夜の武闘会Ⅶ
心臓がドクンと跳ねたが、勇輝は努めて冷静な表情を保った。
「(どこでばれた? 暗がりで戦えたことを考えるなら暗視の魔眼だけど、それはオーソドックスな方だって言われてたはずだ……)」
この戦いの中で勇輝が魔眼を持っていると悟られるような行為はほとんどなかったはずだ。それなのにも拘わらずアリスは特殊だと言い切った。よほど自信が無ければ、そこまで言い切れない。
「私の左手、ずっと警戒してたでしょ?」
差し出した左手には赤い光が宿っていた。それだけならば、勇輝もさほど気に留めなかった可能性がある。しかし、そこには更に二色。鮮やかな緑と眩い白い光も同時に輝いていた。
思わず目を細める勇輝を見て、アリスは手を閉じる。すると光もすぐに薄れてしまった。
「魔力を認識できる魔眼、とは言い切れないかな。どうにも、もう一癖二癖ありそうだって私の勘が呟いているんだけど……何が見えたの?」
勇輝は目の前の幼女が恐ろしくなった。あの一瞬、この暗さで勇輝の視線がどこに向いていたのかを捉えていた。そんなことができる動体視力を持っている彼女の方こそ魔眼を持っているのでは、と聞き返したいくらいだ。
だが、これはチャンスでもあった。ファンメル王国にいた時には、ほとんどわからなかった魔眼のことがわかるかもしれないからだ。後はその能力が目の前にいるアリスにバレてしまうことや言いふらされてしまうこと。或いは誤魔化されて彼女だけが得をすることなどを警戒しなければならない。
「あ、もしかして、警戒してる? 安心しなよ。誰にも言わないからさ」
警戒しない方がおかしい。何故、幼女が魔眼の能力をそこまで知り得ているのか。少なくとも、魔眼は希少な能力だ。誰もが知っているはずではない。知っているとするならば――――
「――――君ってサリバン家の出だったりする?」
「うーん。それ、誰?」
魔眼の能力を持った魔術師を輩出している大家であるサリバン家ならば知っている可能性もあると思ったが違うようだ。後から聞いた話ではあったが、勇輝を過去視で覗いたギャビン・サリバンでも見抜けなかったのだ。それは仕方のないことだろう。
勇輝は深呼吸して、一度自分に問いかけた。ここで正直に話したとして、望む答えが得られるだろうか、と。数瞬、迷った末に勇輝は訳の分からないまま使い続けるのが嫌だ、という気持ちが勝った。問題、疑問をそもそも放置しておくのは性分としてもあまり許せるものではない。
今では少しばかり戦う力も身に着けたのだ。虎穴に入らずんば虎子を得ず。巫女長が警戒する様に、と言っていたことも頭の片隅にはあったが、勇輝はアリスへと見たことを伝えることにした。
「……赤と緑、そして白の光が見えた」
「赤、緑、白い光……ね。それじゃあ、もう一度手を見ててね」
再び光が現れるが、すぐに勇輝は飛び退いた。アリスの小さな拳よりもはるかに大きい拳の形をした光が、勇輝へとまっすぐに突かれる形になったからだ。小鬼を吹き飛ばした馬鹿力を食らったら、いくら身体強化をしていたとしても相当ダメージが予想できる。
しかし、その後にいくら待ってもアリスは拳を突き出す様子は見えなかった。それどころか、呆然とした表情で勇輝を見つめている。ただ、風に混じって勇輝の耳に微かに呟いたアリスの言葉が聞こえて来た。
「四番目……?」
四という数字に勇輝は思い当たる節があった。地下に籠っていたドラゴンに出会った時に言われた言葉は今でも覚えているし、忘れたくても忘れられるはずがない。
「……それは『第四位の保持者』って言葉と関係があるのか?」
「私以外にもその眼を知っている誰かと会ったことがあるんだね? だったら話は早いよ。君の魔眼は人が持ち得る中でも最上級の魔眼だってこと。だけど、ごめん。その正体を教えることはできないんだ」
「何でだ?」
「使い道を誤れば、大勢の人が死ぬ可能性があるからだよ。そして、君自身も」
間髪入れずにアリスは言い切った。
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