13.再戦開始!(世界の終わりまであと24日/8)
前回(12.リトライ!)あらすじ。
自分だけに聞こえた「声」を頼りに、最初のログインで
わたしを瞬殺してくれた強敵「チハヤくん」との
「話し合い(説得)」を提案するわたし。
正規のログインも済ませ、いよいよ二度目の挑戦が始まる!
「これから実際にあの強敵ちーさんと戦うのは、おれなんだから!」
「だったね。ユキくんが戦う。その間にわたしが話す──」
……この会話の真意は?
今度こそバトルの予感!? はてさて!
──最初にその可能性に気づいたのは、やっぱり弟くんだった。
それは最終章リトライ前──最終章攻略作戦会議中に。
親の居ぬ間の食堂で。
夕方の中途半端な時間に。
「もし──」
大盛りにしたご飯茶碗を手に、てかてか光るベーコンエッグをお箸で切り分けてせっせと口に運んでいるわたし(早飯食いは研修医時代の悪癖)の横で、ふとユキくんが、
「たとえば、もしゲーム内に入ったナキ姉のキャラを、その外からおれが操作できれば……」
結局自分で作ったベーコンエッグはそのまま、自分のスマホにダウンロードしていた『カルドアース・ウォーテイル』を触っていたユキくんは、
「……そしたら、少なくとも大扉の外に出た直後の瞬殺技は回避できるかも」
☆
『──さあやるぞ!』
「うん!」
顔の横に浮かぶ四枚翅の黒猫妖精がユキくんの声で言うのに合わせて、大きくうなずくわたし。
でもその気合とは裏腹に。
わたしはその場に立ち止まったまま、大きく息を吐くと、逆に全身の力を抜いてゆく。
と──その直後。
「うわ、うわ、わーわわわーー!?」
棒立ちになっていたわたしは、いきなりその場でジャンプ!
廃墟となった聖堂の崩れかけた天井付近まで跳び上がると、さらに空気を蹴っ飛ばすように足を出す。
「お、お、おーーー!?」
空中で向きを変えつつ、腰の石剣を抜き放ち、両手で頭上に掲げつつ振り下ろす!
「抜刀解放弐式・固有剣術『光輝青』!」
口から勝手に技名が出る。
「うひょーー! ……うん?」
──とん。
何も起こらず何事もなく、わたしはその場に着地する。
遅れてふわりと背中に落ちる白マントと黒い三つ編み。
「どうしたの? 技は?」
わたしは半分空の見える天井を見上げて、きらりとメガネを光らせて。
「ユキくん……失敗しちゃった?」
『違うわ!』
耳元で黒猫妖精が怒鳴る。
『今のはちょっと試してみただけ! 最初から聖域内では技は出ない仕様なの!』
そうなんだ。びっくりした。
「で、感触は?」
『悪くない。動作は軽めだし、技の出も早そう──』
その場でぴょんぴょん飛び跳ねるわたし。
人の体で遊ぶな。コラ。
『けど──』
三つ編み頭の横で飛ぶ黒猫妖精の青色の瞳が、ぎゅっと鋭くなる。
『これで職業が治癒師じゃなきゃ、もっとよかったのに』
「だからわたしのせいじゃないから、それ」
この三つ編みメガネ女子キャラ同様、自分で選んだわけじゃない。
最初にゲームにログインした段階でそうなっていたのだ。
別に元研修医だったから──ってことはないはず。
(ね、歳矢?)
それに治癒師だからといって、まったく戦えないわけじゃない。
プレイヤーキャラだけが持つ固有称号「ソードウォーカー」のおかげで、一応武器として「剣」は扱える。
さっきユキくんが抜刀解放技を試していたけれど、それもこの称号のおかげ。
ただしそれはあくまでも「初期称号」。
なのでそのスキルは最低レベルだけど。
「でもさでもさ、ステータス的にはちょっと希望あるじゃん?」
実は最終章に挑戦するためには、最低でも155レベルが必要。
それ以下のレベルのプレイヤーは、そもそも最終章挑戦メンバーへの応募はできない。
初心者どころか、このゲームに触れるのも初めてのわたしがこの場に立っていること自体が、言ってみれば最大のバグのようなもので。
そのせいか、わたしの今のレベルは155。
前回は何もわからず確認すらしていなかったので、今回初めて知った。
「レベル155! 155! なんかすごくない!? 三桁だよ三桁!」
『いやそれ普通に最終章エントリの最低ラインだから』
冷静に返す黒猫ユキくん。
「最低ラインとか知らないし、今さら文句言っても手遅れだっての!」
わたしは「女子高生らしく」、ぷくうっと頬を膨らませてみせる。
(こんな顔もかわいいぞわたし……さすが神絵師デザイン!)
『わかってるよ。まあ155レベルなら必要最低限必要なスキルは持ってるし』
言いつつ、でもまだ不満げな黒猫。
『これで前衛の戦闘職ならよかったのに。どうしてヒーラーなんだ。しかも治癒系スキルにボーナス全振りとか!』
「まだ言ってる──けどさけどさ、HP回復とかだってやっぱり大事じゃん?」
『それくらいならいいよ! なんで死んでも復活できない最終章で復活MAXにしてんだって話!』
「だから知らないって!」
眼前の黒猫と、眼鏡がぶつかるくらい額を突きつけて睨み合う。
『……あとで覚えてろよ』
「たかがゲームのことで?」
笑うわたし。
『されどゲーム──だろ?』
ふん、と黒猫。
「だね」
うなずくわたし。
それから、もう何もなかったかのようにさっと周りを見て。
「最後の最後に確認だけど、今回も抜刀解放式……ってのは、やらなくていいんだね?」
それはこのゲームにおけるガチャ要素。
周囲の剣を「抜刀」することで、そこに封じられていたキャラクターを解放して仲間にできる。
『ああそう。前回と同じ条件で戦えば、もし失敗してもまたやり直せるかもしれないし』
「バグって、同じことをすれば何度も起こるん?」
『それはバグ次第──まあ今は保険みたいなもんだと思ってればいい』
「仲間がいれば心強い気もするけど」
『その仲間に邪魔されて、敵と話すチャンスがなくなる可能性だってあるぞ?』
「ひとりだけ仲間を作って、それをユキくんが動かすってのは?」
『その間にナキ姉が瞬殺されるって。そうしたらゲームオーバーだ』
「あ、そか」
『もういいか?』
「いいんじゃない? 知らないけど」
『おい!』
「だってこれがプレイ二回目だし。ゲーム自体も、バグとかで何が起こるかわからないし」
『そんな態度で世界が救えるか』
「そか、これってそういう話だったんだよね」
わたしは改めて、崩れかけた聖域──廃聖堂の、その半分外れかけた大扉へと向き直る。
あの先には、とても強い敵が待っている。
そしてさらにその向こうには、広大な世界。
それはあと3週間で消滅してしまう、瀕死の世界。
現代世界から転生した魔王皇帝が支配する、冒険の世界。
わたしがこれから挑む世界。
それはこの世界を救うために。
魔王皇帝となった彼の手を、もう一度掴むために。
膝上まで覆うアーマーブーツで、その一歩を踏み出す。
さあ、ここから。
さあ、始めよう。
「行くよ!」
『おお!』
次回予告!
──って、その前にバトルはどこ行った(^^;?
あれおかしいな。もういい加減バトルが
始まってもいいはずなのに……
でも次回こそは待望(?)のバトル展開か!
(「か」?ww(;^_^A))
……お楽しみに~!




