連戦Ⅰ
洞窟は進んでみると分かれ道がほとんどない単純な構造だった。所々に横穴があり、どうやったかはわからないが木の扉や木の格子の牢屋が存在していた。
「小鬼は意外と器用でな。まるで人間が作ったかのように、こうして似た物を作っちまう。ゴブリンとやらも恐ろしいが、俺は小鬼の方が脅威だと思うな。こんな器用に物が作れるんなら、もっと危ない物を作っててもおかしくない」
正司がかったるそうに牢の中から出て来た。中には何の手がかりもなし。死後どれくらい経ったかわからない白骨死体が数体見つかっただけだ。
ここに至るまでに見つけた小部屋は四つ。その内、二つが小鬼の部屋で残りが牢屋。いずれにも見張りや休憩で小鬼が数体いたが、速攻で息の根を止めることに成功していた。正司と勇輝が一気に突撃し、隆三が弓で援護する。大勢で囲まれなければ、数体の小鬼程度は急襲と同時に絶命させることが三人でも可能だった。
「お主ら……肝が据わっとるというか、勢いがあるというか。どこか名のある家の出か?」
「俺とそこのはこういうことに慣れた家だが、そこの兄ちゃんは一応、素人……なのか? いや、よくわからん。あんたらは俺たちが失敗した時の命綱だ。今は体力を温存しておいてくれ」
隆三は残りの矢の本数を確かめながら、小鬼の頭蓋から矢を引き抜く。すぐに補給できない場所である以上、無駄遣いはできない。破損がないことを見た上で、そのまま右手の指に挟んで周囲を確認する。
想定していたよりも警備が薄く、また洞窟自体は曲がりくねっているので見つかりにくい。このまま行けば、比較的楽に奥まで辿り着くことができるだろうと隆三は告げる。
「しかし、一向に村人の姿が見えぬ。もっと奥の方なのか。それとも、見落としていた道でもあったか?」
「いや、それはないだろう。単純にこの洞窟が深いだけだ。あまり深く考えていると頭も腕も鈍るぞ」
武士二人が話しているのを聞きながら、勇輝もまた洞窟を見回す。
「紛れもなく一本道だったのに……何かを見落としてる気がするんだよな」
『うーん。でも一本道なら手前から小鬼を倒していけば、挟まれることもなくて安心だよね。気にせず進んじゃっていいんじゃない? もし全部倒し切って、行き止まりだったら考え直さなきゃいけないと思うんだけど』
チビ桜がポケットから勇輝を見上げて瞬きする。桜の言う通り、ここで挟撃を受ける可能性は低い。万が一、別の鬼が戻って来ても、その時には一人入口で残った武士がここまで走ってくるはずだ。他の二人曰く、「あいつが三人の中では一番強い」らしく、あの通路であるならば小鬼をまとめて相手取れるとか。
「さて、次だ。ここまでで倒したのは二十体程度。この三倍以上がこの洞窟に残っている。あまりもたもたしてると見つかっちまうぞ」
隆三の言葉に駆り立てられるようにして、勇輝と正司は足音を殺して通路を進む。足の感触が頭の中で増幅され、足音の幻聴を作り出す。今の音は大丈夫だったか、と不安になりながらも、歩みを緩めずに先に向かった。
やがて直角の曲がり角が見えて来る。しかも左右に分かれている丁字路だ。ここに来て初めての分かれ道となる。残り十メートルという所まで来て勇輝は振り返った。目が合った隆三は、まず敵がいないか確認しろとでも言っているかのように、指で進行方向を差した。まず向かって左、次に右だ。
勇輝は頷いて一歩踏み出した時、不意に正面の壁が明るくなった。それは光苔のものではない、揺れるような灯りの中にぬらり、と影が浮かび上がる。
「くっ、まずい何体か来るぞ!」
正司の足が僅かに止まった。影と光は右側から来ている。何体いるかもわからなければ、左側に何がいるかもわからない。このまま待つべきか、それとも速攻で片を付けるために前に出るか。任務を数多くこなしてきた正司でさえも、勇輝に指示が咄嗟に出せなかった。
【読者の皆様へのお願い】
・この作品が少しでも面白いと思った。
・続きが気になる!
・気に入った
以上のような感想をもっていただけたら、
後書きの下側にある〔☆☆☆☆☆〕を押して、評価をしていただけると作者が喜びます。
また、ブックマークの登録をしていただけると、次回からは既読部分に自動的に栞が挿入されて読み進めやすくなります。
今後とも、本作品をよろしくお願いいたします。




