蛇化したダンジョンⅧ
視界不良に苛まれること二十数秒。やっと、まともに目を開けられるようになった勇輝は、蛇ゴーレムに向けて走り始める。
元々、離れる際には十秒も猶予が無かったので、戻る際にかかる時間も少なくて済んだ。だが、目の前に広がっていた光景は、少し想定していた物とは違った。
「何か、白くなってる?」
先程まで蠢いていた蛇ゴーレムは、まったく動く気配がない。蛇の抜け殻のように、生きている感じが全くしなかった。
試しに切りつけてみると、すぐに心刀が声を上げる。
『なるほど、かなり強力な浄化魔法だな。魔物が生まれようとしていた部分が全部機能停止した感じだ。蛇ゴーレムとして体を動かす部分諸共、きれいさっぱり生体反応が無いというか、魔力が通っていないというか。とりあえず、攻撃をしても無意味だな』
「そうか。じゃあ、ソフィアさんかマックスさんと合流を――」
勇輝はいきなり別れてしまったソフィアを探す。パッと見た感じでは見当たらないのだが、魔眼で見るとグラムが放つ光ですぐに場所が分かった。
刀身自体は漆黒なのに、その周囲には白い粒子が滞留していて、思わず見とれそうになってしまう。
「俺を探しながら前に進んでたのか? 早く追いつかないと」
蛇ゴーレムが再起動することもあるかもしれない。警戒を含め、身体強化を発動させて、光の下へと駆けて行く。
「む、後ろの方にいたか。すまない、通り過ぎてしまっていた」
「いえ、大丈夫です。それより、何か変化はありましたか?」
「浄化魔法を受けてから微動だにしなくなったからな。一先ず私はアルト様の所に戻ろうと思っただけだ」
口調に敬語が無く、まだ戦闘モードのソフィアはグラムを担いで歩き始める。
その横に勇輝は並びながら、グラムを見た。
邪竜を殺しと言われるグラムは、マックスがもつエトナと並んでサケルラクリマで語り継がれる二大聖剣。
ふと思ったのは、グラムはエトナと違って話さないのだろうか、と。
『そりゃあ、成り立ちが違うからな。そもそも、こいつは最初から話す機能なんて持ってない。ただ自分の役目を果たすだけの武器だ』
「お前、そんなにグラムと関わったことが無いのに、よくわかるな」
『餅は餅屋だ。武器同士、ある程度のことはわかるんだよ』
心刀は当たり前だと言わんばかりに言い切る。すると、興味深げにソフィアが心刀を覗き込んで来た。
「そういえば、私はこの剣を引き継ぎはしたが、その力は何か聞いたことが無い。魔に落ちた竜に対して効果が高いということだけは知っているが、それ以外に何かあるのかわかるなら教えて欲しい」
『簡単だ。その持ち主には常に試練が付き纏う。一種の呪いだな。まぁ、黒騎士隊長なんて身分になった者が受け継いでるんだ。聖剣の試練なのか、黒騎士隊長だからなのかなんて区別がつくはずもないから、気にせず過ごした方が無難だ』
「……喜んでいいのか、悪いのか」
微妙な表情で姿勢を正すソフィア。恐らく、今まで相当な鍛錬や危機を乗り越えて来たのだろう。そんな彼女からすれば、きっかけが何かなどは、あまり関係ないのかもしれない。
むしろ、鍛錬の果てに辿り着く究極技法に若くして至ったことを考えると、自分が強くなる機会だと捉えていそうだ。
『ま、聖剣として長年扱われている時点で、そいつは幸せものだろうよ』
心刀の呟きに勇輝は首を傾げた。
グラムという剣はゲームでも聞いたことがある名だ。ただし、その時には聖剣ではなく、魔剣として呼ばれていることが多い。
一般的に魔剣と言われると、正義の聖剣に対する悪の魔剣と言う立ち位置に感じられる。
グラムに意志はないとのことだが、正義と呼ばれるか、悪と呼ばれるかを考えると、正義と呼ばれる方が気分が良いだろう。
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