新生Ⅰ
最初に襲われた地点まで戻ると、既にマックスとウッドが立っていた。
神殿騎士の何人かもおり、何かしらの話をしているのだろう。既に蛇ゴーレムは動いていないので、その後始末のことについてだろうか。
「お、戻ったな。最初はどうなることかと思ってたけど、何とかなったみたいで安心した。そっちに怪我はないかい?」
「えぇ、何とか。もう少しで、浄化魔法の巻き添えを食らうところでした」
勇輝が肩を竦めると聖剣が笑い始める。
『はっはー、なるほどな。その剣が魔剣の類なら浄化されちまうもんな。大変だねぇ、そっちも』
『おかげさまで苦労はしてる。尤も、その大半は俺じゃなくて、持ち主であるコイツに降りかかって来てるんだけどな』
先日までは自身の存在をバレないようにと無言を貫いていた心刀が、今ではこうやって聖剣と会話してる。そんな姿に、「もしかして、こいつ。今まで仲間がいなかったから、寂しかったのでは?」と思ってしまう。
日ノ本国にいた時には、何度か心刀を持つ人と出会うことはあったが、心刀と会話する場面は見たことが無い。或いは、勇輝が知らないだけで無言の武器と会話をしている、と言う可能性も無くは無いのだが。
「それで、この魔物を切ってわかったことはありますか? その可能性があると枢機卿からは伺っています」
『俺よりも、まずは聖剣様の方がいいんじゃないのか? 俺よりもたくさん魔王とは戦ってるわけだしな』
あえて心刀は聖剣へと回答の出番を回した。確かにどこの馬の骨とも知れない輩よりも、身内からの説明の方が納得もしやすいだろう。
当の聖剣の方は、自分が説明するとは思っていなかったようで、間抜けな声が漏れ出ていた。
『ふあっ!? 俺様かよ。まぁ、できなくはないけどな』
「過去に変化したダンジョンと交戦したことがあるとのことでしたが、記憶の方はお戻りになられましたか?」
『朧気にだけどな。ただ、こいつみたいな瓦礫の寄せ集めみたいな状態じゃあなかったことは確かだ。何というか、元になったダンジョン自体が不完全だったんじゃないのか?』
既に一度クリアしたダンジョンだ。不完全というのも間違いではない。
逆に言えば、完全な状態のダンジョンだったり、大規模なダンジョンだったりした場合は、その分だけ強力な姿になっていたと考えることもできる。当時の人々はかなりの被害を被ったことだろう。
『切ってもなかなか力を散らした感が無いんだよな。表面だけを削っていて、中に届いていないような……。まぁ、その程度だな。俺様がわかったことは』
「そうですか。では、そちらの剣の意見を聞いても?」
ソフィアに促されて、心刀は何でもないことのように語る。
『俺も同感だ。ただ、ここまでやれば後は核がどうなったかだけ確かめられれば、問題はないはず。おい、もう一回、こいつに切りつけてみてくれ』
核を潰せば問題は解決。勇輝は心刀を半壊した顔面に突き刺した。
ガラリ、といくつかの石が崩れ落ち、砂埃が舞う。ただの強度の低いモニュメントと化した蛇ゴーレムだったが、心刀が小さな唸り声を上げた。
「何だ? 実はまだ死んでないとか言うなよ。俺が真っ先に喰われるんだから」
『いや、そうじゃない。この蛇みたいな奴は確実に死んでいる。絶対に動くはずはない。そのはずなんだが、何かがおかしい。核自体は存在しているというか、さっきよりも存在感が増していやがる』
体は死んでいるが、心臓か脳だけが生きている状態。人間ならば、いずれ死ぬのだろうが、蛇ゴーレムの場合は事情が違う。何せ、一番の問題は魔王の力が宿って暴走していることなのだから。
「じゃあ、その核をぶった切って、この事件は終わりだな。それで、その核はどこにあるんだ?」
『待ってくれ。急に動き出して――こっちに来る!?』
心刀の声に全員がその場から飛びのき、武器を構えた。




