030(宝くじ)
俺は非常口の人型マークの様にネットに張り付いている。
「こんな体勢で悪いんだけど、何分待てばいい?」
「奴らの魔力による。2〜3分だろう」
パッとネットが消えて俺は後ろにコケる。
「ケツを打った。いてえ」
「それより、槍が刺さったのよ? 回復魔法を」
「ゼニア姫、ソウに回復魔法は必要ありません」
「急激なヒーリング能力があるからね。俺は大丈夫だ。とりあえず、塔に戻ろう」
俺は傷口をゼニア姫に見せる。
「アーマーに穴が空いてるのに傷がない!? どうなってるの!?」
「神様に愛されればオーケー」
「意味が解らないわ」
「ゼニア姫、急ぎましょう」
俺達は徒歩で塔に帰る。塔は見えてるのになかなか近付かない。それだけ巨大ってことだ。途中、道路の反対側に宝くじ売り場があった。
「ちょっといい? やってきたい」
「ダメよ、当たりっこない」
「5口だけ。な、いいだろ?」
「仕方ないわね〜」
「一口いくら?」
「色々種類はあるが、スタンダードなヤツで一口300イースだよ」
「ジャック。1500イース貸して」
「他人のカネで宝くじとは…………」
「倍にして返すからさ」
ジャックは財布から札1枚と硬貨1個を取り出して、俺に渡してくれた。
「全く御しがたい男だな。こんな時に」
「褒めるなよ、アハハ。王子様はちゃんと助けるからさ」
「褒めてない! 10倍にして返せよ」
俺は道路を横断して宝くじ売り場に行く。前世とそう変わらない窓口だ。
「いらっしゃいませ〜」
「スタンダードなヤツを5口くれ」
「はい、ありがとうございます……えーと、1500イースになります」
俺ははしたガネを支払う。
「いつ当たりか判るの?」
「今すぐですよ」
ピー……カタン。ピー……カタン――――。ビー! ビー! ビー!
「当たった!?」
「あっ、はい! おおおっ、おめでとうございます! 1等の10億イースですよ! ヒャー!」
「マジか!? …………イェスッ! イェスッ! そいつぁ〜スゲーや!」
俺は渾身のガッツポーズをする。嬉しすぎるぜ! 神様ありがとう! 前世では良くて4等だったのに。
「口座に振り込みますか?」
「俺は異国出身でね。まだ口座を持ってないんだ」
「正規兵の身なりですが、異国出身なんですか?」
「特例でゼニア姫の近衛兵をやってるんだ」
「そうですか。宝くじ売り場でも口座を作れますよ。魔法癖を登録すれば出来ます」
「おっ! 早速頼む」
「では、このパネルに片方の手のひらを置いて下さい」
店員がタブレットみたいなパネルを差し出す。手が震えている……お互いに。
俺は右手をパネルに置く。
「これでいい?」
ピッ!
「登録完了です」




