059(臨床実験)
「先程、シモベや女中がフレーバ王妃を探しておったが何かあったのかの?」
「フレーバ王妃ならケントカーム国に亡命したよ」
「なんと! 冗談であろう?」
「それがマジなんだよ。じゃあな」
「待たれい」
「何?」
「月の精霊が憑いてるぞ」
「見えるのか。さっき、味方に付けたよ。これで、オールマンコに勝てる」
「月の精霊は夜に活発化すると聞いたことがある。決戦は夜じゃな」
「俺は夜に弱いんだよな〜。早寝遅起きのロングスリーパーだから」
「上級魔法使いの悪い癖だ。たまには夜の城下町を散策するのも良いものじゃぞ」
「そうか、今日は夜更かしするかな」
「その方が月の精霊も喜ぶだろう。日の精霊と仲良くすると月の精霊は嫉妬するから、気を付けるのじゃ」
「ああ、エルフ族から一通り聞いたよ」
「ところで、お主はどこへ行くのじゃ?」
「ティファ先生に会いに」
「話は聞いたぞ、ワシの自宅を破壊したために、薬草を花屋で買ったようじゃな」
「うっ……。悪かったよ」
「前にも言ったが、宮殿内で特殊魔法の実験をする大義名分が出来た。追い出されるまで、やりたい放題やらせてもらう」
「ジイサン、無茶するなよ。じゃあな」
「ああ、お主のために太陽を隠す魔法を開発してやる。楽しみに待っておれ」
魔導師セシルは宮殿内枠へ歩いて行った、千鳥足で。朝っぱらから酔ってるのか。
俺は左に曲がり、右に曲がり、50メートルほど歩き、ティファ先生の研究所のドアをノックする。
「開いてるわ〜」
俺はドアを開けて入る。ティファ先生は椅子に座ってコーヒーを飲んでいた。良い香りだ。
「よっ」
「あら、ソウ。どうしたの? また道に迷った?」
「いや、新しい魔法が使えるようになってさ。ちょっと寄ってみた」
「新しい魔法って何? 凄いの?」
「超爆裂魔法に月の精霊の力を混ぜた、ムーンレイだよ」
「恐ろしいわね。ほぼ封印魔法よ」
「使うとまずいかな?」
「超爆裂魔法は太陽フレアーの小型版だから。……月の精霊と言ったわね、太陽フレアーを使うと嫌われるわよ」
「厄介だな」
「そうそう、ソウの血で血清を作ってみたの。まずは魔導師セシルで臨床実験してみたけど。魔力、体力、頭脳が高くなった。しかし、本来のバランスは崩れたわ」




