連戦Ⅶ
小鬼たちは酒を木でできた杯で満たし、飲み干す。酒の肴には捕えてきた家畜の肉を無造作に抉り取った物を。次は自分の番かと怯える女子供を前にしていると思うと心が躍る。
ここの小鬼たちは本来は保管しておくべき食料をつまみ食いしながら高らかに嗤う。後で大鬼に怒られるかもしれないが、この程度ならば許容範囲であることは小鬼たちも理解していた。何せ、今まで食べていたのは山の中に住む獣ばかり。運が良ければ護衛がほとんどいない行商人を襲って手に入れることもあったが、今日は初めて村を襲って今までにない量の食料を手に入れたのだ。少しばかり量が減ってもすぐに補填できる。それにやることと言えば、攫ってきた人間が逃げないかどうかを見張るだけだ。外から警告の音が聞こえてきたような気がするが、それは他の奴に任せておけばいい。
「ソロソロ、コレにもアキタ。一人くらいタベタイ」
「ダメ。サスガニ、ダメ。怒られるジャ、スマナイ」
四体の内の一体が鉄格子の檻の中にいる村人たちへと目を向ける。既に目を覚ましている村人は互いに体を寄せ合い、顔が恐怖の色に染まって、目が見開かれていた。悲鳴を上げなかったのは、小鬼たちを刺激して自分が第一の犠牲者になりたくなかったからだろうか。
しかし、それを聞いていた隣の小鬼が頭を叩いて止めた。ここで止めなかったら、自分も責任を取らされることを理解していたからだろう。
「初のエモノ。首領ノはんだん。タベル、ナブル、オカス、分けるまでガマン」
「ウゥ……ガマン……ガマン……」
見るからに落ち込む小鬼。今までに見たことがない豪華な食事を前に手を付けるなというのは、人間だろうが鬼だろうが感じることは同じでだ。あまりにもショックだったのか肩を落として項垂れ、目の前の息絶えた馬を悲し気に見つめる。そんな彼の目の前に直径十センチほどの球体が転がって来た。
「コレ、何ダ?」
他の小鬼たちは気付いていない様子だ。不思議に思いながら手に取ろうと手を伸ばした時だった。球体が破裂するとともに、真っ白な煙が噴き出した。
「――――ごばっ!?」
一気に噴き出した風圧で小鬼は思わず仰け反ってしまう。そんな中で風切り音と、仲間の呻く声がどこからともなく聞こえて来た。
「おい、何ダヨ? 誰のイタズラだ!?」
慌てて上半身を起こして抗議の声を挙げるが、返ってくる声はない。何か生暖かい液体が顔にかかって、ようやく自分たちが敵襲にあっていることに気付いた。慌てて這って逃げようとするが、視界は悪く、武器は近くにはない。できることは壁際まで進んで、武器が置いてあるだろう場所にまで行くことだ。
「――――遅い」
「ガッ……!?」
しかし、それは叶うことはなく。背中を大きく斬られたことで地面へと倒れ伏す。痛い、という感覚と共に熱い感覚が背中に広がっていくのがわかった。
「あ、アァ……」
悲鳴を上げることすらできず、漠然と心の中に死ぬ恐怖が満ちていく。そんな彼の耳に上から声が響いた。
「悪い。一撃で仕留めてやれなかった。今、楽にしてやる」
その言葉と共に、自分の視界が何度も転がっていく光景が見えた。もはや、自分に生きる道は残されていないことを悟りながら、意識は闇の中へと沈んでいく。
絶望を抱いた表情を浮かべた小鬼の首を見ることなく、勇輝は辺りを見回した。突入すると共に確認できたのは、中央の四体と道を抜けきった穴の両側にいた二体。後者は正司がい言っていた「見えない奴」だろう。
彼の耳による探査は正確だったらしく、他に小鬼の姿は魔眼で確認できない。動いているのは正司と勇輝、そして檻の中に閉じ込められている村人らしき人影くらいだった。
どこかに地上へと通じる隙間があるのだろう。思ったよりも早く煙が僅かな風に吹かれて勇輝たちが来た道へと流れていく。魔眼を閉じて煙が薄まっていくのを確認して、ゆっくりと檻の方へと勇輝は足を進めた。
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