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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第12巻 陰陽の狭間を駆け抜けて

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奇襲Ⅱ

 獣道が交差するところに通りかかると、勇輝は足を止めた。

 勇輝の隣で警戒をしていた正司がその音に気付いて立ち止まって振り返る。声には出さずに表情だけで、何があったかと問いかけていた。


「『このまま右へと反れると鬼の住処』って、本当に器用だな……」


 足跡に光が残っているまでは百歩譲って理解できたが、まさか光を文字にして残していくとは、流石の勇輝も思いつかなかった。勇輝が読み上げた文を聞いて、後ろにいた隆三が何とも言えない声で呟いた。


「はぁ……俺たちには、ただの土と落ち葉しか見えないんだが……。まぁ、明らかにここを通っている奴が何人もいるような足跡が残っているから間違いじゃあないんだろうけどな」

「このまま日が暮れるのを待って夜襲を掛けるか。それとも闇に紛れて密かに救出するか。いずれにしても困難が予想されるな」


 後ろにいた武士は落ち着かない様子で他の仲間と顔を合わせる。アリスが暴れているようならば助太刀に入らざるを得ないが、戦闘音は響いては来ない。彼女の攻撃ならば地響きの一つや二つが聞こえてきそうなものだが、それがないところを見るに彼女も尾行した後は、そのまま鳴りを潜めているようだ。


「まずは鬼に見つからないように住処を見つけ出すのが肝要ではないか? どちらの方法を取るかは、それから決めても遅くはあるまい」

「その通りだ。今は見つからないように進んでいこう」


 まずは意見が一致したので、勇輝が正司に進むべき方向を指し示す。僅かばかりではあるが、茂みの間に人一人が通れるかどうかといった隙間があった。体を横にして葉に当たらぬようにして進むと、急に下り坂が現れた。今まで通っていた道からでは茂みに遮られて見えない道が存在している。


「鬼の癖に小賢しい……。転ばないように気を付けるんだぞ。意外と勾配がキツイからな」


 正司は真後ろにいた勇輝へと声をかける。ここで転んだら、そのまま滑り落ちてしまいそうだ。そうなってしまっては、敵の拠点の位置と見張り次第ではバレてしまうだろう。

 だが、勇輝が辺りを見回す限り、視界の範囲内には鬼がいるようには見えなかった。少なくとも、今まで出会ったような魔物の放つ黒色や、鬼の色である赤はほとんど見えていない。

 明らかに場違いな色は、足元にある三色。しかし、それも草が生い茂っているせいで赤と白でしか判別ができなくなりかけていた。


「太陽が沈み切る前に目的の場所まで辿り着きたいですね。静かに、でも迅速に行きましょう」

「あまり急くな。気が逸ると何かあった時に上手く対処できないからな」


 忠告をした正司は勇輝の指示する通りに道を下っていく。ところがに十歩も進まぬ内に勇輝の足が再び止まってしまった。


「どうした?」

「追ってきた道しるべが……途切れてる」


 左右を見回すがそこには腰まで伸びる茂みが広がるのみ。どう足掻いても大勢が通ったようには見えないし、地面に光の足跡を着けていくには不適合な場所になる。きっと見逃したのだろうと身を屈めて、もう一度辺りを見回すが、それらしき光は一筋も見えてこなかった。


「ここまで来て途絶えてしまったということは、あの娘に何かあったのでは……?」


 後ろの武士たちも何か見つけられるものはないかと茂みをかき分けているが、当然のことながら何かが見つかる様子はない。そんな時、上から声が聞こえてくる。


「おーい、こっちこっち」

「……あのガキ!」


 先程、通って来た道の木の上からアリスが手を振っていた。その姿を見た隆三は大声を出して叱り飛ばしたくなる気持ちをぐっと堪え、飲み込むことに何とか成功する。


「よっと」


 木の枝から勢いよくジャンプすると、ほとんど音もなく正司の前へとアリスは着地した。

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