魔王の置き土産Ⅳ
夢の中で複数人の見覚えがある日ノ本国の人たちから、滅多刺しにされた衝撃で目を覚ます。
『よう、起きたか? さっさと目を覚ませって言っても起きないから、結局、こうすることになっちまったじゃないか』
「お前さ……。だからって、アレはやりすぎだろ。一人ならともかく、五、六人に囲まれてたぞ。おまけにメンバーが全員、俺より強いとか勘弁してくれ」
炎の心刀の使い手である南条國明や剣術の稽古をつけてくれた烏天狗の僧正といった錚々たる顔ぶれに、夢の中で顔をひきつらせたほどだ。
成長したとはいえ、その状態になった時点で負けを悟るしかない。
「それでお前が起こしたってことは、お迎えが来たってことだな? 桜も起こさないと――」
『違ぇよ。疲れてるところで大変だが、ヤバいのが来そうだから叩き起こしたんだ。あぁ、起こすのは止めはしない。さっさと起こさないと、死ぬハメになるぞ』
勇輝は心刀の言葉に首を傾げながらも、桜の肩を揺する。最近はかなり素直に起きることができる桜だったが、徹夜の後は無理だったらしい。かなり強めに揺すっても、寝言一つ返ってこない。
「ここには勇者も聖女もいるし、枢機卿が十二人。神殿騎士と黒騎士、神官も大勢いる。ヤバいって、魔王でも来たのかよ……」
『――そうだと言ったら、どうする?』
ゾッと、怖気が背筋を駆け上った。桜の肩を揺する手を止め、心刀の言葉を待つ。
きっと、たちの悪い冗談だと。
『この前、試練のダンジョンに魔王の手先らしき魔物がちょっかいを出しに来てただろう? ラドンとかいう奴だったよな。この街の結界をすり抜けてこれたのは、アイツらだけじゃなかったってことだ。忘れたか? ダンジョンがどういう形で蛇になるかって』
ダンジョンを作り出したり、その中に魔物を産んだりするのは地下を流れる大地の魔力だ。それを利用して結界を形成している魔法もあると聞くが、それらで全てを使う訳ではない。事実、カルディアの街は試練のダンジョンは例外として、その隣に作られてしまったダンジョンは、その魔力を得ていたのは間違いない。
「いや、ちょっと待てよ。あのダンジョンは潰したから、蛇になんかなるはずが――」
『どうだろうな? そこに聖剣を持って勇者が向かったわけではない。加えて、今は潰れたとはいえダンジョンの残骸だ。溜まりに溜まった魔王の力が別の形で出現してもおかしくはないだろ?』
「お前、わかってて黙ってたんじゃないだろうな?」
まさかの心刀の裏切りを疑う勇輝だったが、心刀自身は心外だとばかりに声を荒げる。心なしか、鞘越しに刀身が震えているような感覚があった。
『馬鹿言うな。いつも言ってるだろ。俺はお前で、お前は俺だって。自分が心で喜ぶ奴がどこにいるんだ』
「……今さっき、俺を殺したの、お前じゃん」
『夢じゃなくて、現実の話だよ! 寝ぼけたこと言ってないで、さっさと準備しろ。被害が出ない内にな』
議論をしている場合ではないと、勇輝は判断し、桜の背中と膝裏に手を通す。お姫様抱っこの形で持ち上げ、部屋を出る――前に、桜の杖を机の上から回収する。
廊下に出ると同時に勇輝は、心刀に最終確認する。
「まだ、神殿内は慌てている様子はない。何でわかったんだ?」
『武器としての勘、といってやりたいところだが、そうじゃない。明らかに気持ち悪い魔力が漂って来てるんだ。お前に分かりやすく言うなら、外から火は見えないけど、焦げ臭いって感じだな』
勇輝が魔眼で見えないモノを感じ取れるように、心刀もまた武器特有の感覚で危険を察知したのだとすれば、お手柄だ。問題は、起きていない事件を誰に、どう伝えるかだ。
すれ違う神官たちの奇異の視線を浴びながら、勇輝は星見の祭壇の階段を駆け上った。
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