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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
白銀の聖剣と漆黒の聖鞘

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すり替えⅤ

 リシアの衛兵たちが詰め寄る。しかし、リシアは怯むことなく眉をしかめるのみ。


 一触即発の空気が漂う中、凛とした声が辺りに響き渡る。



「騒がしい! いったい何ごとだ!?」



 肌を震わせるどころか、内臓に突き刺さる勢いで放たれた言葉に、その場にいた誰もが肩を震わせる。


 声の発生源へと振り向けば、そこには黒騎士隊長のソフィアが歩み寄ってくるところだった。



「これは……ソフィア隊長!? お、お騒がせして申し訳ありません」


「……聞こえなかったか? 何ごとか、と私は問うたのだ。門番である貴殿らが声を荒げるということは、何かしらの安全上の問題が発生したことに他ならない。その内、騒ぎを聞きつけた騎士たちが詰めかけて大事になるぞ」


「いえ、ソフィア隊長ならご理解いただけるはず。勇者の仲間を名乗るこの女が、儀式を前にしたアストルム様を連れ出そうと画策していたのです。我々がこれを止めねば、いったい誰が止めるというのですか!?」



 一度は収まった声に再び力が籠り始める、ソフィアは片方の眉をわずかに動かして、フードの取れた少女の横に並んだ。



「……誰が、聖女アストルムだと?」


「く、黒騎士隊長ともあろうお方が何を言っているのですか!? 銀髪に灰色の瞳。布に包まれていこそすれども、代々聖女が用いていた大杖! どこからどう見てもアストルム様ではないですか!」


「ほう、ならば貴殿の目は節穴か。或いは記憶力に問題があるらしい。いや、失礼。陽も落ちて来ているので、見間違えということも十分あるだろう」



 氷のように冷たく鋭い言葉が投げかけられる。衛兵たちの顔が見る見るうちに赤く染まっていく。



「腕っぷしが強いだけの女が何を偉そうに! やはり、聖女様に取り入って何か悪事を――」


「ソフィア。何やら騒がしいですが、事件ですか?」



 消え入りそうにもかかわらず不思議と耳の奥にまで届く鈴のような声が届く。同時に衛兵たちの顔が今度は真っ青になった。


 布を巻いた杖らしき物を持ったアルトが、不思議そうな表情を浮かべて歩いて来る。



「な、ア、アストルム様!?」


「はい。そうですが、何か?」



 衛兵に名前を呼ばれ、アルトは首を傾げる。冬の寒空の下であっても、ほっこりとする可愛さがあった。


 しかし、衛兵たちは気が気ではない。何せ、目の前には自分たちがアルトであると思っていた少女がいるからだ。口を閉じては開け、開けては閉じを繰り返し、何とか言葉を紡ぎ出そうとしているが、彼らの言葉が発せられることはなかった。



「あぁ、レナさんですね。みなさん、覚えておられませんか? 勇者マックスのお仲間にいたエルフの方を」


「た、確かに弓を持ったエルフの冒険者は見かけております。ですが、髪や瞳の色も異なれば、身長や顔立ちもまったく違うではないですか」


「えぇ、彼女にはエルフ族の使う魔法で姿を変えてもらっています。私が旅をする時に影武者として立ち回ることも必要になるだろうと」



 バジリスク討伐の前後で命を狙われたという話は、サケルラクリマの神殿に仕える者たちの間で知らない者はいない。衛兵もそれならば、と納得しかけたようだが、首を振ってリシアに詰め寄ろうとする。残りの二人が何とかそれを押し留めているが、彼の口までは止められない。



「それならば、最初からそう説明すればよかったではないか!」


「え? みなさん、彼女が聖女様に見えてるんですか?」



 怪訝な表情でリシアはボソリと呟く。まるで、彼女だけがアルトに見えていないような反応だ。



「マックスたちには、私が幻覚魔法を使っても元の姿に見えるようにしている。そうでないと、どちらが本物か見分けがつかない。黒騎士隊長にも、後で姿が判別できるよう魔道具を渡すつもり」



 アルトの声にそっくりだが、話し方は淡々としている。衛兵たちもギョッとした表情で、互いに顔を見合わせた。

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