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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第12巻 陰陽の狭間を駆け抜けて

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奇襲Ⅶ

 ガンドによる攻撃は爆発とまでは言わないが、それなりに大きな音を発してしまった。聞いている小鬼がいないとも限らない。ここはできるだけ早く中の様子を確かめていきたいところだ。


「俺が先に行く。やばそうだったら合図するから、みんなは隆三さんを待っててくれ」

「一人では危険だ。ついて行こう」


 正司と武士一名が即座に入口へと駆けていく。今立っている場所ほどではないが、そこもかなりの大きな穴に見える。ここが巨人の口ならば、さしずめ今向かって行った入り口は喉といったところだろうか。

 二人が入口の両側に張り付いて、恐る恐る中を見る。しばらくの沈黙の後、心なしかほっとしたような表情を正司が浮かべた。どうやら、今の騒ぎに気付いた小鬼はいないようだ。


「何だ。何かあったのか?」

「中から小鬼が一体出て来たんだよ。あそこにいた小鬼をこっちに持って来た私のミス。あそこで仕留めてれば、すぐに対応できた。ほんっと情けない」

「反省も後悔も後回しだ。バレてるのかバレてないのかは、中に入って見ないとわからないが、先に進まなければわからん。いくぞ」


 隆三は新しく矢を右手の指に一本挟み、前へと駆けていく。それを追うように勇輝たちも静かに走っていく。


「中は?」

「静かなもんです。ほとんどの鬼が中で酒でも飲んでるのかと」

「それなら幸運だ。酒を飲んでる内は女は襲われん。逆に言えば、襲われ始めたら最後、止まらないってことだ。あいつらは一度ハマったら飽きるまで同じことを続けるからな」


 反吐が出る、と吐き捨てて隆三は中を覗き込む。勇輝もその脇から顔を出すようにして観察した。

 中の空洞は広く、ここにも光苔は自生していた。広さも十分あり、壁の様子などを見ると、元々の洞窟を更に何かで削り取った後が幾つも残っている。その為、光苔のついていない所も複数あり、明るさは十分とも不十分とも言えない微妙なものであった。


「暗いな……」

「正司さん、俺と前をお願いできますか。暗闇は俺にはあまり関係ないので。それに何かあった時に先程決めた二人組の方が動きやすいでしょうし」

「……じゃあ、正司と勇輝が先頭。次があんたら二人で、殿が小娘と俺だ」


 すぐに隆三が指示を出して隊列を組む。

 勇輝が洞窟の中に足を踏み入れようとすると、中から生暖かい風が吹いてきた。洞窟の中は外の気温と違い一定に保たれやすい。夏は涼しく、冬は暖かい。秋から冬へと移るこの季節、その感覚は別段不思議な現象ではないのだが、鬼が中にいると聞いたせいで途端に不気味に思えてくる。

 緊張か、はたまた別の何かのせいか、勇輝の肌に電気が走るような感覚があった。


『勇輝さん。気を付けてね』


 アリスと一緒にいたチビ桜が、勇輝の肩へと乗ると頬辺りを軽く撫でる。小さな掌だというのに、なぜか先程の風よりも心地よい温かさが顔全体に広がった。


「あぁ、そっちも気を付けて。何かあったらすぐに駆け付けるから」

『そうならないことを祈ってるけど、その時には駆け付ける前に私たちで何とかしてみせるつもり。勇輝さんたちだけに、任せてばかりはいられないもの』


 拳をぐっと握るチビ桜。その姿に隆三は口の端を持ち上げる。


「頼もしい嬢ちゃんだ。これなら、ここに連れて来ても大丈夫だったかもな。まぁ、何かあったら俺たちが迷惑するかもとか考えず、まず連絡を頼むぞ。戦いにおいて一番大事なのは情報だ。敵を知り、己を知れば百戦危うからず、ってな」


 チビ桜の言葉に、みんな覚悟を決めたのか。強張っていた表情が和らいでいた。ここから先は敵の本拠地。援軍はなく、時間との勝負。

 勇輝が腕時計に目を落とすと、時刻は十七時を回っていた。この時期のことならば概算で、日の出までは十二時間強。鬼の気分次第では早まる可能性も否定はできないが、それが人質救出のタイムリミットだ。


「覚悟はできたか? いくぞ……!」


 正司の最終確認の声と共に、勇輝たちは鬼の潜む洞窟の内部へと足を踏み入れた。

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