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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第12巻 陰陽の狭間を駆け抜けて

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奇襲Ⅴ

 一方、鬼たちの方はというと、これから攻撃を受けるなどということは露知らず、呑気に話をしていた。一体は手に持った松明を左右に揺らしながら、茂みを照らして異常がないか見回している。彼ら小鬼にとって数は武器だが、一体一体の強さは狼にも劣るくらいだからだ。

 もちろん、火をつけて巡回していれば多くの動物が襲って来れないことを鬼たちも知っていた。それでも襲ってくる野生動物や面倒な魔物もいるので見張っているのだが、その小鬼は先ほどから若干、いらいらしている気持ちを抑えきれないでいるようだ。

 その理由は自分の後ろにいる小鬼が原因だった。松明ではなく小さな魔法石が着いた木の棒で、自らと同じように辺りを照らしながら見張っているように見えるが、その小鬼の口調は勇輝たちが聞いていたとしても明らかに嬉しさを抑えきれない様子であった。


「オレ、あと少しで交代。肉、いっぱい食べる」

「ズルい。オレも行きたい」

「ダメ。親方の決まりは、絶対。あきらめロ」


 ゴブリンたちと違い、小鬼の方が知性がある。言葉も人に近く、指揮系統は強い者の命令に従う。その点においてはゴブリンよりも面倒であった。

 ただゴブリンというのは通常、棍棒を持って戦うしか能力がない数の多さだけが驚異の魔物。しかし、種類自体はどの魔物よりも多く、勇輝たちが出会ったことがあるゴブリンキングは透明なマントで姿を消すし、魔法を扱うことができる者もいる。一般大衆の間では魔力の高い女の胎から生まれたゴブリンが、そのような力を宿すなどとも言われているほどだ。

 対して、鬼というのは力こそが全て。魔法を扱う者もいないわけではないが、多くの者が腕力こそ至高とし、大鬼に至っては敵の攻撃を受けて耐えることにすら喜びを見出す。その皮膚は厚く、小鬼とは比べものにならない。猪突猛進と言えばそれまでなのだが、猪と違い大きすぎる体格と力は、人間にとっては脅威以外の何物でもない。それ故に、誰もが恐ろしさを抱くのだ。

 大鬼は依頼で言うならば甲級。即ちAランクの難易度だ。単独で勝てる人間もいるのだろうが、逆に言えば殺される可能性もかなり高いと絶望してしまう程度には危険な相手と言える。

 そんな勇輝たちも抱いている緊張感とは正反対の声が小鬼の口から再び聞こえて来た。


「明日、アサ。女を楽しめる。久しぶり、今はガマン」

「悔しい。カオも見たくない」


 小鬼の一人がプイッと顔を背けた。感情もゴブリンよりは多く、かといって赤鬼だからと言って怒りやすいというわけでもない。あくまで種族としての傾向であり、個々の性格は少なからずも多彩であった。

 そんな下らない会話をしていた矢先、先に進もうとしていた小鬼の後頭部に生暖かいものがかかり、肩を竦ませる。


「ナンダ!? そんな怒るなっ!!」


 先程まで話していた相手が逆上して何かしてきたと勘違いしたのだろう。両手で肩や頭についた液体を慌てて払いながら、小鬼は振り返った。


「――――ハ?」


 彼の目に飛び込んで来たのは、自分が先程まで話していた仲間の顔の半分が吹き飛んで崩れ落ちていく姿。遅れて、視界に入ったのは自分のいる反対側に人らしき姿が恐ろしい速度で突っ込んでくるところだった。

 まだ、そちら側の仲間は気付いていないらしく、愚かにも地面に座って笑ってすらいた。


「て――――」


 何とかして敵だと叫ぼうとしたが、その声が仲間に届くことはなかった。声が出る前にその首に矢が突き刺さり、貫通する。そして、そのあまりの威力に首の半分ほどが吹き飛んだ。焼けるような痛みの中、自分が目の前の仲間と同じように攻撃されたことに気付く。

 だが、それも一瞬のこと。流れ出す血液が皮膚を温かく染め上げるのに比例して、彼の意識は闇の中へと落ちて行った。

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