蛇化したダンジョンⅦ
やはり、簡単には倒させてくれないことに勇輝は憤りながら、ソフィアと共に得物を振り被って迎え討つ。
「――気味が悪いな。魔物のはずだが、亡霊でも相手にしてる気分だ」
「魔王の残滓と考えれば、あながち間違いではないかもしれないですけどね。――おい、アレを止められないのか?」
勇輝が心刀へ呼びかける。
切りつけた感触は変わりなく、動きが衰える様子はない。唯一異なるのは、傷口が再生しないことくらいか。
『核がないこっちは、その内止まる。早めに止めたければ、単純に損傷を増やせばいい。上空の二人が適任だろう』
「好き勝手言ってくれるわね。まぁ、なんとかしてみるけど、期待はしないでね。あと、勇輝君? 桜ちゃんから伝言だけど――」
リシアの声が届くが、勇輝は言い終えるのを待たずに口を開いた。
「無茶するな、ですよね? 大丈夫だって伝えといてください」
ほんの少しの間が開いた後、リシアの苦笑の混じった声が返ってきた。
「まったく、女心のわかってない人ね。後で桜ちゃんに怒られなさい」
「えっ! なんでっ!?」
思い当たる節がない勇輝は、思わず天を仰いだ。緑の葉と幾重にも張り巡らされた枝によって、リシアの姿を捉えることはできない。
困惑したものの、それ以上の言葉が返ってこない以上、勇輝たちができることは蛇ゴーレムの頭部側に隠れた核を破壊すること。
踵を返し、勇輝はソフィアを連れて駆け出す。
「下手に切断すると敵を増やす。しかし、確実にトドメを刺せるなら、それも一つの手段だけど……」
「対応する部隊と離れている以上、悪手かと。ここは一先ず足止めに徹し、浄化魔法を確実に当ててから対応するべきだ」
「わかりました。じゃあ、可能な限り前に進みながら攻撃を加え続けます」
心刀とグラムの二振りが、風切り音を伴って蛇ゴーレムに叩きつけられる。
前者は水を裂くように滑らかに、後者は文字通り岩を砕くように荒々しく、蛇ゴーレムの硬い体を削り取っていく。
心刀が核の位置を逐一報告をしてくれるのだが、明らかに核は勇輝たちから逃れるように頭部へと向かっていた。
何か嫌な予感がする、と直感が囁く。そんな中で、勇輝は周囲がわずかに明るくなっているような気がした。
木漏れ日とも異なる淡く白い輝き。それが浄化魔法発動の前兆と気付くのに時間はかからなかった。
「浄化魔法は普通の人間に効果は!?」
「ない! 呪われた武器を使っていたら、それが――」
『それを早く言えって! 効果範囲から逃げろ! 早く』
ソフィアが言い終わらぬ内に、心刀が叫ぶ。勇輝は慌てて進行方向から直角に方向転換。二十数メートル先の光のカーテン目掛けて全力疾走する。
身体強化を施した脚力ならば二秒もいらない。しかし、いつ発動するかわからない恐怖は、勇輝に冷や汗をかかせるには十分だった。
白い光の粒子が視界から消え去っても、安全とは限らない。勢いのまま走り続けて、距離を取る。
「こ、ここまで来れば大丈夫だろう――っ!?」
駆け足から速度を緩め、振り返った勇輝を白い閃光が貫いた。
太陽が地上に現れたのかと思う程の光量に、瞼を瞑って腕で庇っても、眼の奥に光が突き刺さる。視界が奪われたことでバランスを崩し、勇輝はその場で跪く。
瞼の裏に青紫の光が明滅を繰り返している。視界の回復には十秒以上はかかるだろう。
「光属性魔法って、直接攻撃よりもこっちの方が強いんじゃないのか?」
『あぁ、視界に頼る生き物なら、初見で対応できないだろうな。いやぁ、今回ばかりは死ぬかと思ったぞ』
本気で焦っていたようで、心刀の声がいつもよりも人間らしく聞こえた。
「……俺、そう言えば周囲に結界があるはずだから、大丈夫なんじゃないか?」
『ばっかやろう、結界の円は真上からの攻撃には無力だ。それに、あんな光の爆撃くらったら結界があっても無くても意味ないだろうが!』
「それもそうか……」
勇輝は納得しながらも、薄目を開ける。魔眼が強制的に閉じていて、茶色の地面が見えた。ただし、やけに白く見えていて、まだ視界が完全に戻っていないようだった。
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