのシステムにないことをしようっていうんだから。
マニュアルにもネットにもヒントなんてない。
「どうしたらいいと思う?」
『こっちに聞かれても』
黒猫バッジから投げやりな声が返ってくる。
現実世界で、わたしのアバターキャラクターを映してるスマホを見ながら肩をすくめるユキくんの姿が見えるよう。
『どうするにせよ、それができるかどうかはナキ姉次第だよ』
「わたし、次第か……」
『うん。「ゲーム世界のリアルにいるナキ姉の想い」が、現実世界のゲームシステムを「上書き」できるかが勝負──って感じ?』
「言ってることはそれっぽいけど、全然意味わかんないし。結局こっちで考えろってことじゃん」
ユキくんは、はっはーと笑ってから、
『でも、さっきはできたじゃん』
チハヤくんが持っていた聖剣を奪って奥義を発動させた。
それだって、本来のゲームでは、そのルール上ではできないこと。
なぜそれができた?
わたしは、まだ地面に置かれたままの聖剣──その刀身に七つの宝石が埋め込まれた細身の剣へ目をやりながら、
「あのときは、この聖剣──なんだっけ、セブンなんちゃら?」
『七星剣ね』
「それそれ、そのせいばーとかって名前が目の前のウィンドウに出てて、その通り口に出したら、なんかできちゃったというか」
『バトル時にこっち側で出した情報ウィンドウ? 敵の名前とか属性とか、HPとかを表示するやつ?』
「かな。ユキくんが自分で読め―! とか言ったやつ」
『ああバトル音声消した時ね──けどあれって、初出の敵の情報はわからなかったはずじゃ……?』
黒猫バッジが沈黙する。何か調べてるらしい。
『うん、やっぱり──情報ウィンドウに表示されるのは、実際にバトルして判明したやつだけだよ』
バトル中に特定の属性攻撃──たとえば光属性の攻撃を与えたときに、それが敵の弱点だった場合、次に同じ敵が出てくると、そのウィンドウに「弱点属性:光」みたいに表示されるらしい。
「じゃあ、聖剣の名前が出てたのも、やっぱりバグ?」
もうなんでもありだな、バグ。
『どうかな。なんでもバグのひとことで片づけるのも気に入らないし』
「そうだ、その情報ウィンドウっての、今出せる?」
『たぶん。待ってて──ほい』
出た。
わたしの目の前に、半透明の青っぽいウィンドウが浮いている。
「チハヤくん、ちょっとごめんね」
腕に抱いていたちび銀狼姿の彼を地面に下ろす。
改めて、その姿にウィンドウを重ねてみる。
魔剣士チハヤ・ルース/UR(+☆5)
LV 199(+☆5)
属性 闇+光
HP 12/666666──
……などなど、いくつもの情報が次々と表示されてゆく。
「HP残り12? うわ、あと一撃で倒しちゃってた! やば!」
慌てるわたしに、でもユキくんは、
『レア度もレベルも上限か。それを初戦でぶつけてくるとか、ほんと容赦ねーな! この最終章!』
そっちですか。
更に見ていくと、魔狼形態(幼狼)──なんてのもあった。
「そういえば、これ、どうやったらヒトの姿に戻せるんだろ?」
『ネットに情報はないなあ……基本的に仲間にできるキャラじゃないし』
そこで何か気がついたように、ユキくんが、
『そうだ。ちょっとインベントリ、見てみて』
「いべんとり?」
空を見上げる。
『鳥じゃない。インベントリ。要はアイテム欄。それの武器タグ開ける?』
「そっちでやればいいのに……ええといったん戻って、いんべんとり開いて、武器、武器……と」
目の前に立体映像のように浮いている半透明のウィンドウに手を触れつつ、さらに別のウィンドウを重ねて表示させる。
『ナキ姉も慣れた方がいいって──ふうん』
「何?」
『確認。やっぱり武器欄にはまだ七星剣が入ってないな』
確かに、そこにあるのは元々わたしが持っていた剣──「生玉神剣/UR+☆3」のみ。
わたしはまだ地面に突き刺したままだったイクタマさん(気安すぎか)を「収納」すると、
「それが何?」
『つまり、まだ七星剣の所有権はちーさんにあるってこと』
「ちーさん……チハヤくんに?」
『バトル中に手に入れたって扱いにはなってない』
ちょっと戻ってステータスを確認。
そこでも見られるキャラクターは「ユナキ・ミツヤー/ソードウォーカー(+☆1)/治癒師(+☆2)」──つまりわたしだけ。
そーどうぉーかー? いや今はちーさんだ。
わたしはふと思い立って、
「うーん……じゃあ、次はバトルコマンド、見れる?」
『アイコンじゃなくて?』
スマホのバトル画面では、通常その手のバトルコマンドは画面の端にアイコン表示されている。
「ええと、使えるコマンドがリストみたいに並んでるやつ」
『だから自分でやれってそれくらい──ほい』
わたしの腕が勝手に上がって、ウィンドウのアイコンをタッチしてゆく。
「ええと戦う、魔法、アイテム、抜刀解放式……これは奥義か」
やっぱり、「話す」とか「仲間にする」といった項目はない。
「さて、どーしもんかいなっと……」
自分の剣をしまった後で、まだ地面に置きっぱだった七星剣を拾い上げてみる。
「やっぱ見た目より軽いな……うん?」
コマンドに何か追加された。
「抜刀解放儀? 奥義? ……じゃないか」
奥義は抜刀解放式。こっちは抜刀解放儀。ややこしい。
でもって、そっちはいわゆる「ガチャ」というやつだった……はず。
抜刀解放儀──通称「抜刀ガチャ」。
このゲーム──『ガルドアース・ウォーテイル』では、仲間をお迎えしたり、レアアイテムを手に入れるために利用するガチャを確かそう呼んでいた。
あれ? でもこれって、廃聖堂ででしかできなかったはずじゃ?
それはログインすると最初に訪れる場所。
またログイン中なら、ホームから「抜刀解放儀」を選択することでも行けたはず。
ただしバトル中はホーム画面は開けない。
もちろんガチャなんて引けない──はず。
でもだったらなぜ、その抜刀ガチャがコマンド欄にあるの?
わたしは背後にある廃墟の建物にちらっと見てから、またウィンドウに目を戻した。
「ユキくん、これって……」
『え、何?』
「だから、抜刀解放儀」
『それがどうした? 今はガチャどころじゃないだろ』
ひょっとして、ユキくんの見てるスマホには表示されてない?
──もしかしたら。
「ね、ユキくん」
『うん?』
「抜刀解放儀って、どうやるの?」
後書きです!
違った次回予告です!
終わらない終わらないバトルが終わりません!
( ̄▽ ̄;)
でもでも今度こそ思いつたか打開策!
次回こそはバトルを終わらせて
現実世界へ戻るんだ! おお!
といわけで次回もお楽しみに~!
(ってこれやっぱり後書きじゃん!)




