システムオールグリーン!唸るマジカル・パイルバンカー!!
フワッと体が浮かびあげる。
ウィィィィィン……ッ!
光の中で、あたしの身体を構成する魔力が、強引に無機質なパーツへと組み替えられていく。
まずは右腕。
ガキィィンッ!!という重低音と共に、肩から先が、ゴツゴツとした巨大な機械腕へと換装される。
続いて左腕。
ガシャンッ!!と右腕と同じく、重厚な金属の光沢を放つ巨大なアームが装着される。
次に、光のスポットは脚部へと移る。
右足にガシャコンッ!
左足にガシャコンッ!
膝下を完全に覆う、分厚い装甲の機械靴が装着され、床を踏みしめるたびにズンッ、と重苦しい音が響く。
そして極めつけに、背中。
鋭利な刃を並べたような機械の羽が左右に大きく展開し、「プシューッ!」と小刻みに排熱の蒸気を吐き出して駆動を始めた。
(おおお……!なにこれ、ロボットアニメの主人公機みたい!すっごいカッコいいじゃない!)
あたしは無意識のうちに、両手の巨大な機械の拳を顔の前にかかげ、「グー、パー」と動かしてみた。
ウィィィン……ガシッ!ガシッ!と、精密なモーター音が鳴り、自分の意志と完璧に連動して鋼鉄の指が動く。
(よし、駆動系ヨシ!これならいける!)
重厚なフォルムと圧倒的なパワーの予感に安堵した、次の瞬間。
――スースー。
坑道を吹き抜ける冷たい風が、あたしの『腹部』と『太もも』をダイレクトに撫でた。
(……あれ?)
慌てて視線を落としたあたしは、絶望のあまり巨大なロボアームで頭を抱えそうになった。
(ちょっとアル! ボディは! ボディーはどこへいったのよおおお!!)
上は体に密着したスポブラのような装甲インナー。
下はローライズのショートスパッツ。
腕と脚は超重装甲なのに、肝心の胴体部分の露出度が高すぎる。
あたしの引き締まった(?)腹筋が、ものの見事にあらわになっていた。
(また、体が勝手に……)
あたしの羞恥心などお構いなしに、いつものように体が自然と動き出す。
「鋼鉄の拳で悪を砕く!装甲魔法少女サクラ!システム、オールグリーンッ!」
シャキィィィィンッ!!
背中のスラスターから勢いよく蒸気を噴き出しながら、あたしはバシィッ!と完璧なポーズを決めていた。
両手両足はゴツいメカ。
だけどお腹は丸出し。
計算し尽くされたアンバランスの極致に、後ろで見ていたカイルとリナが「おおおお……ッ!」と息を呑む気配がした。
「な、なんだよそりゃあ!?」
案内役のジジがドン引きしている。
(何がオールグリーンよ! こっちの羞恥心はとっくにオールレッドよ!)
死にたい。
今すぐ、岩の下に潜り込みたい!
(……本当、毎度毎度、このクソ毛玉は……。後で絶対ぶん殴る!)
羞恥心が怒りへと変わっていく。
そう心に決めたあたしは、とりあえずこの怒り目の前の対魔鉱石にぶつけることにした。
(この変身なら、ぶっ壊せるってことでしょ?)
あたしは、ガシャンガシャンと後ろに下がると、拳に岩盤を撃ち抜くイメージを込める。
「こんな岩盤、|さっさと砕け散れぇぇぇ《パイルバンカー》!!」
ドゴォォォォォォォォンッ!!!
巨大な鋼鉄の拳が岩盤に激突した瞬間。
魔法を弾くはずの対魔鉱石が、凄まじい爆音と共に粉々に砕け散った。
しかし、威力はそれだけでとどまらず、さらに奥の岩盤も貫通した。
鉱山全体が揺れるほどの衝撃。
天井から小石がパラパラと降り注いだ。
(これ、別の岩が崩れ落ちてきそうなんだけど……)
舞っていた粉塵が晴れると、坑道を塞いでいた岩盤は跡形もなく消え去り、その奥から青白く眩い光が漏れ出していた。
「こ、これは……ミスリル鉱の新しい鉱床だ!」
ジジが震える声で叫び、へたり込んだ。
『目標は完全に沈黙したようだ。さあ、この結果をガラムに報告しに行こうか』
(……最初から沈黙してたけど?)
あたしは、とりあえずほっと一息つくと、変身を解いた。
◇◇◇
新たな鉱石の発見という大金星を手土産に、あたしたちは坑道を後にして帰路についていた。
「お嬢様のあのお姿、柔と剛のあのアンバランスさ、特にその太もものライン。まさに聖域……」
「なんという破壊力、このカイル感服致しました!」
「まさかミスリルの鉱脈まで掘り進めちまうとは……。人間にも色々いるんだな」
みんな好き勝手に言いたい放題だ。
呑気な会話をしながら坑道の出口が見えてきた、その時だった。
――ドドドドドッ……。
「え?」
足元から、微かな振動が伝わってきた。
(まさか鉱山崩れたりしないわよね?)
あたしの、不安を見抜いたかのようにアルが念話を送ってくる。
『スズネ、鉱山じゃない。魔族の襲撃だ』
(え? 魔族の襲撃?)
同時に、あたしの左手首――眷属通信のブレスレットが、けたたましい通知音を鳴らし始めた。
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