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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第12巻 陰陽の狭間を駆け抜けて

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潜伏Ⅰ

 ――――悪いね。私としては妖精の持つ眼と同じかと思っていたんだけど、その数段上を行くとは思わなかったんだ。今の君の様子を見ると、魔眼に振り回されているようには見えないし、下手に教えると悪化するかもしれない。だから、私が答えられることは何もない。


 昨夜のアリスの言葉を勇輝は荷台に揺られながら思い出していた。ほとんど情報は得られなかったように思えるが、よくよく考えてみれば直接的ではないにしろ重要な言葉をアリスは話していた。

 勇輝の持っている魔眼のランクが高いこと。そして、使い方を誤ると自分も含め、死人が出る危険性があるということ。この二つは今まで知ることのできなかった情報だ。

 

「そういえば……」


 ふと土蜘蛛と融合していた僧侶が戦っているときに呟いた言葉が頭を過ぎる。


 ――――貴様、まさかその眼……天眼(てんげん)に至っているのか!?


 あの時は戦闘中で、しかも聞き慣れない単語だったから気付かなかったが、自分の持つ魔眼のことを僧侶は理解していたのではないだろうか。

 勇輝は荷台の後ろの景色を魔眼で見る。自然が多いからか、その多くが普段の視界とあまり変わらない緑の光で満たされる。夜中までいた狼たちも夜が開けると視界から消えていた。アリスの言う通り、見送りを終えて帰ったのだろう。


「桜、聞きたいことがあるんだけどいいかな」

「うん、いいよ」


 既に太陽は中天を過ぎ、午前中は意識が朦朧としていた桜も今はハッキリしている。正司や巴も眠そうにしていた様子を見ると、少しばかりアリスが撒いたという睡眠薬の効果を持った粉の影響が残っているのかもしれない。

 朝ごはんの時にも誰もが欠伸をしていたので、勇輝がアリスを影で問い詰めたが、それに関しては全くの心配はいらないということだった。午前中は気を張っていた勇輝も、本当に効果が長引いていただけで後遺症がないことにほっとしている。


「『テンゲン』って言葉、聞いたことある?」

「てん、げん?……どんな字だろう……。パッと思い浮かぶのはあまりないかも。アレかな? 碁盤の目の真ん中の点が交わってる所の名前」

「え、あれってテンゲンっていうの?」

「そうそう、天気の天に、元気の元と書いて天元」


 思わぬ名前を知り、ちょっと驚いてしまう。そんな変な盛り上がりをしたせいか、正司が話し掛けて来た。


「何だ何だ? 囲碁でもやるのか?」

「違いますよ。ちょっと、気になる単語を思い出したんですけど、どういう字を書くかも知らないから上手く伝わらなかっただけです。正司さんはテンゲンって聞いたことあります?」


 その言葉を聞いて正司は腕を組んで天を仰ぐ。乳白色に黄色味がかった幌を見ながら唸ること数秒。両手を上げてお手上げのポーズをとる。


「巴、何か知ってるか?」

「あまり詳しくはないが、聞いた話で良ければしてやれる。それでいい?」


 勇輝が頷くのを確認して、巴は顎に手を当てて少し間をおいて話し始めた。


「天の(まなこ)とかいて、天眼。仏教用語で仏様が持っておられる眼の能力の一つらしい。いくつかある眼の能力を分けて名前を付けた内の一つらしくて、他にもいろいろな名前がついている眼があるらしいけど、あまりよくは知らない。普段、私たちが見る視界を『肉眼で見る』ということに対して、『それ以外の物を見ることができる眼』と教えてもらった。曰く、『遠くも近くも分け隔てなく見通すことができる』。曰く、『夜も昼も関係なく見通すことができる』。いわゆる、千里眼や暗視の魔眼の別の名称だと私は捉えている」

「そうですか……」


 何か他にわかることがあるかとも思ったが、意外と普通の内容で拍子抜けする。どうやら、あの時の僧侶は篝火の少ない暗闇でも攻撃を見切った勇輝を魔眼持ちだと驚愕しただけのようだ。

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