アルティメット・ストライク
「装甲魔法少女サクラ!フリーダムモード!システム、オールグリーンッ!」
地上から数百メートルの上空で、お腹を丸出しにしながら、一人でポーズを決める。
「……」
静寂。
バーニアの噴射音だけが周りに響いていた。
なんだろう。
誰かに見られて恥ずかしいのも嫌だけど、全くリアクションがないのも、それはそれで寂しいような?
いやいや。
こんな姿、誰にも見られない方がいいに決まってる!
頭をブンブンと振って気を取り直したあたしは、ヘッドギアのディスプレイを確認する。
眼下の平野部には魔族の軍勢が広がっており、その数は確認できないほどに多かった。
『スズネ、ロックオンしてぶっ放すんだ』
アルの声が頭に響く。
「ロックオン?」
あたしがおうむ返しに声に出すと、ディスプレイに変化が起こった。
ピピピピという無機質な電子音と共に、敵の姿に次々と赤いターゲットマーカーが重なっていく。
それと同時に背中の羽のようなパーツが左右に大きく広がっていき、複数の砲門が開いた。
しかし、敵の数に対してロックオンの速度が追いついていない。
(このままじゃ撃ち漏らす!早く、もっと早く……!)
あたしが強く念じた、その瞬間だった。
――パチンッ。
あたしの目の前で、何かの『種』のようなものが弾ける感覚があった。
途端に、五感が極限まで研ぎ澄まされ、視界が恐ろしくクリアになる。
思考が加速し、ロックオンの速度が急速に上がっていく。
ピピピピピピピピピピピピピピピピ――!!
わずか数秒で、平野にいるすべての魔族にマーカーが重なった。
「――全機捕捉!よっしゃ!ぶっ放せーーーー!!」
あたしが叫ぶと、背中の砲門から四方八方にパステルカラーの光が放たれる。
その光は、空中で複雑な軌道を描きながら枝分かれし、何千という光の矢となって地上の敵へと降り注いでいった。
ドドドドドドドォォォォォンッ!!!
大地を揺るがす爆発音が連続して響き渡る。
光の雨が直撃するたび、魔族たちは悲鳴を上げる間もなく光に包まれ、次々と蒸発していく。
ほんの数十秒。
あれほど平野を埋め尽くしていた黒い軍勢は、見渡す限りの焦土と化し、跡形もなく消え去ってしまった。
(……や、やった。本当に全部やっつけちゃった……!)
『お見事だよ、スズネ!でも、さすがに大技すぎて魔力が危険水域だ』
「えっ?」
アルの声がした直後、プシューッ!という排熱音と共に、背中の重武装スワンパーツが限界を迎えてパージされ、スッと溶けるように消えていった。
バーニアからの噴射が少なくなり、ゆっくり高度が落ちていく。
(……とりあえず、急降下で突っ込むことにならないのならよしとするか)
落下に耐性がついている(?)あたしは、冷静にそう判断した。
そして紙吹雪のようにゆらゆらと、ドワーフの里の方へ向かって舞い落ちていった。
◇◇◇
ゆっくりとドワーフの里に着陸すると、バーニアがぶすんと音を立てて止まる。
それと同時に変身が解けて、あたしは元の姿へと戻った。
「す、すごい!!」
「姉ちゃん、やるじゃねえか!」
「あの数の魔物を一瞬かよ!」
「なんなんだ、あの機械の鎧は!」
落下したあたしを囲むように、生き残っていたドワーフたちが歓声をあげる。
ドワーフたちは、まるで初めてロボットアニメを見た子供のように目を輝かせていた。
「おおおお!スズネ様!天から舞い降りるそのお姿、まさに女神の降臨!そして数千の軍勢を塵と化す圧倒的な力!このカイル、瞬きすら惜しんで目に焼き付けました!」
「ええ。上空からゴミを見下すような無慈悲な殲滅劇、まさに至高でしたわ。お嬢様の恥じらう姿を近くで見れなかったのだけが心残りですわ」
鉱山から戻ってきていたカイルとリナが、相変わらずの賞賛を浴びせてくる。
「スズネちゃーん!すっごーい!あの光のシャワー、最高のステージだったよ!」
ラビドルの三人も目をキラキラさせて駆け寄ってきた。
アイドルに「最高のステージ」と言われるのは悪い気はしないけど、あんなお腹丸出しのステージは二度とごめんだ。
「おねえちゃんっ!」
小さな影が、あたしの胸に飛び込んできた。
涙で顔をぐしゃぐしゃにしたミリィだ。
「ミリィ!無事だったのね、よかった……!」
「うんっ……!ガラムおじちゃんが、ミリィを庇ってくれて……」
ミリィの指差す先。
崩れた工房の壁にもたれかかるようにして、ガラムが座り込んでいた。
頭や肩から血を流し、息も絶え絶えだが、しっかりと生きている。
「ガラム!とりあえず、命は無事見たいね……」
「へっ、人間の嬢ちゃん……。カワイイとは程遠い姿だったが……まあ、やるじゃねえか。命拾いしたわい」
「ありがとう……。ミリィを守ってくれて、本当にありがとう」
あたしは胸を撫で下ろした。
街も、仲間も、みんな無事だ。これでやっと一息つける。
そう思った、その時だった。
――ズズズズズズッ……!!
「え?」
突然、足元の大地が激しく揺れ始めた。
地震?いや、違う。里の入り口の方からだ。
ドガァァァンッ!!!という凄まじい爆音と共に、里の頑丈な正門が爆破されたように吹き飛んだ。
飛び散る鉄の破片。
もうもうと立ち込める土煙。
「ガハハハハハ!なかなか派手な花火だったじゃねえか!」
土煙の奥から、地鳴りのような野太い笑い声が響いてきた。
(まだ生きてるやつがいたの!?)
煙が晴れ、姿を現したソレを見て、あたしの思考は完全に停止した。
見上げるほど巨大な男だった。
頭はツルツルのスキンヘッド。
上半身は完全に裸で、下半身はなぜかパツパツの海パン一丁。
しかし、その全身は岩のように隆起した、尋常ではない筋肉の鎧で覆われていた。
(……え?なにあれ。変態?)
さっきまで腹丸出しだったあたしが言うのもなんだけど、いくらなんでも防御力ゼロすぎない!?
なんで上半身裸で短パンなのよ!
「俺は魔王軍が幹部!大地のタイタニス!!土を統べ、岩を砕く、最強の筋肉の持ち主よ!!」
タイタニスと名乗ったそのハゲの筋肉男は、両腕を曲げて自慢の大胸筋をピクピクと動かしながら、暑苦しいポーズを決めた。
「遅れて来てみれば、部下を全滅させたのはこんなひよっこか!だが安心しろ、俺のこの鍛え上げられた筋肉が、貴様を極上の絶望へ導いてやる!」
(……なんなの、この暑苦しいハゲ筋肉は!!)
大群を全滅させて安心したところに、遅れて登場した超ド級の濃いキャラクター。
しかも、最悪なことに、今のあたしはさっきのフルバーストで魔力を使い果たしたばかりだ。
「ちょっと、冗談じゃないわよ……。魔力が切れてるってのに……」
未だかつてない危機的な状況に、あたしは顔を引きつりを隠せなかった。
いつもこの作品をお読みいただき、ありがとうございます。
確定申告終わってないのですが、1話分仕上げました…….。
続きは確定申告後(3/16以降)になりますので、よろしくお願いします。
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