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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
白銀の聖剣と漆黒の聖鞘

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すり替えⅣ

 一方、神殿の出入口である門では、衛兵と一悶着が起きていた。



「申し訳ありません。出入りする際には、顔と持ち物の確認が必要でして……」


「入る時は問題なかったんだから、出るのは良いんじゃないの?」



 神殿騎士の二人が槍で行く手を塞ぎ、残る一人が前に進み出てリシアたちを説得していた。


 リシアは抗議の声を上げるが、誰がどう考えても難癖をつけているようにしか見えない。ましてや、彼女の隣にいる人物が布で目元から下を覆い隠した挙句、持っている杖もまた布でグルグル巻きにしているのだ。フードも目深にかぶり、表情どころか視線を読むことすら難しい。怪しいと思うなという方が無理だろう。



「確かに入る時には問題なかったのでしょう。しかし、出る時に神殿の物を無断で持ち出す輩がいないとは限りません。我々も疑うのは心苦しいのですが、あくまで規則です」



 神殿騎士の手がフードへと伸ばされる。


 その指先がフードに触れる寸前、リシアの持っていた杖が、その腕を跳ね上げた。



「世界の為にと呼び出していて、決まりを押し付けるとは面白いこと言うんですね。知ってますか? うちのリーダーが勇者になることを渋ってることを。あなたたちのそういう態度が、私たちのどういった行動に繋がるか――よく考えてみてください」


「何を世迷言を。ここは聖教国サケルラクリマの首都にして、星神様の声を賜る神殿。たかが勇者の付き添いの女如きが偉そうに――」


「偉そうに、という割には、あなたはここで何をしているんですか? ここで人の出入りを見張るだけの子供でもできる仕事をしているあなたは、どれだけ偉いんですか?」



 杖の先こそ向けていないが、温厚なリシアの視線は肉食動物が獲物を狙うかのように細まっている。その眼光の鋭さに危険を感じ取ったのだろう。腕を払われた神殿騎士は、一歩引いて剣の柄の手を伸ばす。



「くっ……」


「別にここで戦っても良いですけど、その場合、ご自分の立場の方が危うくなることはわかっていますね」


「ふ、ふざけたことを。後ろの二人が証人になってくれる。むしろ、危ういのはそちらの方だ」



 片や勇者のパーティーメンバー。片やこの場における安全を命を懸けて守らねばならない番人たち。


 後者に正義があるのは明らかだが、こと勇者と言う単語が関わって来るだけでパワーバランスは一気に崩れる。彼ら衛兵の心の中には、きっと、何かしらの重要な作戦を邪魔しているのではないかという不安が芽生えていることだろう。


 その証拠に剣の柄を衛兵は未だ掴めずにおり、背後に控えた仲間も槍こそ交差させているが、直立した状態で攻撃態勢に移行するには猶予がある。緊張した面持ちで、横目に事態の推移を見守っているようだ。



「こ、この命は、神殿に足を踏み入れた時から星神様の為に捧げたも同然。決して、勇者の為ではない!」


「あっ!?」



 わなわなと腕を振るわせた衛兵は拳を握ると、目の前の杖を払いのけた。そればかりか、もう片方の手でフードを掴む。


 五本の指で鷲掴みにされた白いフードに皺が入り、乱暴に背中側へと捲り上げられた。勢いでその下の()()が露になると同時に宙を舞う。ハラリと落ちた前髪の間から覗く()()()()は、衛兵の表情を石に変えた。



「ア、アストルム、様……?」



 普段なら、小鳥が歌うような声で語り掛けるアルトだが、そこにいる少女は黙ったまま衛兵を見るのみ。いや、衛兵すら見ておらず、その体のさらに先を見通しているかのようだった。



「アストルム様、日没までそう時間は長くありません。御存知とは思いますが、特例を除き、星見の祭壇での儀式が近い時間帯は、枢機卿同様、神殿からの外出が禁じられているはずです」



 槍を持っていた衛兵が慌てて駆け寄って来る。それでも少女の反応がないとなると、険しい視線がリシアへと向けられた。



「貴様、聖女であるアストルム様を連れ出すとは、何を企んでいる!?」 

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