蛇化したダンジョンⅣ
蛇化したダンジョン。あえて名付けるならば蛇ゴーレムとでも言うべきか。
それは、ボロボロに崩れた顎を再生させながら、先頭を行くウッドへと襲い掛かる。
「はっ、お前のその顔。もっと削り取ってやるよ!」
槍が突き出されると同時に、その穂先が巨大な風の刃の渦――すなわち、ドリルとなって蛇ゴーレムへと襲い掛かる。
牙が折れ、顔が再び形を失う。しかし、目など無くても勇輝たちを細くしているのか。側面から伸びた尾が、勇輝たちを薙ぎ払おうと迫る。
「マックスさん! あの攻撃は気にせず前に!」
「信じていいんだな!?」
「もちろん! 後ろにいる神官たちを信じてください!」
勇輝の魔眼には白い光が何重にも蛇ゴーレムの体に纏わりつき始めているのが見えた。
形も様々で、ケージのように箱の中へと押し込めようとするもの、半球のドームにするものと様々だ。単純に囲むだけではない。蜘蛛の糸のように絡みつき、或いは障害物の如く立方体が無数に蛇ゴーレムの周囲に展開されているものもある。
薙ぎ払おうとしていた尾も、その光を潰しながら勇輝たちに迫るが、一気に減速して遥か手前で停止してしまう。
「ウッド、下がれ!」
「おう、任せたぜ!」
マックスの掛け声にバックステップで離脱するウッド。しかし、それは削り続けることで止めていた蛇ゴーレムの頭部を解放することを意味している。
再生をし始めた頭部は、完全に形が戻らなくとも構わないとばかりに、勇輝とマックスに左右へと揺れながら襲い掛かる。
「悪いけど、させないわ」
リシアの言葉が響いた瞬間、襲い掛かろうともたげた首が唐突に地面へと押し付けられた。
走っていた勇輝は、一瞬、その足を止めそうになる。何せ、今までに見たことのない色の組み合わせの光が見えた。
――黄と黒。
それらは蛇ゴーレムを地面へ押し付けるかのように天から降り注いでいた。
遅れて、勇輝はリシアが重力魔法で空を飛んでいたことを思い出す。そして、この世界に来たばかりの時に、重力魔法で身動きができないほどの負荷をかけるという技が存在することも。
蛇ゴーレムまであと数歩と迫った時、地面が揺れ、蛇ゴーレムの頭が持ち上がった。だが、それは蛇ゴーレムの膂力――いや、背筋で持ち上がったわけではない。地面から突き出した岩の槍によって、串刺しにされた衝撃で持ち上げられていた。
その光景に勇輝はニヤリと笑う。こんな状況で、的確に岩の槍を放てる人物など一人しか存在しない。心の中で感謝しつつ、心刀をがら空きになった腹へと全力で振り抜く。
「「いっけぇ!」」
マックスと共に放った一閃。
勇輝の手には、岩に触れた感覚は一切なかった。水を裂くような軽い感触。
踏み出した脚で急ブレーキをかけて振り返る。すると、そこには深い一本線が刻まれていた。
『ぼーっとするな! 可能な限り切り続けろ。俺がこいつのことを理解すれば、それだけ早く倒す方法が見つかる!』
「――わ、わかった」
心刀に促され、痙攣する体へと振り下ろす。血は出ず、体を構成する物体が塵となって空を舞うだけ。
勇輝は振り下ろした心刀を、横に踏み込むと同時に切り上げ、再び切り下ろす。雷のような軌道を描く中、心刀自身が大きな声を思念で飛ばした。
『おう、聖剣様。そっちの攻撃が当たる度に、何かわからんが、こいつを構成している何かが削れているのが分かる。だが、ここは末端だ。急所じゃない!』
『――なるほど、もっと効果的なところがあるってことだな? やっぱり、ゴーレムやダンジョンと同じで核があるってことかもなぁ』
聖剣の返答に、それぞれの持ち主であるマックスと勇輝が声を掛け合う。
「マックスさん。ここじゃなくて、尾の方へ!」
「あぁ、俺もそう思ってたところだ。油断すんなよ、勇輝!」
勇輝は蛇ゴーレムの脇腹――もしかすると、首筋かもしれないが――に心刀を突き立てると、そのまま尾に向かって走り出した。
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