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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第12巻 陰陽の狭間を駆け抜けて

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侵攻Ⅱ

 ゆっくりと、しかし、確実に自分の中の魔力量が増えていることに気付いた桜は、急いで自身の服の下に入れていた物を取り出す。それはペンダントだった。中央にはピンクに輝く鉱石が輝いている。


「綺麗な宝石ですね。しかも、これは……桃色の金剛石では?」


 金剛石。別名をダイヤモンド。炭素からなる天然で最も硬度が高く、一般的には無色透明な美しい鉱物として知られている。ただし、桜が持っているのはより希少性の高いピンクダイヤモンド。ファンメル王国の学園地下にあるダンジョンをクリアした時に得た報酬であったが、帰国する際に注文していたカットが終わっていたのだ。職人が熟練の腕であったこともそうだが、知識とセンスもあったからだろう。桜の名前に合う様にと、中央に桜の花が一輪咲いているように見える

 ただ、魔法学園のダンジョンのクリア報酬というのは希少価値が高く、またそれを狙う輩もいないとは限らない。事実、一度裏路地でそれ目当てのゴロツキと出会ったこともある。その為、身に着けながらも見えない所にしまっていた。


「はい。ちょっと運良く手に入れまして……」


 そう言いながら指で宝石部分に直接触れた瞬間、魔力が一気に流れて来た。言葉に言い表せない感覚に思わず言葉を失ってしまう。魔力を誰かに流してもらった時の感覚に似ており、ビクンッと体が跳ね上がる。


「さ、桜さん!? だ、大丈夫ですか?」

「は、はい。問題ないです」


 そういえば、と桜は思い出す。

 鉱石などには魔力を溜め込む性質がある。特に指輪やペンダントなど肌身離さず身に着けていると、漏れ出た余剰の魔力を蓄積する。金が余っている魔法使いは魔力が切れた時の為に、緊急用として扱うための鉱石をいくつも購入するのだ、と伯爵令嬢であるマリーから聞いていた。


「(こんなに溜め込めるほどの宝石だったなんて。でも、ダンジョンのクリア報酬だから、それくらいのことがあってもおかしくないのかも……)」


 そんな魔力を溜め込んでおけるほどの高品質な鉱石は数が少ない。魔法使いが求める品質は勇輝の世界における品質基準に置き換えると、最高品質クラスでなければならないほどだ。桜が見たことがある唯一の例がドラゴンの吐く炎の魔力を蓄えたルビーだったことを考えると、自分が得た鉱石が類似した能力を持っていると思いつかなかったのは、仕方のないことかもしれない。


「これなら……時間さえかければ魔力の過剰投入で行けるかもしれません」


 単一の魔法にありったけの魔力を投入して威力を底上げする。基本的にはどのような魔法でも使えることは確かなのだが、込める魔力が増えるほどコントロールが難しくなる諸刃の剣だ。その難易度は込めた魔力に比例し、際限がない。故にある一定のラインを超えると、魔力による水流操作などの高難易度技術すらも超える精密操作が要求される。


「時間ですか……どれくらい稼げばよいですか?」

「最低でも十分以上。可能ならば、敵の位置も固定してほしいです。威力だけ上げると撃つ方向を変えるだけでも負担がかかるので」

「わかりました。少しあちらの方と話をしてきますので、桜さんはここで準備をしていてください。もし隆三様たちから連絡があったら、今のことも伝えていただいてよいですか?」


 頷いた桜を確認して、巴は足早に指示を出している武士たちの下へと歩み寄っていった。恐らくは、大鬼の動きを止めて桜が狙撃できる作戦の提案をしに行ったのだろう。篝火に照らされていた武士の目が遠目でもわかるほど大きく見開かれていたのが桜からも見えた。直後、その武士の顔が桜の方へと向けられる。

 一言、二言。或いはもっと話をしていたかもしれない。武士は周りの何人かを呼び寄せ、顔を寄せ合って相談を始める。その正面で巴は腕を組んで結論が出るのを待っているようだった。

 数分すると元いた武士以外はどこかへと去っていき、巴も桜の下へと帰ってくる。その表情は何とも言えない、といった顔だ。

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