14.扉を開けて…(世界の終わりまであと24日/9)
前回(13・再戦開始!)あらすじ!
ゲーム世界に入った「わたし」を、元の世界にある
わたしのスマホを通じて弟のユキくんが操作できることも
わかり、バトル=ユキくん、説得=わたしという
二人羽織り作戦で挑むことに。
さあどうなる今回!
バトルか? バトルなのか!?
『外に出たら即二段ジャンプして光輝青、即ジャンプで光輝青──』
ゲーム開始地点──聖域の廃聖堂。
床に突き立てられた無数の刀剣。
その間を抜け、出口の大扉へ向かって歩き始めたわたし。
でも聖堂の奥にある、半分外れかけた大扉の前で止まると、
「……耳元で念仏みたいに唱えるの止めて」
念仏なんてお葬式のときだけでたくさんだ。
透明な四枚翅をたたんで肩の上で丸くなっている黒猫妖精が、弟くんの声で、
『このバトルに、世界の命運がかかってるんだぞ』
「んな大げさな」
『そっちこそ忘れんな──この最終章はワンミスで即リタイア。そうなったら二度と世界を救うチャンスはないんだぞ』
ゲームのサービス終了を決めた運営側と、存続を願うプレイヤー側とのガチ勝負。
これはそのゲーム世界最後の大舞台。
最終章──『アーニーストーン』。
「……でもわたしの場合、失敗しても、あの『バグ』とかでやり直せるんでしょ?」
『どんな条件で発生したバグかわからない以上、基本的に二度目は期待しないほうがいい』
「だめだ、わたしまで緊張してきた……」
『焦って余計な事すんなよ。戦うのはおれ。ナキ姉はとにかく敵との話し合いってやつに集中して!』
「わ、わかった」
ちーさん。
魔剣士チハヤ・ルース(わたし的にはチハヤくん)。
前回の挑戦時、何もわからず扉を出たわたしを瞬殺したキャラクター。
参加プレイヤー1500人限定の最終章で、すでに200人以上の敗退者を出している元凶のひとり。
現実世界で死んでこの世界に転生した魔王皇帝トーヤの部下。
彼の腹心にして、ゲーム最強クラスの隠しボス。
ゲーム初心者にしてログイン二回目のわたしには、どうしたって勝てっこない相手。
そこで考えた作戦が、敵であるチハヤくんと「話す」こと。
それは一部のゲームで戦闘時に選べるコマンド。
敵と会話をすることで戦闘を回避し、かつ、状況次第では相手を仲間にできる。
ただしこのゲーム『ガルドアース・ウォーテイル』のバトルには、そんな仕様は存在しない。
通常なら他のプレイヤーたちと同様、問答無用で戦うしかない。
でも「わたし」は違う。
現実世界で大切な人だった彼から──魔王皇帝トーヤとなった歳矢から、直々にメールされてきた最終章への「招待状」。
その招待状からログインしたわたしは、なぜかこの世界に転生した彼と同様、自分の存在ごとこのゲーム世界へと出現してしまった(ゲーム風に言えば「召喚」された)。
現実世界では二八歳社会人のわたしとは違い、ここでは三つ編みメガネのティーンズ少女。
さらにこの世界では魔王皇帝と二人だけしかいない、黒い髪と漆黒の瞳。
運営がサービス終了を決断するほど不可欠な存在だった、今は亡き若き神絵師謹製、事実上わたし専用のプレイヤーキャラクター。
そのかわいさと言ったらもう──ああいや。
とにかく。
要するにそんな「わたし」にとっては、目の前の世界は思いっきり「リアル」な存在で。
ビジュアルは3Dアニメ調ではあるものの、空の光から髪を揺らす風の匂い、鳥の声や廃墟のすえた空気感、そして地面に立つ足の感触──すべてがリアルに感じられる。
間違いない。わたしは今「ここ」にいる。
ただのゲームキャラクターではなく、この世界に存在する人間として。
だったら──そのわたしにとっては。
その世界で出会う相手もまた、リアルな存在であるはずで。
ならばゲームのシステムに縛られることなく、お互いリアルな立場で、この世界の住人として、コミュニケーションがとれるのではないか。
戦う前に、話し合いをすることができるのではないか。
『何年現実世界の住人やってんだ──同じ世界にいるってだけで、話が通じると思ったら大間違いだぞ』
「わかってらい、そんなこと!」
『……らい?』
でも。それでもだ。
わたしの相手は、現代から転生した魔王皇帝トーヤ直属の部下。腹心──仲間。
あの歳矢が、ただの殺戮者を「仲間」にするわけがない。
だったらきっと、話し合える余地があるはず。
ヒントはある。
前回のバトル。その直前に聞こえた彼の「声」。
他のプレイヤーの実況画面にはない、「この世界にいた」わたしだけに聞こえた声。
必殺の魔剣士チハヤ・ルースが、碧の治癒魔導士ユナキ・ミツヤ(←これも今回自分のステータスを確認して初めて知った)へと向けて放った、「リアルの一言」。
どんな形であれ、彼のほうから語りかけてきたのは事実。
その言葉がわたしに届いたのも事実。
だったら、こっちの言葉も彼に届くかもしれない。
言葉が届くなら、話ができるかもしれない。
だったら、説得だってできるかもしれない。
でもそのためには、何よりもまず、この大扉を出た直後の瞬殺を回避しなくてはならない。
文字通り問答無用の一撃。まともに受ければ瞬殺確定。ゲームオーバー。
それを回避できるかどうかは、ひとえに「バトル担当」のユキくんにかかっている。
「じゃあ行くよ。後はよろしく」
『おおう』
おおう?
……わたしは大扉の前まで行って、そこで立ったまま、大きく深呼吸。
そして、全身の力を抜く。
直後──そのわたしの腕が勝手に上がって、大扉の円環状の取っ手を掴む。
現実世界のわたしのスマホを使って、ユキくんがこの体を操っている。
重い音がして、扉が開く。
草色の風に乗って光があふれる。
そして──
次回予告!
やっぱり始まらなかったバトル編(おい(# ゜Д゜))!
次回は、次回こそは──!
「みんな大変だ!
狼だ、狼が来たぞー!」
乞うご期待!(……本当か(;^_^A)
おおお楽しみにににに~~~!




