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竜の寵児は祈りを捧げる~無垢な王女とコーヒー好きの王子/祈っていればいいだけの人生です~  作者: みつまめ つぼみ
第1章:竜の寵児

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21.インターミッション1

 結論から言うと、私は行きに三十分弱かけた道を帰りは五分で走破した。途中で邪魔な木を蹴破った気がするけど気にしない事にする。

 フレドは十分で走破したので、やっぱり加護の相性とやらは結構高いみたい。


 神殿の裏手では赤竜おじさまが既に待機していて、すぐに二人を客間に連れて行った。

 フィルはその場で私が出来る限りの癒し諸々を使い倒し、今は汚れも取れてぐっすり眠っている。

 クラインさんも、まだ意識はもどらない。


「赤竜おじさま、クラインさんの意識は大丈夫かな?」


 私が見上げると、赤竜おじさまはウィンクで返した。


「なに、ちょっとショックで寝込んでる状態だ。じきに目を覚ます――フレド、君はしばらくお姉さんの傍から離れるな。起きて直ぐは混乱するはずだ。お前がきちんと安心させてやりなさい」


 フレドは赤竜おじさまに戸惑いながら頷いた。



 フィルは最初は「眠るのが怖い」と言って起きてたんだけど、私の癒しが終わると赤竜おじさまが「もう悪夢は見ないよ」と言って睡眠術式で眠らせた。

 いくら加護や竜の魔法術式で心を癒してもそれは応急処置で、睡眠で魂の休養を取る必要があるんだって。


 私はクラインさんのベッドサイドに居るフレドの傍に、椅子を持って行って腰を下ろした。

 私の周りにはナディアたちや赤竜おじさまが揃ってる。


 私は、私たちが知るフレドが居ない間の事を全てフレドに伝えた。


「――という感じ。フレドはどう思う?」


 手がかりのなくなった今の状況でも、”フレドなら何かに気が付くかもしれない”と私は期待していた。


 フレドは両腕を組んで顎に手を当てながら考えている。


「――まぁ、間違いなくフィルに化けてた悪魔崇拝者はクリスだな。俺のプライドを賭けてもいい」


「プライド?! そこまで?! なんでそんなに言い切れるの?!」


 フレドは不敵な笑みを浮かべて語りだす。


「まず、クリスは俺が怪しいとゲルダに吹き込んだ。実際おれは怪しいからな。疑惑をでっちあげるまでもない。だが俺は俺自身が潔白で在る事を知っている。そして俺はクリスがフィルを見ていることを知っている。あいつは俺たちの試合じゃなく、フィルを見ていたんだ。同じ武錬をする人間だ。見られれば気付かれるという事は当然理解している」


 あ……そうか、あの時気になっていたクリスさんの姿。

 私は会話じゃなくて、クリスさんの視線が気になってたんだ。

 クリスさんはフレドじゃなく、フィルを見ていた。それが気になったんだ。

 あれが巫女の直感だとしたら、最初からクリスさんが犯人だと教えてくれていたのか。


 フレドが言葉を続ける。


「クリスを疑う可能性が高い俺がある日突然学院に来なくなった――この時点で、クリスは俺がクリスを犯人と見定めて動き始めたと断定したんだ。その瞬間に姉さんを拉致して俺の行動を縛る事を考え、即座に実行に移した――とんでもねー行動力だ」



 クリスさんの言葉が脳裏をよぎった。


『あははは! あなたそれ、見習っちゃいけない奴よ! 見習う相手はちゃんと選びなさいな!』


 そうか、見習っちゃいけない行動力ってそういう意味なのか。悪いことでも迷わず即座に実行できてしまう行動力なら、確かに私は要らないかな。

 ……悪魔崇拝者の言葉だと分かっていても、私の為になる助言をしてくれるクリスさんを、私は何故か敵だと思えなかった。なんでだろう?



 フレドが言葉を続ける。


「そのまま白竜信仰クラブのメンバーに変身して姉さんを拉致してそこらに気絶させ、何食わぬ顔で武錬クラブに顔を出す。すぐに”俺たちの家に様子を見に行く”と言って抜け出ている。この時に姉さんをあの監禁場所へ連れ込んだんだろう。他の武錬クラブメンバーにはできない、クリスだけに出来る行動だ。となれば、クリスは変身能力を持つ悪魔崇拝者だと確定する。そうなると偽フィリップ王子もクリスだったことになる。あいつにはフィルを誘拐する動機がある。”フィルを手に入れる”というな。ならばフィルを誘拐したのもクリスだし、フィルがあの日会っていたのもクリスだ――ここまで反論できるところがあれば言ってみてくれ」


 私の頭では、反論できるところは……ないかな。

 どれも根拠があって説得力があるように思える。


「そこまではいいよ? でもクリスさんは私を殺そうとしなかったよ? 悪魔崇拝者なのに。なんでかな?」


「クリスの獲物がゲルダじゃなくフィルだった。簡単な話だ。クリスはフィルを手に入れるために悪魔に魂を売った。ゲルダの命には全く興味が無かった。生きようが死のうがどうでもいいんだよ。フィルに化けた時ですら、あいつにはゲルダを殺す気がなかったんじゃねーかな。だから”今なら殺せるぞ! さぁ殺せ”と言われても”死にたきゃ勝手に死ね”としか思わなかったんじゃねーか? ――その時クリスは既にフィルを手に入れている。あいつは勝者で、ゲルダは敗者だ。陰で敗者であるゲルダをあざ笑いつつ、牢屋に繋がれたフィルを見て勝利の余韻にでも浸ってたんじゃねーの?」



 あの時――クリスさんは私を見て、それまでと違う余裕のある自信に満ちた笑みを浮かべていた。

 敗者をあざ笑う勝者の余裕……嫌な気分だけど、言われると納得してしまった。

 殺す必要がないから殺さなかった。むしろ、敗者の私を生かしたまま、勝者の気分に浸りたかったのかな。



 フレドが肩をすくめた。


「これ以上に説得力のある説がない以上、状況はクリスが悪魔崇拝者と示してる――まぁフィルが目覚めれば、あの日に会った人間も拉致した人間も分かる。それでしまいだ」



 私はほぇ~っと自信満々のフレドの顔を眺めていた。

 ちょっと話を聞いただけでここまで考えが回るのかー。

 私とは頭の作りが違うのかな……


「フレド、やっぱり頼りになるねぇ」


 ニヤリとフレドが笑う。


「今更気づいたのか? あんな頼りない男から乗り換えるなら今だぞ?」


 私は顎に人差し指を当てて天井を見て考える。

 結論を出してから、私はフレドににこりと微笑んだ。


「んー、どっちも私が力を貸さないとあそこから抜け出てこれなかったから、頼りなさは引き分けじゃない?」


 意表を突かれたフレドがきょとんとした後、がっくりと項垂れた。


「返す言葉もねぇとはこの事だ……」


 周囲が笑いに包まれると同時に、クラインさんから声が上がった。


「――嫌! こないでっ! 助けてフレド!」


 即座にフレドがクラインさんを抱きしめ、背中をさすり始めた。


「あーもう大丈夫、大丈夫だ。落ち着け。ここは安全だ。なんせ神殿だからな」


 目に大粒の涙を溜め、呆然とするクラインさんが呟く。


「しん……でん……? なんで?」


「竜の寵児が助けてくれた。感謝しとけよ?」


 クラインさんの目が、白いローブ――私を探し出す。


「殿下が、私を?」


 私はにっこり微笑んで返す。


「力は貸したけど、助けたのはフレドだよ? 抱えてここまで連れて来たのもフレドだよ?」


「馬鹿! お前そう言うのは言わなくていいんだよ!」


 顔を真っ赤にするフレドという、とても珍しいものを見て思わず私は唸っていた。

 お姉さんを助けるのも、自分の手で救い出したがっていた。

 お姉さんの魂を悪魔の手から救い出すために、一度は求婚した私を殺す決意までしていたし……


「う~ん、フレドって案外シスコンだったのかな?」


「うるせー! ほっとけ!」


 事情が分からないクラインさんと、顔を真っ赤にするフレド以外が笑いだし、場が明るい空気に包まれていった。





****


 みんながお昼を食べ終わる頃、ようやくフィルが目を覚ました。

 フィルの枕元に、別室に移ったクラインさん以外が集合し、話を聞くことになった。


 私はにっこりと微笑んで尋ねる。


「どう? フィル。まだ痛い所や気分の悪い所はある?」


「……いえ、どこも痛くありませんし、気分もスッキリです。あれほど苦しめられた悪夢も、今や跡形もありません。もう気が狂うかと思うくらい苦しかったはずなのですが、今の僕の心はとても穏やかです」


 フィルは呆然としながら、淡々と告げていく。

 ”ただ普通である事”に呆然とする――どれほどの責め苦を受ければそんな心境になるのか。

 私の心のブチギレメーターが溜る一方な気がした。


「ねぇフィル、会いに行ったのもフィルを誘拐したのもクリスさん、で間違いないかな? フレドが”俺のプライドと我が家の全財産を賭ける”って豪語してた推測なんだけど」


 私の一言にフレドが即座に反応した。


「何勝手に全財産まで追加してるんだよ?!」


 私はニヤリと微笑んだ。


「おやおや?! 負けない賭博の掛け金が勝手にレイズされたからって何を恐れるのか教えて欲しいな?」


「……いや、そりゃあ九割九分は自信あるが、万が一があるんだよ。俺以外の事には責任が持てん」


 仏頂面で腕を組んでそっぽを向くフレドを見ながら、私はなんだかおかしくなってしまった。

 含み笑いをした後、フレドに感想を告げる。


「フレドってそういうとこ、ほんと真面目だよねぇ……フィルが変なところがいい加減なのと逆なんだよね」


「え?! フィルにそんなところがあるのか?!」


 意外だったらしく、そっぽをむいてたフレドの顔がこちらに戻ってきた。


「強引に女の子を口説くときは、普段の真面目くんな所が欠片も見られないくらいだよ?」


 ”降ろして?”っていうと”考えます”っていうし、考えたかと思ったら”検討しましたが嫌なので降ろしません”とか返ってくるのは、フィル自身もそれまで知らなかった姿じゃないかな? とは思う。


「意外な一面だな……」


 フレドは感心して何度も頷いていた。

 うん、気持ちはわかるよ……私も戸惑ったし。


 ニコニコと微笑む赤竜おじさまが私たちのやりとりを楽しそうに眺めつつも、遠慮がちに一言告げてきた。


「そろそろ話を進めていいかな?」


「あ、はいどうぞ」

「あ、はいどうぞ」


 私とフレドの声がハモったところで、フィルがおずおずと答えを告げる。


「……ええ、クリスで間違いありません。僕は”どうしても相談したい秘密の話があるから、休日に会えないか”とクリスに持ち掛けられました。クリスに秘密の話と言われたので、あの日、彼女に会うことを誰にも告げずに行動をしました。そして僕は彼女と会い、わずかに会話をしている間に急激な眩暈に襲われ意識を失った――これが、僕が覚えているあの日の出来事です」


 私は話を聞いていた赤竜おじさまに振り向き、意見を求めた。


「ねぇ赤竜おじさま、これはどういう事だと思う? そんな急に意識を失う事ってあるの?」


 赤竜おじさまはわずかに考えるようだったけど、すぐに話してくれた。


「おそらく、睡眠の魔導術式だね。目の前のクリスという子が使ったか、他に協力者が居たか。それは今の話だけでは定かではないなぁ。姿映しの邪法を使える辺り、そのクリスという子はかなり悪魔に魂を侵食されていると見ていいだろう。ならば、気づかれない様に睡眠の魔導術式を使うくらいは、簡単にやってのけるだろうね」


「他に協力者? クリス以外に悪魔崇拝者が居る可能性があるって事?」


 小首を傾げた私の疑問に、フレドが応えてくれる。


「少なくとも、クリス以外にもう一人居るはずだ。俺は悪魔崇拝者としてのクリスと直接接触していないからな。姉さんを人質に取ったと俺を脅したのは、マント姿でフードを目深に被った男だった――まぁそれもクリスが姿を変えて俺と接触していた可能性を否定はできないが、あの時は学院の授業時間だった。クリスが抜け出している可能性はかなり低いと思う――なぁ、そこのおっさん、何故あいつらは姉さんを人質に取ってまで、俺にゲルダを殺させようとしたんだ?」


 赤竜おじさまが、頷いてから語り始める。


「巫女を穢す方法の一つに、”愛する者から殺される”というものがあるんだ。その瞬間の絶望を悪魔は食らう。強い巫女の絶望ほど、悪魔に力を与えるからね。恐らく、フレドの存在がゲルダの中で大きいと判断して、そんな方法を選んだのだろう」


 その赤竜おじさまの言葉で、フィルのこめかみに太い青筋が浮き上がった気がする。

 きょとんとする私に対して、フィルが感情を押し殺した声で尋ねてくる。


「……ゲルダさん、貴方の中で、それほどフレドの存在は大きいのですか?」


 私は小首を傾げて考えてから、フィルの目をまっすぐ見て応える。


「愛してるかと言われると”よくわかんない”としか言えないけど、大切な友達だとは思ってるよ? 心の相性が重要な創竜神様の加護でも、フレドはナディアよりもずっと強く加護の影響を受けてる。そのくらい、私はフレドの事を信頼してるんだと思う」


 私の言葉を聞いて、フィルがわずかに顔をしかめた。

 なんだか不満を感じているみたい。


「……僕とフレド、どちらが大切だと、どちらをより信頼していると、僕の目を見て言えますか?」


 ……これは私、試されている? 疑われてるのかな?

 あれほど心配して、自分を見失うほど心配して、赤竜おじさまの特訓も一生懸命にこなして、必死に助け出した王子様から、私は今、疑われてるのかな?

 とっても昂る感情が静かにお腹の奥で燃え上がる。

 なんでこんな気分になるんだろう?


 私は再び小首を傾げ、フィルの瞳をまっすぐ見て、逆に質問する。


「私にフィルより大切な存在があると、今一瞬でも本気で思った? ねぇ聞かせて? もしかして私、今わずかでも心を疑われたのかな? だとしたら、今すぐ表に出て加護の力を全開にして組み手で打ちのめしたいな、ってそんな気分になりそうなんだけど、フィルは本気で言った言葉なのかな?」


「……いえ、ちょっとした僕の嫉妬です。ですから真顔でそんなに怒らないでください。ゲルダさんが僕とフレドの関係に嫉妬するのと同じ程度の、些細な事だと思ってください」


 フィルは私の顔を見ながら顔をひきつらせた……なんで乙女の顔を見て顔を引きつらせるのかな? ちょっと失礼じゃない?

 でも私はそれを聞いて、にっこり笑って返す。


「そっかー。よくわからないけど、良かった! それを聞いて凄い安心しちゃった! ……なんでなのかな?」


 前に白竜信仰クラブで私たちは友人だってお互いに認めていたけど、あの時と今は関係が変わってる気がする。

 今は恋仲だって噂はされるけど恋人になった訳じゃないし、大切な人だとは思うけど、フィルと私の関係を表す言葉が見当たらない。

 でもフィルからは本気で結婚を考えてると言われてるから、求婚されていることにはなるのかな? 私はそれに返事を返していないけれど。

 その辺が何だか曖昧なまま、今まで来ちゃった気がする。


 私が腕を組んで首をひねって考えていると、赤竜おじさまが楽しそうに笑い始めた。


「ははは! その関係に名前が必要な時もあれば、不要な時もある。少なくとも今のゲルダとフィルの間に、名前は不要だろう。お前たちはお互いが最も大切な相手だと、胸を張って言えるだろう? 今はそれで充分だろうさ。時期が来たら、きちんとフィルがけじめをつけるだろう」


 ふーん? 今は名前が無くても良いんだ?

 じゃあ難しく考える事もないのかな?

 とりあえず私は赤竜おじさまに向かって、「わかったー!」と元気よく右手で天を突いた。


 その姿を見たフィルが、少し遠い目をして私に話しかけてきた。


「その姿、なんだか出会った頃のゲルダさんを思い起こしますね。とても懐かしくて愛おしい、僕が心を奪われた時のゲルダさんの姿だ」


 私はきょとんとして小首を傾げてフィルを見つめた。

 懐かしい? 最近はそうじゃなかったって事かな?

 フィルがさらわれてからは自覚があったけど、その前から変化があったのかな?

 出会った頃――あの時、一人の女の子と男の子として、身分を忘れていた時の私が”懐かしい”のかな。


 赤竜おじさまはまた楽しそうに笑う。


「はははは! これがゲルダ本来の姿だよ。少し歪んでしまったゲルダの心を、おいちゃんが特訓の時に直してあげたからね。言っただろう? ”ゲルダは本来、活きが良い子だ”と。こっそり神殿から抜け出して街を散策してしまうような女の子が、お前の本来の姿だ。今のお前なら街のゴロツキに絡まれても”親切な人だな”と思えてしまえるはずだよ」


 ……そんな自分は失われてしまったと思っていたのに、確かに今の自分ならそんな対応をしてしまう気もする。

 大人になる事とはまた違った、心の在り方の問題なのかなぁ?


 赤竜おじさまは大きく頷いた。


「そう、心の在り方、お前がお前で在るという事の問題だ。普通の人間には許されない、竜の寵児だからこそ、そう在る事が出来る姿だ。竜の寵児が普通の人間と違う人生を歩むのにも、きちんと理由があるということだ。普通の人間は、嫌でも様々な辛い事を飲み込んで、歪みながらでも大人にならなければならないからね。いつかはゲルダも様々なことを飲み込む日が来るが、それはお前の在り方を変えずに飲み込む事になるだろう。今はまだ、それができる時期ではない。だからおいちゃんが元の姿に戻しておいたのさ」


 そっか、他の人と違う人生を辛いと思った日も多かったけど、あれは意味のある日々だったのか……

 でもそういう大事な事、創竜神様が教えてくれてもいいんじゃないかな?

 時には泣きたくなる日もあったと思うんだけど。


 赤竜おじさまがまた大きく笑った。


「はははは! だがそんな辛い日々だろうと、お前は寵児である事を辞めようとは思わなかっただろう? そんな魂こそが寵児の資格とも言えるものだ。その辛い日々の経験が、寵児の魂を育んでいく。とても重たく辛い運命を背負わされる寵児の心を鍛えるための日々だと思ってくれ。お前たち寵児が信仰心を捨てない限り、必ず創竜神様はお前たちに救いを与えて下さる。そこは信じて構わないよ――そろそろ、お前の心を読んで会話するのは止めておこうか。他のみんなが会話に付いてこれずに呆気に取れれているようだからね!」


 周りを見ると、みんなが私と赤竜おじさまを見つめてぽかーんとしていた。

 ……そうだよね。私が思った事に赤竜おじさまが返事をするだけだもん。話が見えないよね。


 私は事情を知らないフィルとフレドに向かって説明する。


「赤竜おじさまは竜種だから、私の心が読めるんだって。本当は四十メートルを超える竜なんだよ! 今の姿は、術式で人間の姿に見せてるだけなんだって!」


 私の言葉に、フィルとフレドが曖昧に頷いた。


 フレドが呆気に取られたまま赤竜おじさまに尋ねる。


「おっさんがただものじゃないのは見てわかったが、そうか、あんた本当は竜なのか。竜ってのはみんな、こんな芸当が出来るものなのか?」


「私は高位竜種、その中の上澄みだからね。そういった竜であれば、このぐらいの事は簡単にできるさ」


「赤竜おじさまは、創竜神様を除外して上から四番目の竜種なんだってさー。だから本当はとんでもなく偉い竜なんだよ?」


 ……なんだか、フィルとフレドの時間が止まった気がする。まぁあとで改めて説明しておこっと!


 私は赤竜おじさまを見上げて尋ねる。


「ともかく、後は悪魔崇拝者を倒して霊脈を回復させれば事件解決かな? 私はいつまでここに居る事になるのかなぁ?」


「まずは霊脈が回復してからかな。時期を見て創竜神様から宣託があるだろう。霊脈が回復するまで、一年くらいかな? 今、各地で他の竜や巫女が必死に修復に努めているからね。そのくらいで再び創竜神様の声がこの土地に届くようになるはずだ。それまでゲルダは、きちんと礼拝をおこなって悪魔の封印に努めて欲しい。奴が復活したら、とても厳しい戦いになるからね。決して復活させてはならないよ。今こちらに支援に向かわせられる余剰の戦力はない。お前たちだけで対応しなければならない事だからね」


「はーい!」


 私は元気一杯、右手で天を突いた。


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