ミリィの危機とガラムとの取引! いざ、対魔鉱石の眠る坑道へ
謎のアイドルプロデューサードワーフ、ガラム。
ここに来てから色々と情報が多すぎて頭を抱えたくなったけれど、本来の目的を忘れるわけにはいかない。
「あ、あの! あたしたち、あなたにお願いがあって来たんです!」
あたしは気を取り直し、魔王討伐の旅への同行、または協力を願い出た。
(あたしが魔王と戦うなんてとんでもない!)
なんとしてでも、英雄として戦ってもらわなければ。
しかし、そんな下心を見抜いてか、ガラムの返事は「断る!」と身も蓋もないそっけないものだった。
「魔王? 知らんわい。わしはここで究極のカワイイを追求し、このアイドルたちをプロデュースするのに命を懸けとるんじゃ! 魔王討伐についていくメリットが一つもないわ!」
後ろで、ラビドルの三人が「私たちのプロデューサーですから!」とばかりにコクコクと頷いている。
(……まあ、こんな変態プロデューサードワーフが仲間になっても困るんだけど!)
しかし、武器の強化とミリィの件は諦めきれない。
「じゃあ、せめて武器の強化と、この子の力の制御だけでもお願いしたいんだけど」
あたしがミリィを前に出すと、ミリィは恥ずかしそうに小さく頭を下げた。
そして、傍らにあった鉄のスクラップを小さな手で掴み、「えいっ!」と無邪気に握りつぶした。
ラビドルの三人が「ひっ!?」と悲鳴を上げて抱き合う。
ガラムが少し考えたように黙って、目を見開いた。
「わかった、嬢ちゃんの力の制御については引き受けよう」
「ほんと?」
あたしは安堵のため息をついた。
「このままでは、下手すると命にかかわりかねんからのう」
ガラムの言葉に、一瞬言葉が詰まる。
「命に関わる?」
「そうじゃ。 生き物には自分の体を破壊しないように、脳がリミッターをかけておる。しかし、今はそのリミッターが外れている状態じゃ。 今は問題ないかもしれんが、そのうち、手足の筋が負荷に耐えられなくなる。 最悪、手足が破壊し、死に至る可能性だって十分考えられる」
工房に緊張した空気が流れた。
(死に至る……!? そんな、ただちょっと力が強くなっちゃっただけだと思ってたのに!)
「その愛らしい姿でその怪力。ギャップに萌えるのう。いやいや。放置しておくには惜しい原石……。わしが修行をつけてやる」
不敵な笑みを浮かべたガラムが、三つ編みの髭を撫でた。
「それと武器の強化の件じゃが、他の者から聞いておらんのか? 今は鉱石が取れん。作ってやるくらいは構わんのじゃがの」
ガラムの話を黙って聞いていたアルが、あたしの脳内に直接、念話で語りかけてきた。
『スズネ。君が対魔鉱石の岩盤をぶち破るんだ』
(はあ!? 魔法が弾かれる石なんでしょ!? どうやってぶち破るのよ! あたし魔法少女よ?)
『魔法がダメなら、純粋な物理で殴ればいい。新しい鉱石が手に入れば、カイルたちの武器だけでも強化しておける。今後のプラスになる判断だと思うけど?』
(……っ! あんた、またなんか企んでるよね!?)
『さあ、どうする? 言わないなら、このまま帰る?』
アルの企みを含む声に、あたしはギリッと奥歯を噛み締めた。
このまま引き下がれば、ミリィの特訓はしてもらえるけど、里に来た目的が意味のないものになってしまう。
悔しいけど、背に腹は代えられない。
「あ、あの! じゃあ、あたしたちが鉱山の件なんとかします」
あたしが勢いよく声を上げると、ガラムがいぶかしげに眉をひそめた。
「なんとかするじゃと?」
「あたしが、その鉱山の道を塞いでる、対魔鉱石の岩盤をぶち破ってきます! そうすれば新しい鉱石が採れるようになりますよね!?」
あたしの宣言に、ガラムは目を丸くし、やがて鼻で笑った。
「ほぅ……? 人間の小娘にそんなことができるとは思えんが……」
「や、やります!」
「がははは! よかろう! もしあの憎き岩盤をどかしてくれたら、わしの最高の技術で、最高の武器を作ってやろうじゃないか!」
(カイルの剣がピンクのハートにされたらどうしよう)
あたしがカイルをチラリと見ると、本人は「おお……! ドワーフに新しい武器を作ってもらえるとは!」と無駄に目を輝かせていた。
リナはいつもと変わらず、怪しげな雰囲気をただよわせながら、かすかに微笑む。
あたしは深くため息をつき、足元にいるミリィと同じ目線になるようにしゃがみ込んだ。
「ミリィ。 あたしたち、ちょっとその鉱山ってところの岩を壊してくるから。ミリィはここで、ガラムのおじちゃんに『力のコントロール』を教えてもらっててくれる?」
「うんっ! ミリィ、おねえちゃんを守るためにがんばる!」
小さな両手でガッツポーズをするミリィの頭を撫でる。
ラビドルの三人も「ミリィちゃん、私たちと一緒にレッスンしよーね!」と歓迎してくれているし、まあ、この変人ドワーフも腕だけは確かだ。危険はないだろう。
「おい、ジジ! この者たちを鉱山まで案内してやれ!」
「へいへい。 ……あんたたち、物好きだねぇ。 ついてきな」
あたしたちは、ガラムの弟子であるジジに案内され、問題の鉱山へと向かった。
◇◇◇
薄暗い坑道を奥へ奥へと進むと、やがて開けた空間へと出た。
「ここだよ。 この憎き岩盤のせいで、里は干上がってんだ」
ジジが松明を掲げて指差した先。
そこには、坑道を完全に塞いでいる、見上げるほど巨大な岩壁があった。
「これが、対魔鉱石……。 魔法を弾くし、すごい硬いのよね? ほんとに大丈夫なの?」
『心配ないよ、大丈夫!』
アルが肩の上でニヤリと笑う。
(次は何を企んでるのか知らないけど、観客も最小限!)
アルがどんな衣装を考えていても、ジジは女性だし、なんとかなる!
と思ったが。
「次はどんな屈辱的な衣装でお嬢様の恥じらうお顔が見られるのでしょうか。……ああ、想像しただけで胸が高鳴りますわ」
「スズネ様の、新たな勇姿! このカイル、瞬きすら惜しんで両目に焼き付けさせていただきますぞ!」
リナが期待をにじませ、カイルの鼻息が荒い。
「あんまり、ジロジロ見ないでよね!」
あたしは覚悟を決め、左手のブレスレットを強く意識した。
「変身っ!!」
叫んだ瞬間。
いつものパステルカラーの光ではなく、眩いほどの白銀の閃光があたしを包み込んだ。
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