32/181
032(卍)
俺はクラッチを蹴ると同時に一瞬、左にステアリングを切り、それから右にカウンターを当てる。アクセルを踏み込み、リアタイヤを滑らしながら、少女をドリフトで華麗に避けて通り過ぎる。
「……なんだ! 今のは!?」
「直ドリ、卍とも言う」
「腰が抜ける……恐ろしい技術だ、ハハハ」
俺達は郊外の住宅街を抜けて山道に入る。
「この先、道はどうなってるんだ?」
「ほぼ直線で舗装されてる道路に分かれ道はない」
「面白くなってきた」
俺はギアを4速に入れて加速する。
「今、何キロ出してる!?」
「260キロ!」
「空挺並みのスピードだな。怖い、ハハハ」
距離1キロメートル先に見覚えのある物が見えた。
「停まるぞ」
俺はヒールアンドトゥでフットブレーキとエンジンブレーキをかけながら減速する。リアが浮いて制動力が不安定だ。GTウィングでも着けてれば安定するのに。改善の余地ありだな。
タコメーターは8200回転までがレブリミッターだ。スカイラインと同じ。オーバーレブさせないように減速して、アレの近くまで行き、停まる。
アレとはショッキングピンクのレキサス…………中に人は居ない。乗り捨てられたか。




