057(撤退)
俺は、とりあえず、ゼニア姫の部屋に行く。
ジャックが部屋の前で、壁に寄りかかり立っていた。長い銀髪のキューティクルを確かめながら。
「よっ」
「ソウ、大変な事が起きてるようだな。ゼニア姫は泣きながら部屋に籠ってしまった」
「娘でも親の異変に気付かなかったか。今思えば、フレーバ王妃は挙動不審なところがあった」
「そうだな」
「よりによって、ケントカームに亡命するとは。俺の10億イースは盗られちゃったから、また魔法宝くじ買ってきた」
「当たるといいな。ラークバロン公国は更に劣勢に立たされるだろう。私も戦地に行くかもしれない」
「お〜い! ソウ、ジャック」
スコットが走って俺達の元へ来た。何だろう、急用かな?
「ハァ……ハァ……」
「スコット、どうした?」
「2人とも、よく聞いてくれ。ケントカーム国が休戦協定を結んできた」
「何!? 本当か?」
「前の特使の時みたいに騙されてるんじゃないの?」
「いや、違うよ。戦場最前線からケントカーム国の戦士が撤退したようだ」
「ジャック、命拾いしたな」
「私の魔法剣があれば楽勝だ」
「じゃあ、2人には伝えたから。ゼニア姫にも教えてあげて」
「ご苦労」
「ありがとね、スコット」
スコットは走って戻って行った。
「ジャック、テレパシーでゼニア姫に伝えな」
ジャックはこめかみに指を当てる。
数十秒経つ。終わったようだ――と思ったら、またジャックはこめかみに指を当てる。
「どうかした?」
「待ってくれ」
――ジャックのテレパシーがやっと終わったようだ。
「ゼニア姫はなんだって?」
「一応伝えたが、まだ泣いてるみたいだ。それより、テレパシーの割り込みがあった」
「誰から?」
「メンソ国王だ。ソウに面会人だよ」
「俺に? 誰だろう」
「とりあえず、ここは私に任せて玉座へ行ってくれ」
「分かった、行ってくる」
俺は玉座へ行くとメンソ国王と1人ひざまづいてる……エルフ族!? 遂に例の魔法か。
「ソウ、来たか。こちらはエルフ族のトリー殿だ」
「はじめまして。ソウ様」
「はじけまして。早かったね」
「空挺で来ましたから」
「ソウよ、オールマンコを倒す手筈のようだな」
「ああ、必ずオールマンコ、テオブロを倒してやるよ」
「宮殿外枠南側に魔法壁で囲まれた部屋が幾つかある。そこで鍛練をするといい。今、案内人を呼ぶ」




