決着! 完全勝利の右ストレート
ガシィィィンッ!
あたしの巨大な鋼鉄の指と、タイタニスの極太の指が、プロレスの力比べのようにガッチリと組み合った。
「ほう! 俺様と力比べをしようってのか? おもしれえっ!」
タイタニスの腕の血管が異常に隆起し、恐ろしい力が込められる。
巨大な力と力がぶつかり合い、あたしたちの足元の地面がミシミシと悲鳴を上げる。
(……すごい力! さすが魔王軍の幹部ね)
あたしは、タイタニスの力に少し驚きを覚えた。
しかし。あたしの魔力は、おかげさまで満タンなのである!
(……なんか、腕相撲大会でお茶を濁された感じになってるけど、ドワーフの里を襲い、ガラムを傷つけ、ミリィたちを襲ったこと忘れてないわよ!)
あたしの怒りに呼応するように、両腕のロボアームが甲高い駆動音を上げた。背中のスラスターも噴射し、タイタニスの巨体を逆に押し返していく。
「な、なんだと!? 馬鹿な、この俺の筋肉が押し負けているだと!?」
タイタニスが驚いたような顔を見せる。
思わず耐えきれないといった風に片膝を落とし、苦痛に顔を歪ませた。
「ぐぬぬぬ……」
タイタニスが奥歯を噛み締め、更に力を込める。
あたしは、そんな姿をあざ笑うかのように、更に力を込めた。
ズズ……。
信じられないことに、タイタニスの足元が少しずつ地面にめり込み始める。
気づいた時には、腰付近まで地面にめり込んでいた。
(えええええ! 体硬すぎでしょ! なんで地面にめり込むのよ!?)
若干のドン引きを見せた私は、今度は上に一気に引き抜いてみせた。
「うおっ!?」
引き抜いた反動でタイタニスの巨体が持ち上げられるように宙を舞う。
あたしはそのまま、激しく腕を振り下ろす。
「ぐあっ!?」
タイタニスの巨体が、硬い地面に激しく叩きつけられ、砂埃が舞った。
あたしは、玄関マットの砂を払うように、そのままタイタニスをバンバンと地面に叩きつけた。
そして、何度か地面に叩きつけた後、あたしは空高くタイタニスの巨体を空高く放り投げた。
「うおおおおおお!」
タイタニスが、空中で絶叫していた。
まさか、自分が軽々とぶん投げられるとは思っても見なかったのだろう。
何十メートル上がっただろうか。
タイタニスの巨体が、随分と小さく見える。
そして、上がるだけ上がれば、後は落下するのみ。
あたしは、ガシャンガシャンと少し後ろに下がると、拳を構えた。
小さくなっていた、タイタニスが徐々に大きく見えてくる。
「「ふっ飛べ、ハゲ筋肉うううう!!」」
巨大な鋼鉄の拳が、タイタニスの岩のような胴体に物凄い勢いでめり込む。
ドォォォォォンッ!!!
まるで耳元で大砲をぶっ放されたみたいな、デタラメな爆音が鼓膜を叩いた。
「ぐはあっ!!」
タイタニスの声にならない苦悶の声が聞こえたのも一瞬。
タイタニスの体がくの字に折れ曲がり、そのまま回転しながら後ろへと吹っ飛んでいった。
もうもうと土煙が舞い上げながら、地面へ何度も叩きつけられ、地面をえぐりとりながら、水切の石のように転がり跳ねた。
「うおおおおお!」
「すげえ、あの巨体を吹っ飛ばしたぞ!」
「なんて、怪力だよ」
「信じられん、あの貧相な体で」
ドワーフたちの驚きの声がドッと湧き上がった。
(……貧相な体で悪かったわね)
あたしはガラ空きのボディーをチラッと見て小さくため息をつく。
「さすがお嬢様、空高く放り投げ、逃げ場を無くしてからの容赦ない右ストレート! 無慈悲すぎて震えましたわ」
「スズネ様の力強い拳、このカイルも一度味わってみたいものです!」
「おねえちゃん、すごい! かっこよかったよ!」
いつものリナ、カイル、ミリィである。
「だから、あんたたちは黙っててくれる……っ!?」
あたしが勝利を確信し、油断したその時。
『……スズネ、まだやる気みたいだよ?』
アルが砂煙の先を見つめて、目を細めた。
よくよく見ていると、笑う膝を必死で押さえながら、タイタニスが起き上がろうとしていた。
(……ちょっと、タフすぎない?)
あの一撃を喰らって、まだ起き上がれるタイタニスのタフさに、あたしは驚きを隠せなかった。
「まだやる気?」
あたしは低い声で、精一杯強がってみせた。
「……俺さまも、そこまで馬鹿じゃねえよ」
タイタニスは、鼻血を出しながら不敵に笑う。
「今日のところはこのくらいにしておいてやる。次は負けんっ!!」
吉本新喜劇のようなセリフと共に、目の前に大量の砂がバッと舞い上がる。そして、その砂埃がおさまった時には、タイタニスの姿は見えなくなっていた。
「ふう……」
あたしは力が抜けたかのように、大きくため息をついた。
(完全勝利ね!)
「勝ったぞおおお!」
「魔王軍の幹部を倒しやがったあああ!」
「やるじゃねえか、姉ちゃん!」
「信じられん、あの貧相な体で」
里全体が歓喜の渦に包まれる。
(さっきから『貧相な体で』ばかり言ってるのは誰よ?)
あたしは鬼のような形相で、辺りを睨み返した。
ともあれ、里全体がお祭りムードだ。
一気に緊張感が抜け、あたしは変身を解いた。
「そうだ! ガラムは? ガラムの容態は?」
あたしは我に帰ったかのように、一目散でガラムの元へと駆け出していた。
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