蛇化したダンジョンⅢ
突然の出来事に反応が遅れた勇輝だったが、その腹へ強烈な痛みが走った。
「ぼーっとしてんじゃねえ! ここは戦場だっ!」
ウッドの槍で吹き飛ばされて、仰向けに転がる。そのまま後ろに一回転して、蛇化したダンジョンの全体像を見た瞬間、思考がフリーズした。
体表は褐色の鱗に覆われているが、ガンドに穿たれた場所には血も肉も存在しなかった。
――岩や土、或いはレンガや石畳。
ダンジョンを構成する物質によって、形作られた蛇。言い換えるならば、蛇型のゴーレムと言った方が正しいかもしれない。
「面倒なことになった。ゴーレムを倒す方法は核を潰すこと。その核を、この巨体のどこかから探し出して破壊しなくてはいけないのか!?」
マックスが距離を取りながらも、悲鳴染みた声を上げる。
ぱっと見えるだけでも二十メートル以上の体長。正面から見た顔は崩れているが、徐々に修復が始まっており、直径五メートル以上はある。
先の一撃で勇輝たちが隠れていた樹木は、幹が噛み砕かれて、ちょうど魔物の方へと倒れて行くところだった。
「……おいおい、デカいの一言では済まないんじゃないのか? 枢機卿たちの魔法も効いてないみたいだしよ。撤退も視野に入れるか?」
魔物の胴へと当たるはずだった木は、背後から伸びて来た尾の一撃で遠くへと吹き飛んでいく。
破砕音という言葉すら生温い轟音が、森中に響き渡った。
『俺様で切れば、動きが鈍くなる。それに切った場所は再生しない可能性が高い。問題はあれに近付けるかだ。それに、お前ら後ろにいる騎士や神官――いや、街の人間がいる所へと戻れるタイプか?』
「はっ、聖剣様にはお見通しってか? できるわけねえだろうが!」
攻撃を加えれば加えるほど有利になる。そうわかっていても、簡単に踏み込める相手ではない。だからと言って、引けば被害が増えるだけ。
勇輝は心刀を使った転移で、マックスごと魔物の傍に近寄ることを考えるが、即座に心刀から拒絶の意志を示される。
『やめておけ。この後、神官たちが結界で抑え込む予定なんだろ? 下手に干渉が起こると、どうなるかわからん。使うのは最終手段にしておけ』
「ちっ、仕方ないな。だったら、ガンドで時間を稼ぐまでだ!」
装填が完了したガンドを再び撃ち放つ。
再生しかけていた頭部が吹き飛び、それでもガンドは勢いを止めることなく胴の半ばまで進んでから、貫通して飛び出ていく。
本物の生きた生物のように体をくねらせ、頭部だった場所が天を見上げるように持ち上げられた。
「神官たちの方の結界も、まだか。さっさとしないと、こっちに――」
「みんな聞こえる? 今から結界――そいつを――さえ込むみたい――、突撃――準備しておいてね!」
その時、唐突にリシアの声が届く。まだ、言葉の端々にノイズがかかり、全部がはっきり聞こえるわけではないが言わんとしていることは伝わった。
勇輝たちは互いに視線を交わすと、それぞれの得物を手に姿勢を低くする。
「あと五秒後!」
リシアのカウントダウンに、魔物の動向を見守りながら重心を前に移動させる。
全身を魔力が駆け巡り、爆発する瞬間を今か今かと待ち構えていた。
「――三、二、一!」
ゼロ、という言葉が聞こえる前に勇輝たちは飛び出していた。
特にウッドは、明らかにフライング気味で勇輝よりも五メートル以上前を走っている。槍に纏った緑の光は風属性魔法なのだろうか。渦を巻き、破裂しそうな風船のイメージを抱いた。
「俺が動きを止める! リシア、合わせろ!」
「そういうことは早く行ってよね!」
エコーがかった声が不満気に響くが、即座に声が途切れた辺り、何かしらの詠唱をし始めたと考えられる。動きを止める魔法は、岩の槍が真っ先に思い浮かぶが、果たして目の前の魔物に効くかどうかは怪しい。最悪、こちら側の魔法が飲み込まれ、再生に使われるのではないかという考えさえ浮かぶ。
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