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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
折り重なりし、涅色の迷宮

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隠し通路Ⅷ

 止まったままでいるのも解決には繋がらないので、エアの北方向に戻りながら情報を交換する。



「――つまり、三人も私と同じで清掃中にここへ来てしまったと?」


「えぇ、見えない変な魔物に追われて、気付いたら地図に載っていない場所に来てしまったんです。ただ勇輝さんが言うには、スライムの特徴があるみたいだとか」


「スライム!?」



 大声と共に振り返るエア。


 通路内に声が木霊し、大合唱が襲い掛かってきた。思わず耳を塞ごうと両手を上げかける三人。


 対して、エアは「しまった」という表情で口を押さえた。



「その反応からすると、やっぱりスライムは恐ろしい存在なのか……」



 勇輝は逃げる選択をして良かったと安堵する。しかし、次のエアの反応に勇輝はもちろん、桜とソフィも驚きを隠せなかった。



「何を言ってるんですか。あれほど興味深い生命体はいませんよ!」


「……興味、深い?」



 いったい何の話をしているんだ、と勇輝は首を傾げる。



「はい。見えないという性質は知りませんが、何でも食べて吸収するという特性。一説には、排泄物は液体だけという話ですが、大切なのはそこではありません。スライムの体内には、様々な物質の混合体が存在している可能性が高いのです。薬師として、新しい薬の原料は見逃せません」


「あぁ、なるほど。そういうことか……」



 魔物の強さよりも、その先にある利益を見据えているエア。


 もしも本当にスライムを倒せたならば、嬉々としてその遺体をほじくり返す姿が想像できた。



「それで、そのスライムとやらは、どこにいるんですか!?」


「まずはここを脱出してからです。それにスライムを倒さないと意味がないですよ」



 ソフィが宥めるが、エアの興奮は収まるどころか増していく。勇輝たちが歩いてきた方向を見て、目を輝かせていた。


 そんな彼女の前に手を差し出して、進むべき道を勇輝は示す。



「ここから出たらいくらでも、その話はしてあげますから。死んだら人は治せませんよ」


「それはそうですね。危うく自分を見失うところでした」


「いやいや、既に見失ってましたって」



 ソフィのツッコミにめげることなく、エアは再び前へと進み始める。すると、何度も見た丁字路が姿を現した。


 エアは右手の道を指し示す。



「こっちの道から来たんです。なので、左に進んでみたいと思いますけど良いですか?」


「良いんじゃないですか? 勇輝さん、何か見える?」



 魔眼による危険の察知は手慣れたもの。左右を見渡した勇輝は、すぐに顔を縦に振った。


 今まで歩いてきた通路と何も変わらない。特に何かが潜んでいるという様子もないので、安心して進むことができる――あのスライムらしき魔物の存在以外は。



「念の為、火球を先行させることはできるといいかもな。ただ魔力を消費するから、やらない俺が言うのもアレなんだけど……」


「それなら、私たちが交代でやればいいと思う。勇輝さんは最後の脱出手段の為に、魔力は取っておいて」



 申し訳なさそうにしながら、勇輝は礼を言って丁字路をエアと共に曲がる。


 後ろから火球が追い抜いて行き、先の空間をより一層明るく照らした。魔物の影はなく、曲がり角も見えない一本道だ。



「……そもそも、ここって何なのかな? 下水よりも下にあるみたいだけど」


「もしかすると、魔法学園の人工ダンジョン。その失敗作とかかもしれませんね。ほら、明らかに遺跡型のダンジョンと似通っていますから」


「王都の地下に何でそんなものが?」



 エアの推測に桜は疑問を呈する。



「逆ですよ、逆。王都ができてからダンジョンを作ったんじゃなくて、ダンジョンを作った。あるいはあったから、その上に王都を作ったんじゃないかなと私は考えています。それで、そのダンジョンを作る過程でできたのではないでしょうか?」



 面白い発想だが、一つだけエアが知らないことがあった。学園のダンジョンの最下層には遥か昔から生きているサイクロプスが、今も管理を続けている。神にも連なるという以上は、そんなダンジョンの失敗作を放置しているとは思えない。


 特に鍛冶をしている職人の面も考えると、むしろ、そんな存在は許せないのではないか。



 ――では、この通路は何のためにあるのか。



 そんな疑問を抱きながらも、勇輝は通路の奥へと足を踏み出した。

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