11.魔王の事情(世界の終わりまであと24日/6)
⚠注)このエピソードの最後に、
どさくさ紛れの作者謹製大暴走ラフ挿絵の第4弾掲載中です。
(完全期間限定/即撤回あり/魔王キャラの流血描写あり)
(この挿絵掲載中、上記の理由により
本作品のレイティングをR15とさせていだたきます)
なお挿絵は、画面右上の「表示調整」内にある「挿絵表示中」を
クリックして、「挿絵を表示」とすることでOFFにできます。
挿絵の非表示を望まれる方は、お手数ですが上記の対応を
お願いいたします。
──え?
「最初の魔王皇帝は、トーヤじゃなかった?」
そりゃ確かに、彼──歳矢が死んだのは、
そしてゲーム世界に転生したのは、つい十日くらい前の話だけど。
公式にはもう先代魔王のイラストがなかったので、ユキくんが画像検索して見つけてくれる。
「……別人じゃん」
出てきたのは、いかにも魔王面したごっつい大男。
もちろんこのキャラもまたあの神絵師さんのデザイン。
なので、ただごっついだけじゃない。
深みというか、歴戦の魔戦士というか、そんな迫力がびしびし伝わってくる。
これはこれで「力こそ正義!」って感じで。
トーヤみたいな長身痩躯の美形魔王とはまた別の意味で人気出そう。
「確かこれって、三月の周年祭イベントの限定シナリオで魔界大戦みたいのが起こって、そこで魔王皇帝が交代して──あれ? でも今年の周年イベントは流れたはずだから……」
そう言いながら弟くんがざっと調べた範囲では、その「魔王交代限定シナリオ」が配信されたという話は確認できなかった。
「おれのカン違い?」
でも現に魔王皇帝は「トーヤ」に代わっていて。
ところが誰も──これだけのガチ勢が集まった情報サイトの中でも、そのことに言及したり、疑問を呈したりしている様子はない。
みんな、今の魔王皇帝トーヤをそのまま受け入れている。
「どうなってるの?」
「あのころは周年イベントが流れたり、最終章をやるとかやらないとかでかなり混乱してたからなあ」
ちゃかちゃかとキーボードを打ち、すっすとマウスを動かして、当時の情報を集めてゆく。
「そのどさくさで、ゲーム的にはもう実装されてたスクリプトが内部で勝手に発火してシナリオのフラグが誤作動したせいで、キャラが書き換わっちゃった──とか?」
弟くんの言葉はほとんどわからないけれど、その意味はなんとなくわかる。
とにかく何かトラブルがあって、魔王がトーヤ(歳矢)になっちゃったと。
「でもさ、それだとゲーム内で魔王が入れ替わった時期と、歳矢が死んだ時期の間で、かなりのずれがあるんだけど……」
ゲーム上の交代劇は三月あたり。でも歳矢が死んだのは七月末。
「ゲーム世界の時間と、現実世界の時間の流れが違うってこと──かな?」
「歳矢は魔王交代のころにさかのぼって転生したってこと?」
「さあね。でも死んでゲーム世界に転生したって段階で、もう現実をぶっちぎってるんだ。後はもう、何が起きても不思議はないさ」
もしその話が本当ならね──と、弟くん。
お手上げ状態で両手を掲げてみせる彼に、わたしはもうひとつ確認する。
「このトーヤのイラストは?」
神絵師さんはもういないはずなのに。
「先行して上がってたんだと思う。重要なキャラだしね」
「でもさ、そもそもの話、想定外のトラブルなら後から修正したりしなかったの?」
「下手に手を出せば、余計バグってゲーム自体が壊れる可能性があったのかも」
今どきのゲーム──それも後からあれこれイベントやらシステムやらが追加されるのが前提のアプリゲームにおいて、その構造はまさに複雑怪奇。
担当が変われば仕様も変わる。地雷も残る。
実際の現場でも、そのすべてを頭に入れて完全に理解している人はほとんどいないらしい。
「何はどうあれ、とりあえずまともに動いてるなら、それ以上余計なことをしないほうがいいって判断したのかも」
「どうせもう終わらせるつもりだったし?」
「それもあったかもね」
大規模な修正には、もちろん人的資金的コストがかかる。
サービス終了前提のゲームに、そこまでコストはかけられない──そう判断されたとしても不思議はない。
「まあよくある話だよ。この世界じゃ」
ユキくんは、手をのばしてモニタ画面のふちをぽんぽん、と叩いてみせる。
「──そうなん?」
「毎年毎月、新しいゲームが配信されちゃ終了してる。『がるどあ』は頑張ってるほうさ」
「正直な話、もしプレイヤー側が勝利してゲームの続行が決まったとして、その先はどうなると思う?」
「さあね。ただ十年単位で続くゲームなんてそれこそレアだし。がるどあ──『ガルドアース・ウォーテイル』はまだまだその域じゃない。この騒動でちょっと注目されてるけど、結局約束通り、一年延期しただけで終了ってのも全然ありだろね」
「頑張っても一年、か……」
「てか、今頑張らないと、その一年どころか、あと三週間ちょいで終わっちゃうけどね」
「そうだった!」
こんなことで時間を無駄にしてるヒマなんかないんだった。
「で──あっと、ええと、なんだっけ?」
額を覆うように手を置いたユキくんが、やれやれという風に首を振る。
「声でしょ。声──ちーさんに瞬殺される直前、自分だけが聞こえたっていう、謎の声!」
「そうそう。それそれ!」
これまで見たどの実況動画にもない、ゲーム世界に直接入り込んだ(らしい)わたしだけが聞いた声。
「けどさ、声が聞こえたからって、それが?」
「ええと、だからさ」
わたしは頭の中にあるイメージの言語化に苦労しながら、
「だからほら、話とか、できないかな?」
「話?」
そそ、とうなずくわたし。
「声が聞こえたってことは、じゃべれるってことで、だったら会話だってできるかもしれない」
他のプレイヤーさん達には無理かもしれない。
でもわたしなら。
『ゲーム世界のリアルサイド』にいるわたしなら。
敵のキャラクターも、その中では、わたしのようなリアルな存在になっていたら。
単なるイラストや3Dキャラじゃなく、ちゃんと「自分」を持っている存在だったら。
それはまさに、キャラクターひとりひとりに心を込めて描いた絵師さんが起こした奇跡のように。
そうしたら。
奇跡の神絵師さんが生み出したキャラクター同士なら。
「どうせ戦っても勝てないなら、話し合いで、なんとか説得できないかな?」
↑あれ、先に描いた「勇者」と髪型が同じ? まさか……(^^;ww




