013(天上人)
俺とジャックはポンコツ車で郊外の邸宅に向かう。E395番地だそうだ。時速30キロメートルで走って20分くらいだな。
すると、珍しく対向車が来た。黒塗りのハイヤーだ。
『天上人の車……紋章からしてアン様だな』
『お偉いさん?』
『ラークバロン公国の礎を築いた、お歴々だよ』
『メンソ国王より偉い?』
『政治の権限は国王だが、それを監視するのが天上人の役目。アン様はもう500歳は超えてるだろうな』
『スゲー! 大往生だな』
『まだ死んでないよ、ハハハ』
すれ違う時にパッ、パッ。とクラクションを鳴らされる。俺はキッカー250を左端に停めて、ハザードランプを点ける。ハイヤーも停まった。
『タイヤがパンクでもしたかな? 行ってみよう』
『ソウ、天上人にはちゃんとお辞儀をしろよ』
『分かった』
ジャックは助手席から降りて、ハイヤーの後部座席の前でしゃがみ、たち膝を突く。
俺も真似をする。
ハイヤーの後部座席のウインドウが開き、品の良い老婆が顔を出した。
『これ、お前達。魔法車を操れるということは魔法使いか?』
『はっ、はい!』
『面を上げなさい。堅苦しいのは嫌いよ』
『そいつぁ良かった。魔導師セシルって人を探してる』
『バカ! ソウ! 天上人にタメ口なんて』
『いいのよ、いいのよ。よく見たら、ジャック・ストライフじゃないの。ラークバロン公国一の魔法剣士。魔導師セシルはまた何かやらかしたのかしら?』
『いえ、そういう訳では。……それで、御用は何でしょう?』
『テオブロが魔王となり、異人種迫害をしようとしてると聞いた。どうやら、名もなき兵士にとどめを刺されたようね』
『それ、俺です』
『凄い。私の出番はなかったわね。それなら、メンソとフレーバ、シガーに謁見して帰るわ。ありがとう。テオブロはラークバロン公国の恥。下がってよいぞ』
『はいよ』
『はっ!』
ハイヤーはウインドウを閉めて走り出した。
『天上人って凄いオーラだね』
『天上人は100歳以上で強力な魔力を持つ者だ』
『俺でもなれるかな?』
『戦士は長生き出来ないだろう』
『そんな不吉なことを言うなよ、アハハ。先を急ごう』
『ああ』
俺達はキッカー250に乗り、発進する。
『ソウは凄いな、天上人にも物怖じしない。それとこんな燃費の悪い魔法車を長時間も運転出来る魔力』
『運転代わる?』
『私の魔力では距離2キロメートルでヘトヘトになりそう』




