奇襲Ⅰ
オレンジ色の陽の光が木々の合間を駆け抜け、美しいカーテンを作り出していた。風が葉を揺らし、擦れる音を奏でる。そんな山道を隆三・正司・勇輝の三人と村にいた大名の配下の武士三名が登っていた。
「聞くところによると、そちらの少年はここに来たことがないという。本当にあの少女の足跡を追えるのか?」
「えぇ、俺にしか見えない道しるべを置いていってくれてるので迷わなくて済みます。不安感を抱かせてしまうのも仕方ありません」
「いや、感心しているのだ。何せ村を出た時から鬼が逃げた方向の詳細を言わずとも、正しい方向に進んでいた。特にこの辺りの山は昔から鬼が出るということで大人も避けるほどだ。ここに入るのは我々のような魔物を狩る責務がある者くらいだろう。それ故に、何となくわかるのだ。この道が正しいかどうか」
勇輝が鬼の奇襲部隊に参加するのは避けられないことだった。ギルド前で参加を決めた時のことを思い出す。
「俺は――――鬼のいる山へと向かいます。だって、アリスは俺に追って来られるように道しるべと伝言を残していったんでしょう。桜を守る為に一緒に居たい気持ちはありますが、俺が行かなくてどうするんですか?」
「それで……いいのか?」
「はい。それに鬼を倒せば結局はここが安全になるんです。桜の安全も確保できるでしょう?」
隆三の念を押す言葉に即座に勇輝は即答した。ここで勇輝が行かなければ、鬼の拠点を探すだけで時間がかなりかかるだろう。そのような時間は攫われた人たちには残されていない。
アリスがその場での殲滅ではなく、あえて追うことを選んだのも敵に攫われた人を確実に救い出すためだと考えれば、時間は無駄にできない。
「――――って、俺が勝手に決めちゃったんだけど、桜は何か考えが合ったりする?」
「……ううん。勇輝さんの言いたいことはわかる。それにここにいた方が私に出来ることもあるみたいだし」
そう言って桜は周りを見回した。桜には得意な土魔法がある。魔力ポーションを使って時間を掛けさえすれば、重要な拠点に強固な防壁を築くことは可能だ。広範囲を守るのではなく、限られた敷地を守り通すのならば、村にいる戦力を掻き集めれば難しくはない。
「でも何も言わずに行くのを決めちゃったのには、少し不満かなぁ」
「う、それは……いえ、何でもないです」
勇輝の本来の役目は桜の護衛だ。その護衛が護衛対象を放っておいて出撃するなどあってはならない。その点に関しては勇輝も気付いていたが、何も言わなかったのは事実なので言い訳のしようがなかった。
そんな様子を見て、ギルド職員が勇輝の前に進み出る。
「力を貸してくださりありがとうございます。我々の誇りにかけて、彼女たちの身の安全は全力で守る所存です。……この有様にしてしまった者の言葉では重みに欠けるかもしれませんが」
「いえ、今はその言葉だけで十分です。それよりも攫われた方々の身が心配です。隆三さん、この後の指揮は任せてもよろしいですか?」
「あぁ、任せとけ。とりあえず――――」
それから二時間が経過し、勇輝は地面に残った赤・緑・白の三色が混じった光を追っている。どうやら足跡とリンクする様にして光が発生しているようだった。
「(魔力なら霧散してしまうし、一体何が見えてるんだ?)」
だが、勇輝にしっかり見えていることを考えると、アリスは勇輝の魔眼についての理解があるということに確信がもてた。
「それで、そっちの方は何事もない?」
『うん。こっちは問題なしだよ』
勇輝が呟くと胸元から桜の声が返ってくる。勇輝のコートの右ポケットには小さな桜が納まっていた。せめて、何かあった時に連絡が取れるように、と式神の術式を使ったチビ桜を用意してきたのだ。
魔力消費が少ないように空も飛ばず、交信しない間は勇輝の服のポケットの中でじっとしている。以前はウンディーネが精霊石として胸ポケットに入っていた。今度は桜が式神状態とはいえ別のポケットに存在していると思うと、また別の空いているところに次の入居者が出てくるのではないかと考えてしまう。
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