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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第12巻 陰陽の狭間を駆け抜けて

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連戦Ⅴ

「おいおい……いくら何でも、一人で捌ききるか、普通。お館様みたいにデタラメな動きしやがって」


 正司がぼそりと呟く。流石に小鬼とはいえ、十体を同時に相手をして、十秒と経たずに絶命させるとは想定外だったのだろう。

 そんな驚愕の視線を受けながら、勇輝は高い音を口から鳴らす。深呼吸とはまた違う呼吸で息を整えていた。その瞳の先には奥へと続く洞窟しか見えず、こちらに向かってくる鬼たちは見受けられない。


「……まだ、動きが鈍いな」


 誰に言うでもなく、血振りをしながら勇輝は呟いた。洞窟の中では足を滑らせやすい。それを差し引いても、自分の中のイメージと実際の動きの間にズレがあることを理解していた。足の裏を地に着けること一つとっても、どれだけ重心が傾いているかであらゆる動きが変化し、ズレた分だけ動きが遅くなる。そういう意味では、勇輝としては及第点には達していたが、満足には程遠いといったところか。


「見事だった。今の身のこなし、もしや西園寺の関係者だったりするのか?」

「え……? いや、四方位貴族の人に知り合いはほとんどいないですが……」

「む、そうか。それは失礼」


 急に武士から声を掛けられて戸惑う勇輝。そもそも、四方位貴族どころか日ノ本国の知識すら危ういのだ。聞かれても困るというのが本音だろう。

 心の中で「もう少し日ノ本国のことをどこかで学んでおかないと恥をかきそうだ」と思いながら、勇輝は正司と共に歩き始める。


「俺はあまり詳しくないのですが、西園寺家と何か似通っているところでもありました?」

「技の東雲、早さの西園寺、力の南条、守りの北御門ってな。まぁ、例外はあるが、基本的に昔からそういうことが言われているのだ。此度と言い、先程と言い、目を見張るほどの素早さだった。このような状態でなければ、我らの主人に紹介したいと考えていたところだ」

「そうですか。ありがたいですが、やりたいことが山積みなので、勘弁していただけると助かります」


 そう言われてしまっては何も言うことはできない。残念そうな表情を浮かべた男だったが、不意にその表情が固まった。


「上かっ!?」


 そう叫ぶと同時に刀を振り上げる。鈍い音と共に、黒い影が幾つか地面へと転がった。一つは棍棒、もう一つは小鬼だった。


「ちっ、あいつら体が小さいからって、あんな所の隙間から出てきやがる。面倒な。前からも来たら挟まれるぞ」


 正司の指差す先には、高さ四メートルを超える場所の壁の隙間から、小鬼が何体も飛び降りてこようとしていた。隆三がいればただの的であったが、今はいない。故に勇輝は仕方なく右手の人差し指を向けた。


「下がってください」


 全員が退いたことを確認すると、ガンドを数発、その隙間へと叩き込む。倒すだけならそれほどまで魔力を込めなくて十分だが、勇輝はそれ以上の魔力を指へと流し込み炸裂させた。

 狙いは小鬼の命ではなく、その奥にある壁と天井を破壊して塞ぐこと。少しばかり、洞窟の崩落の危険性や穴が拡がらないかが心配だったが、この大きさの通路ならば早々に全てが埋まることもないし、隙間の奥へと叩き込んだので、そのようなことはないだろうと見ていた。

 ガンドの衝撃で壁に張り付いていた小鬼たちが無様に地面へと激突する。中には打ち所が悪かったのか、そのまま立ち上がれずに倒れ伏したままの個体もいた。土煙が上がる隙間は運よく閉じたらしく、声こそ聞こえるが、小鬼が出てくる様子はない。


「ここは我々に任して先に行ってくれ。すぐに追いつく」

「頼んだぞ」


 手負いの小鬼が六体。即座に正司は武士二人が後れを取ることはないと判断したらしく、すぐに頷いた。踵を返し、勇輝と共に洞窟の奥へと駆けていく。そんな彼らの背中に、二人の鋭い声と刀が風を切る音が響いてきた。

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