蛇化したダンジョンⅡ
遅れて鳴り響く轟音。吹き荒れる熱風。
ウッドが用意していた障壁がなくても耐えることはできていただろうが、それでもかなりの衝撃が周囲を襲った。
「おいおい、俺たちまで巻き込むつもりじゃないだろうな?」
「その心配はしなくても大丈夫だろう。何せ、魔力の制御に関してはサケルラクリマの神官は、かなり鍛えられていると聞く。そのトップに君臨する枢機卿が放つ魔法だ。そう簡単に制御を誤るとは思えないな」
魔物にダメージを与え、かつ自軍への被害を抑えるギリギリを狙って今の威力なのだとしたら、やり手もやり手。相当な魔法使いということになる。
「ビクトリアさんほどじゃないけど、かなりの火力だ。バジリスクの超速再生でもなければ、アレで終わってもおかしくないと思うけど……」
ダンジョンが蛇化するという現象から生まれた魔物。どんな能力を持っているかわからない。
熱風が収まったことを確認して、木の影から先を窺う。
白煙が手前に流れ、奥には黒煙が立ち昇っている。吸い込んだ煙が気管支を撫で、思わず咳き込んでしまいそうになった。
「前が見えないな。リシア、そっちはどうだ?」
ウッドが呼びかけるも応答はない。
魔法の効果範囲外にいるのか、強大な魔法の余波で一時的に不通になっているのか。いずれにしても状況の確認が難しい。勇輝の魔眼も煙の向こう側の様子は、真っ赤に染まった光と霧散する緑の光の粒子で見通すことができなかった。
耳を澄ませてみるものの聞こえてくるのは、木々の燃えたり、割れたりする音などばかり。咆哮も無ければ、反撃で暴れる様子もない。
時折、地響きが足下を震わせるが、恐らくそれは木が倒れて、地面に叩きつけられたものだろう。
「静か、ですね」
「あぁ、だが今ので倒れたとは思わない方が良い。嵐の前の静けさって奴だ。何か、蛇化したダンジョンの情報は聖剣として持ってないのか?」
マックスが白銀の刀身へと問いかけるが、その返事は微妙なものだった。
『ダンジョンにもいろいろな種類があるように、蛇化したダンジョンもそれぞれだ。再生する奴もいれば、魔法を使う奴もいた。ただ、俺が真正面から蛇化したダンジョンと戦ったのは、そんなに多くない。はっきり言って、デカい蛇以外の情報は戦ってはじめてわかるってくらいだ』
「なるほど。それならば、なおさら勇輝の協力は欠かせないな。仮に魔王を完全に消滅できずに次代へ希望を繋いだとしても、あの大きさの魔物は、存在だけで脅威となり得る……!」
身体強化を施してなければ一撃で即死。使えていても、練度が低ければ同じ結末に至る。
体が大きいというのは、それだけで大きなアドバンテージがあることを意味している。
「おい、さっき見たアレ。倒し切れたと思うか?」
『お前の今までの経験でわかるだろ。ああいうのは、なんだかんだで生きてるもんだ。油断すると足元をすくわれるぞ』
勇輝も心刀と同意見だった。この程度で終わるのならば、魔王の脅威もたかが知れる。数多の魔物を引き連れて、災厄の代名詞となった者の力を侮ってはいけない。
警戒を怠らず、煙の向こうを観察していた勇輝は、その先にかすかに蠢くものを見た。赤い光を食い破って現れた黒い光を認識すると同時に、人差し指をそちらに向ける。
「――来るっ!」
魔王の力というものが与える潜在的な恐怖が、勇輝にガンドを連射させるという行為を引きずり出した。
結果、そのおかげで勇輝は命拾いをすることになる。
飛び出して来た体を五発のガンドが貫いた。風穴が空き、迫り来る脅威は速度を減衰させて倒れ伏す――はずだった。
「なっ!?」
蛇のような長いそれには顔が無かった。牙が無かった。そもそも、口と言えるものがあったかも怪しい。ただ、勇輝に穿たれて残った部分を口にように動かして食らいつこうとしていた。
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