幕間
星が天を駆ける。
数多の星が煌めくものの、聖女に語り掛ける者はただ一つ。アルトは天を見上げ、その星が現れるのを待っていた。
「あの、話しかけても大丈夫ですか?」
「えぇ、星神様が姿を現すには、まだ時間があるようです」
リシアの問いにアルトは笑顔で頷く。
耐寒用のローブを羽織っているとはいえ、冬の夜の冷気の下では息が白くなるほどに寒い。ただじっと待つだけよりも、話している方が気が紛れるというものだ。
「星神様が見えないということは、ある特定の星から声が聞こえるということですよね? それならば、どのタイミングで星が見えるか計算できるんじゃないんですか?」
その問いかけは的を射ていた。季節ごとに見える星は決まっている。その為、星見の儀式を行うために神官たちは星図や今までの記録から、何時頃に星が見えるかを予想している。
当然、その知識はアルトも学んでいた。むしろ、聖女になる前よりも、なった後に枢機卿たち自ら指導を受けたほどだ。今では星図表や記録が無くても、大体の出現する時間帯を予測できる。
「はい。恐らく、夜明けよりも早い時間に東の空に姿を見せてくださるはずです」
「では、夕方から始まる儀式には、自分で行った方がバレにくいはずです。万が一、今、バレていたら、街中を捜索されてしまいますよ?」
二人は知る由もないが、黒騎士と神殿騎士がリブラ枢機卿の命令の下、神殿から捜索に繰り出していた。それも特定の場所を狙い撃ちして探すのではなく、数に任せた人海戦術による町全域を隅から隅まで探す大捜索。
アルトは、もし捜索が始まっていたら騎士たちには申し訳ないと思いつつ、この作戦を強行した。
「実はね。私、枢機卿たちの中に裏切り者はいないと思ってるんです。だって、いつもあんなに世界の為に祈っている人たちが、そんなことをするはずがないですから。だから、抜け出して、ここに来たのには別の理由があるんです」
「……枢機卿たちには知られたくない話でも?」
アルトは小さく頷く。サケルラクリマの星見の祭壇では到底聞くことはできない。ましてや、その外で誰が聞いているかもわからない中で、星神に問いかけるなどもっての他だ。
ファンメル王国を訪れた際には、思っていた以上の歓待を受けた。最高レベルの護衛もしてもらえたが、それでも信用しきることはなかった。
「そうですね。少なくとも、国を動かしたり巨大な組織に属していたりする人には聞かせられない内容だと思いますから」
「私は良いんですか?」
「マックス様のお仲間であれば信用できます。それに、これから旅に出る私も仲間になるのですから、信用しないでどうしろというんですか」
アルトの推測では、マックスたち四人と自分、黒騎士隊長のソフィアの六人が魔王討伐のメンバーとして旅に出る。リブラ枢機卿が他の黒騎士たちを選抜するという話をしていたが、通っても一人か二人が限度だろう。
ソフィアの次に白兵戦を得意とするキャロラインか、後方支援も得意とする器用なレベッカか。選ばれるとしたら、その二人くらいだろうと考える。
「それとも、実はリシアさんが裏切り者だとでも?」
「アサシンギルドお抱えの専属魔法使いとか、今時、子供を躾ける御伽噺にも出てこないですよ。そもそも、そんな度胸があるなら、今頃は魔法学園で教鞭を振るっていたでしょうね」
ありえない、と一笑に付すリシアは、杖にもたれかかって腹を抱えていた。
「……教員になりたかったのですか?」
「えぇ、全部の属性を満遍なく発動できるが評価されて、臨時講師の話も来ていたことがあるんです。でも、やりたいことは別にあったし、何より人前に出るのはそこまで得意じゃないので」
「魔王を倒したら、嫌でも人前に出ることになりますよ?」
「その時は、教員になるのも良いですね。王都の人全員の視線に比べたら、教室内の視線なんて気にならないでしょうし」
アルトはリシアの冗談に小さく笑った。
日付が変わるまでは時間があり、さらに星神が現れるまでには数時間ほど必要だ。子どもの頃、近所の仲間と共に作った秘密基地。その屋上から足を投げ出したアルトは立ち上がる。ほんの少しだけ仮眠しておいた方が、集中力も確保できるはずだ。
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