魔王の置き土産Ⅱ
先にファンメル王国に戻るということは、一応、国王陛下からの依頼ということで赴いている勇輝たちは、起きたことを報告をする必要があるだろう。
果たして、どこまで話せばいいのか。恐らくは、聞かれることに答えるのではなく、まず最初に勇輝たち自ら要約した内容を要求されるに違いない。
勇輝の脳内に、国王の隣で険しい顔をする宰相の顔が浮かぶ。
「あの、もしかして、王国に帰ったら何か話を聞かれると思います?」
「あー、そういや、国王経由で依頼を受けていたんだっけ? そうなると、間違いなく話を聞かれるだろうな。どうしたもんか……」
マックスは腕を組んで唸る。すると、柄から手が離れたことで聖剣がわずかに持ち上がった。
『ま、ここまで来たら、お偉いさんくらいの耳には入れておくべきだろうよ。どうせ、お前が帰国したらバラしちまうだろうからな』
「よくわかってるじゃないか。皇太子として、当然の情報共有だよ。国王自身としての判断は、どうなるかわからないけど、きっと貴族たちに自領地のダンジョンの魔物狩りを奨励する通達を出すだろうね」
聖剣ではなくとも、ダンジョン内に魔王の力が溜まることは防げる。雑魚を大量に相手する場合と魔王の力で変化した大蛇を相手にする場合、どちらが大変かなど聞くまでもない。
マックスは国王なら即決即断で指示を出すだろうと言い切る。
「えっと、できるだけ人払いをお願いするべき、ですよね?」
「そうだね。僕の身分についてですが――とか切り出してくれれば、宰相の方が気を利かせてやってくれるはずだ。国王がこの件は秘密裏に進めているだろうから、知らされた宰相が胃を痛める未来しか想像できないけど」
マックスは苦笑いで肩を竦める。やはり、宰相が苦労しているというのは王族内でも当たり前の認識らしい。
そこまでわかっているなら、もう少し楽をさせてあげたらどうかと心の中で思う勇輝である。
「じゃあ、ここで知った内容は全部正直に話して大丈夫ということで」
「あぁ、枢機卿たちから何か言われなければ、という前提があるとだけは言っておく」
あくまでファンメル王国側の判断は、ということだろう。サケルラクリマ側からの要請にマックスが関与することはできないので、リブラ枢機卿辺りに聞くしかない。
国のトップに君臨する人物の一人に聞くしかないという選択肢がパッと出て来てしまう辺り、勇輝は自分が置かれている立場が普通ではないことを自覚して笑ってしまう。今でも平穏な生活を求めていないわけではないのだが、どうしても行く先々で面倒なことに巻き込まれてしまう。もはや運命の女神に弄ばれているとしか思えない強運と凶運には呆れることしかできない。
「あとは、ユーキ。君にしかできないお願いだ。もしも時間があれば、君もダンジョンに潜って、できるだけ魔物を狩って欲しい。浅い階層は一般の冒険者でも何とかなるけど、深くなると危険だから、人が入り込まないことがある。それを避ける意味でも高ランクの冒険者の協力は不可欠だ――もちろん、ガールフレンドの許可の範囲で」
即座に頷きかけた勇輝だが、きゅっと桜が袖を引っ張ったことで即座に頷くことを躊躇った。そのまま頷いていたら、後が恐ろしいことになっていただろう。
それにマックスも気付いてくれたようで、笑いながら言葉を付け加えてくれた。
「さて、また今度会おう。その時までに、もっと強くなってるから、その時は模擬戦でもやろうじゃないか」
「俺の刀が嫌がるんで、その時は木剣でお願いします」
聖剣に妖刀が触れたら、浄化されてしまう。あり得ないだろうが、万が一のことを考えて、そう告げると辺りが明るくなり始める。
太陽の光が神殿の塀ごしに降り注ぎ、冷たい空気に混じって温かさを感じた。
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