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萌音の解析と、深淵の絶品バーガー

いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。 温かい応援のおかげで、頑張れています。どうぞお楽しみください!

 奈落の森・深淵部での初陣を見事に飾った六人は、すぐさま倒した『剛石猪ロック・ボア』の解体に取り掛かっていた。


「よーし、綺麗な赤身と脂身のお肉がいっぱい取れたよ! 

 硬い装甲の下は、すっごく柔らかいんだね」


 楓菜が、血抜きを完璧に済ませた巨大なブロック肉を掲げて笑顔を見せる。


「楓菜ちゃん、お疲れ様。そのお肉、とっても美味しそう」


 乃亜が、浄化の水で楓菜の手や道具を洗い流しながら微笑んだ。


「みんな、少し良いかな」


 周囲の安全確認と地形の調査を行っていた理人が、両手いっぱいに植物を抱えて戻ってきた。


「理人、何か見つかったのか?」


 蒼汰が、刀の血を拭いながら尋ねる。


「ああ。この深淵部の植生は中層とは比べ物にならないほど豊かだ。

 見てくれ、これの大群生地があったよ」


 理人が取り出したのは、淡い黄色をした、大人の拳よりも二回りほど大きなゴツゴツとした木の実だった。


「あっ、これって……『ふくらの実』!」


 乃亜がパッと顔を輝かせた。


「前に中層の森で三つだけ見つけて、村で焼いて食べたやつだよね! パンみたいにフワフワで美味しかったやつ!」


 楓菜も、理人の手元を見て興奮気味に声を上げる。


「あの時は少なすぎて、あっという間になくなっちまったんだよな。

 ……マジか、ここにはそんなにいっぱ生えてるのか!?」


 蒼汰が、理人の抱える大量のふくらの実にゴクリと喉を鳴らした。


「中層では希少だったが、この深淵の濃密な魔素の中では自生しやすいんだろうね。

 これなら気兼ねなく主食バンズとして食べられるよ。

 ……それからもう一つ、こっちは新種だが『烈火草れっかそう』という肉の臭みを消すスパイスも見つけた」


 理人が、葉の裏に辛味成分の詰まった草を見せて微笑む。


「へへっ、肉と一緒に焼いて挟んだら最高に美味そうじゃねえか。

 深淵、最高のお宝の山だな!」


 刀真が、大剣を肩に担ぎながら鼻を鳴らした。


 その時だった。


「……みんな、武器を構えて!」


 突如として、背後でホログラムのウィンドウを展開していた萌音が、鋭い声を上げた。


「萌音ちゃん、どうしたの!?」


 乃亜が杖を構える。


「剛石猪の血の匂いに釣られて、別の魔物の群れが来てる! 

 ……速いっ! 数は六匹!」


 萌音の言葉と同時、木々の影から音もなく姿を現したのは、体長三メートルほどの巨大な銀色の狼たちだった。その足元には、常に小さなつむじ風が巻いている。


「『疾風狼ゲイルウルフ』の群れだよ! 

 ……嘘、ボスのレベル、30を超えてる!」


 萌音が、解析結果を共有した。


 レベル30。


 あの日、自分たちを蹂躙した神宮寺たちの「レベル25」という数値を遥かに上回る。


「レベル30だと……っ!」


 刀真が顔を強張らせる。


「大丈夫! 落ち着いて、みんな!」


 萌音は、己の『絶対鑑定』の権限をフル稼働させ、空中にいくつものステータス画面を並べた。


「レベルは高いけど、ステータスは『敏捷』に極振りされてるだけ! 

 体力と防御力は驚くほど低いの! 

 一撃でも当てれば倒せるわ!」


 萌音の的確な情報が、六人の心から「未知のレベル」に対する恐怖を消し去った。


「よし、行くぞお前ら! 萌音、指示を頼む!」


「うん! 蒼汰くん、まずは右から来る二匹! 理人くん、左の三匹の足止めをお願い!」


「了解した!」


 理人が豊穣の街で成分を抽出しておいた小瓶を地面に叩きつける。


「急激な吸熱反応……『凍結遅延フリーズ・スロウ』の陣!」


 理人が描いた化学式陣が発動し、左から回り込もうとした疾風狼三匹の足元の水分が凍りつき、その俊敏性を強制的に奪い去った。


「楓菜ちゃん、今!」


「もらったぁっ!!」


 楓菜が、刀真によって修繕・強化された弓を引き絞る。


 ヒュンッ!!という風切り音と共に放たれた三本の矢は、動きの鈍った狼たちの眉間を正確に貫き、一瞬で絶命させた。


「刀真! ボスが正面から来る! 風のバリアを纏ってるよ!」


「おうよ!! 風ごとぶっ叩き割ってやる!!」


 刀真が、分厚い鉄塊の大剣を振りかぶる。


 ボスの疾風狼が突撃してきた瞬間、刀真はその強靭な筋力で、狼の纏う風の結界の『構造の歪み』を正確に叩き斬った。


 パリンッ!とガラスが割れるような音と共に、ボスの絶対的な防御壁が粉砕される。


「蒼汰くん、トドメ!!」


 萌音の叫びと同時。


「俺の飯の邪魔をすんじゃねえええっ!!」


 カロリーを爆発的に燃焼させた蒼汰が、赤熱した『陽炎』の刀を上段から振り下ろした。


 ズバァァァァンッ!!


 圧倒的な熱量がボスの巨体を両断し、森に静寂が戻った。


「ふぅ……。完璧な連携だったな」


 蒼汰が刀を鞘に収め、息を吐き出す。


「萌音ちゃんの指示が的確だったからね。あの速度でも、事前に動く方向が分かっていれば対処は容易だ」


 理人が眼鏡を押し上げながら言った。


「えへへ……。私、ちゃんと役に立てたかな?」


 萌音が照れくさそうに笑うと、刀真が大きな手で彼女の頭をポンと撫でた。


「ああ、最高だったぜ萌音。お前の目のおかげで、一発も攻撃をもらわなかった」



 ◇



 二度の激戦を無傷で乗り切った六人は、いよいよ待ちに待った『食事』の時間に入った。


「剛石猪の脂が乗ったお肉と、疾風狼の引き締まった赤身のお肉。

 そして、理人くんが見つけてくれた『ふくらの実』と『烈火草』……よし、最高のメニューにしよう!」


 乃亜が、腕まくりをして気合を入れる。


「蒼汰くん、かまどの準備お願いできるかな?」


「おう! 任せとけ!」


 乃亜が手際よくふくらの実を切り分けると、蒼汰は平らな石板を何枚か組み合わせ、刀の『陽炎』の熱量でそれらを炙って即席の石窯を作り上げた。


 そこにふくらの実を並べてじっくりと火を通していくと、茶色い皮の中で白い果肉がプクーッとふっくら膨らみ始め、広場にパンのような香ばしく甘い匂いが漂い始めた。


「うん! 外はサクッと、中はもっちり! 最高のバンズが焼けるよ!」


 乃亜が嬉しそうに微笑む。


「その間に、私と楓菜ちゃんでお肉を焼くね。剛石猪の分厚いお肉は、脂を落としながらじっくりと。

 疾風狼の赤身は、烈火草のスパイスをまぶしてサッと炙るだけ!」


 ジュワァァァァッ!!


 肉が焼ける強烈な音と、烈火草の食欲を刺激するスパイシーな香りが立ち込める。


 乃亜は、焼き上がったふっかふかの『ふくらの実』の間に、ニルス特製醤油で作った甘辛いソースを絡めた二種類の肉を、これでもかとばかりに山盛りに挟み込んだ。


「完成! 豊穣特製・極上深淵の肉挟み(ダブルミートバーガー)だよ!」


 乃亜が、六人分の巨大なバーガーを木のお盆に乗せて差し出した。


「い、いただきます……っ!」


 六人は一斉にバーガーに齧り付いた。


「う、うおおおおおおおおっ!!」


 一口食べた瞬間、蒼汰が天を仰いで絶叫した。


「なんだこれ、美味すぎる!! ふくらの実がフワッフワで、噛んだ瞬間に中から剛石猪の濃厚な脂の旨味と、疾風狼の野性味溢れる肉汁がジュワッと溢れ出してきやがる!!」


「烈火草のピリッとした辛味のおかげで、全然くどくないよ!

 ふくらの実の優しい甘さが、お肉の塩気を完璧に引き立ててる……っ!」


 楓菜も夢中で頬張っている。


「……見事な化学反応だ。デンプンとタンパク質、そして脂質が、口の中で完璧な方程式を描いている」


 理人すらも、眼鏡を曇らせながら無我夢中でバーガーを胃に流し込んでいる。


「乃亜ちゃん、最高だ……! これなら何個でも食えちまうぜ!」


 刀真が、豪快に笑いながら二個目に手を伸ばす。


「ふふっ、いっぱい食べてね! 

 萌音ちゃん、みんなのステータスはどうかな?」


 乃亜が尋ねると、口の周りにソースをつけた萌音が、ウィンドウを見ながらウンウンと頷いた。


「上がってるよ! 剛石猪のお肉で『筋力』と『耐久』が、疾風狼のお肉の効果で『敏捷』のステータスが……ほんの少しずつだけど、確実に底上げされてる!」


「ほんの少し、か」


 蒼汰が、自分の拳を握り込んで確かめるように笑った。


「一気にレベルが100になったりするわけじゃない。でも……確かに、さっきより体が軽くて、力が入るのが分かる」


「ええ。勇者たちのように、システムから与えられたチートで一足飛びに強くなるわけではない。だが……」


 理人が、バーガーの最後の一口を飲み込んで眼鏡を光らせた。


「僕たちは食べた分だけ、その命の特性を少しずつ、着実に自分たちの血肉ステータスに変えていくことができる。

 ……これは、絶対に裏切らない成長曲線だ」


「ああ!」


 刀真が力強く立ち上がり、大剣の柄を叩いた。


「塵も積もれば山となるってやつだ。この深淵のバケモノどもの極上の肉を喰い続けて、俺たちの連携で倒す……。このサイクルをひたすら繰り返していけば、いつか必ず……!」


「絶対にあいつらのチートステータスに追いついて、腹の底からぶち抜いてやれるってことだ!」


 蒼汰の熱い宣言に、五人の仲間たちも笑顔で、しかし確かな覚悟を持って力強く頷いた。


 圧倒的な暴力に対する、泥臭い反逆の道。


 焦る必要はない。仲間と共に狩り、共に喰らい、少しずつ最強への階段を登っていく。


 彼らの深淵グルメ・サバイバルは、確かな希望の光を帯びて、さらなる狩りへと続いていくのだった。

いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!


ついに始まった深淵編。

以前、中層でたった3つしか見つけられなかった『ふくらの実』が、ついに主食として山盛り食べられるようになりました(笑)。

あの時、村での栽培に回して我慢した蒼汰たちが、ようやくフワフワのパンにかぶりつく姿を描けて作者も満足しております。

レベル30超えの強敵を相手に、知恵と連携、そして『美味しいご飯』で対抗していく泥臭い反逆。

勇者たちの「与えられたチート」ではない、食べた分だけ強くなる「裏切らない成長曲線」こそが彼らの真骨頂です。

いよいよ加速していく深淵グルメサバイバル。

「このバーガー食べてみたい!」「蒼汰たちの反逆を応援したい!」と思っていただけましたら、ぜひページ下の**【ブックマーク登録】や、評価の【☆☆☆☆☆を★★★★★】**にして応援していただけると、執筆の大きな活力になります!

次回、深淵の夜はさらに過酷に、そして美味しくなります。

お楽しみに!

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