連戦Ⅵ
しばらく走り続けると、真っ直ぐ進む道に対して、真横に空いた穴が目に入った。それを視認した瞬間、二人同時に歩みが遅くなる。
「大抵、こういう場合の横穴は居住用か倉庫かはわからんが、部屋や広間みたいな場所があるのが定番だ。縁を見ろ。明らかに洞窟の壁とは違って掘った後がある」
「鬼たちが自らの手で作ったということですね。それに光苔とは違う光が漏れているようにも見えます」
光苔よりも明らかに強い光。それが漏れ出ていた。しかし、その光の中に小鬼どころか一瞬でも遮る影すら現れない。誰もいないのか、それとも、その後ろに何かが控えているだけで見えないだけなのか。二人の心の中に不安が生まれる。
「とりあえず、音を立てないようにして近づくぞ。さっきの角笛のせいで、こっちの存在がバレているk脳性が高い。ここまで聞こえていないかもしれんが、それでも危険なことには変わりない」
抜き足、差し足、忍び足。壁に背中を這わせるようにして進み、ゆっくりと正司は横道を覗き込んだ。数秒間、そのまま動かずにいたかと思うと不意に顔を戻す。
「勇輝、お前も覗いてみろ」
「大丈夫ですか?」
「あぁ、今なら見ても問題はない」
前後から誰かが近付いて来ていないか警戒していた勇輝は、正司と場所を入れ替わる。正司と同じようにしてゆっくりと覗き込んだ。中から溢れてきていた光は、ギルドなどでも見かけた魔法石のようで、意匠などを施したシャンデリアにつられるでもなく、篝火のように木の棒に固定されるでもなく、ただの木の箱の上に雑に置かれていた。
穴の先は部屋になっていて、ここからではすべてを見渡すことはできないが、木の箱や並べられた武器、無造作に転がされた樽などを見るに倉庫か武器庫といった所だろう。
「(倉庫番が見張りをサボって酒盛りしているようにも見えるな)」
勇輝は更に顔を出そうとすると、襟首を正司が掴んで引き止める。
「おっと、それ以上出すとバレるかもしれんぞ。慎重にな。それで小鬼どもが見えたか?」
正司の質問に、勇輝が首だけ縦に振って応えると、更に質問が飛んでくる。
「その奥が見えるか? はっきりとは見えないが、左の方に鉄格子の中に入った女の足が見えるはずだ。まったく、どこからあんな頑丈そうなものを持って来たんだか……」
ドキリとして、勇輝は正司の言ったように奥の左側を見る。すると、確かに鉄格子のような細く、黒いものが三、四本くらいまで縦に走っているのが見えた。その隙間からは、細い脚の先――――足首まで見えるかどうか――――が覗いていた。
怪我をしているのか、或いは既に息絶えているのか。その足が動く様子は一向にない。
「中の小鬼は中央に四体。後、ここからじゃ見えないが二体くらいどこかにいやがる」
「すごいですね。どうしてわかるんですか?」
勇輝が顔を引っ込めて正司に尋ねると、少し誇らしげな顔をして、人差し指で自分の耳を指し示す。音の反響や声の数。或いは声の特徴を聞き分けていると推測できるが、どれであろうとも普通の人間にはできない芸当だ。
「こういう潜入任務は耳も大事だからな。さて、ここから突入して、あいつらをぶっ飛ばして、助け出す。さっきのお前の素早さなら、そこまで苦労はしないだろう。ところで――――」
一瞬、言葉を溜めた後、正司は懐に手を伸ばし、何かを取り出した。
「光がなくても色々と見えるって話は聞いたが、こいつでも同じか?」
「試したことはないですが……、多分、行けるかと」
「よし、じゃあ俺の合図で突入だ。心の準備をしておけ。見えない位置にいる奴は俺がやる。今、見えてる奴は頼んだぞ」
そう言うや否や、一度後ろに下がった正司は助走をつけると、横穴がある壁の上の部分を通る様にして壁走りで反対側へと移動する。
懐から取り出したソレを少し弄った後、薬指、中指、人差し指を立てて、三を示す。すぐに薬指が折れて、二に。そして、人差し指のみになった――――。
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